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2015年11月6日金曜日

クローン病におけるEarly combined immunosuppression therapy (ECI)

クローン病では潰瘍性大腸炎と異なり, 5-ASAの効果はあまり期待できないため
中等症〜重症ではステロイドとチオプリン系薬剤, もしくは抗TNF-α阻害薬(インフリキシマブかアダリムマブ)の導入が必要となる.

チオプリン + 抗TNF-α阻害薬の併用はそれぞれ単独使用群と比較して効果は良好となるため(SONIC trial. NEJM 2010;362:1383-95) 
 各単剤治療 ± ステロイドで効果が乏しい場合は併用療法を行う. という流れが一般的.

Early Combined Immunosuppression algorithm (ECI)
 早期より抗TNF-α阻害薬とチオプリン系 もしくは MTXを併用する方法.
 それを評価したCluster-RCTで用いられたアルゴリズムは以下のとおり
(Lancet 2015; 386: 1825–34 )


REACT trial: クローン病患者を対象として, ECI群と通常治療群を比較したopen-labeled, Cluster-RCT.
・ECI群では上記のアルゴリズムを用いて治療
・アウトカムは12ヶ月時点でのステロイドフリー寛解達成率 (Harvery-Bradshaw Indexスコア ≤4)
患者群のデータ

・42施設を割り付け, 最終的に39施設, 1982例の患者で評価. 
・ECI群が21施設, 1084例, 通常の治療群が18施設, 898例.
・12ヶ月の治療が可能であったのがそれぞれ85%, 90%
 24ヶ月フォローが可能であったのがそれぞれ67%, 75%

それぞれの群における薬剤の使用頻度
24ヶ月の時点で
 ステロイドは21.0% vs 21.2%
 Antimetabolitesは 26.7% vs 15.6%
 抗TNF-α阻害薬は27.4% vs 17.4%
 併用療法は19.7% vs 9.6%

アウトカム
寛解率
寛解率は両群で変わらない結果.

二次アウトカム: 合併症, 手術治療リスク, 入院リスク
24ヶ月時点における重大な合併症や手術治療リスクはECI群で有意に低い.
薬剤による副作用は有意差を認めなかった

クローン病の寛解には臨床的な寛解と、臨床症状+粘膜所見の寛解(Deep remission)があり、当然後者を達成できた方が長期的な予後, 再発リスク, 合併症リスクは低い.
ただしDeep remissionの評価は難しいため、Studyのアウトカムにはなりにくい. 
(JAMA. 2013;309(20):2150-2158 )

この併用療法ではもしからしたらDeep remissionをより多く達成できているのかもしれない. 
クローン病もRAや他の膠原病と同じく, 早期から強い治療を行い, 長期予後をよくするという視点が重要となってゆくのかもしれない