SMAは第一腰椎の高さで大動脈から分岐
Ao-SMAの分岐角は正常で25-60度,
十二指腸が通過する部位の幅は10-28mm
分岐角が<25度となる場合や幅が8-10mmとなると狭窄が生じる.
(Gastroenterology Nursing 2015;38(3):189-193)
SMA症候群
Ao, SMAに十二指腸 3rd portionが挟まれ, 閉塞を来す
・頻度0.013-0.3%の非常に稀な疾患
・女性で多く(66%), 10-39歳の若い年代で多い(75%)
・慢性消耗性疾患(悪性腫瘍, 脳性麻痺, 薬物中毒)
外傷(重度熱傷, 脳挫傷, 多発外傷)
栄養不良(Anorexia, Malabsorption)
術後, 奇形などが基礎疾患となりえる (Dig Surg 2007;24:149-156)
・食後の嘔吐(胆汁性), 食欲低下, 体重減少などをきたし,
体重減少の結果さらに症状が増悪するという悪循環にもなる.
(Gastroenterology Nursing 2015;38(3):189-193)
SMA症候群に関わる因子
解剖学的な要素
・トライツ靭帯が短い場合, SMA分岐部に近い部位を十二指腸が通過する
・その結果狭窄を生じやすくなる.
・同様にSMA分岐が低位置の場合も狭窄を生じやすくなる.
腸間膜脂肪の減少
・脂肪組織の消失により, Ao-SMA分岐角が狭くなる
術後の影響
外傷の影響
他疾患による影響(悪性腫瘍やAAA, 炎症による癒着など)
SMA症候群の症状
小児のSMA症候群 22例の報告
・年齢は3-23歳, 中央値 13歳.
・BMIの平均値は21.3kg/m2, 13.3-30.4kg/m2と様々
・症状の出現期間は1-393日, 中央値 5日と急性経過から慢性経過まで様々あり得る
・症状は, 腹痛(59%), 嘔吐(50%), 悪心(40%), 易満腹感(32%), 食欲低下(18%)
・診断までの体重減少は3.8kg[0-20]とこれも様々
SMA検査
SMAの診断は消化管造影, 腹部CT検査が有用.
・エコーやCTにおいて,
Ao-SMA分岐角 <22%: 感度 42.8%, 特異度 100%
Ao-SMA間隔 <8mm: 感度 100%, 特異度 100%
(Diagn Interv Radiol 2005;11:90-95) (Reference Standardがないため、信頼性低い)
自験例(20歳男性)
皮下脂肪が多くても, SMA症候群は生じる (Dig Surg 2007;24:149–156)
SMA症候群の治療
内科的治療は腸間膜脂肪を増加させること.
・1回の食事の量を少なくし, 回数を増やす
・食後, うつぶせ+膝胸位とするか, 左側臥位で安静とする方法がある.
・食事量の調節でうまく行く場合は, 腸管蠕動促進作用のある薬剤を併用すると症状は緩和できる(メトクロプラミドなど)
・経口摂取が困難な場合は経管栄養(NJチューブで狭窄部を通過させる)やTPNを行う. これで2/3は改善が見込める
これら内科的治療でうまく行かない場合は外科治療
・外科治療にて9-10割は改善が見込める
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SMA症候群についての記載、論文はここ10-20年、ほぼ内容が変わっていない.
イメージとしては羸痩が強い患者で狭窄が生じやすい印象があるが,
全くの健常人が、多量の食事を摂った後に生じる例や、誘因のない患者でSMA症候群を生じる例も経験している.
胃が著明に拡張すると、その裏側にあるSMAは圧排され、SMA症候群を生じても良いと思う(上記の自験例はそのような症例で, 経過観察のみで改善し、再発もない).
また、軽症、慢性経過のSMA症候群というのもあって良いのではないかと考えている.
そこで思うのが、Functional dyspepsia(機能性ディスペプシア)の一部がこの疾患ではないか、という点。
FDは特に器質的な原因の認めない, 胸やけ、腹満感、易満腹感を呈する病態で定義される.
胸やけメインのタイプと腹満、易満腹感メインのタイプがある.
SMA症候群とFDで論文を検索しても引っかからない。
自験例で、若年女性の食後の腹満、易満腹感で来院した症例で、FD様であるが、エコーにてSMA分岐角が15度程度と狭かった症例もあった. 生活指導のみで改善したものの, FDと軽症、慢性経過のSMA症候群? の違い、一致点は評価してみたら興味深いかもしれない.
例えばFD患者とControlで分岐角を評価してみる、とか。
一つの臨床研究の案として.