(Lancet Neurol 2012; 11: 918–28)(Neurology® 2015;85:1655–1662)
学童期に多い過眠と認知障害, 精神症状を特徴とする病態
・100万人に1.5-2例程度と非常に稀な疾患.
・男児で多く 68-87%をしめる.
・好発年齢は学童期であるが, 症例報告では9歳以上での発症や35歳以上での発症症例もある
・男児で多く 68-87%をしめる.
・好発年齢は学童期であるが, 症例報告では9歳以上での発症や35歳以上での発症症例もある
・家族内発症リスクは低い(第一親等で1%)が, KLS症例の5%で家族内の発症が認められる.
・出産時の低酸素や長期間の出産が発症に関与する報告もある
・原因は不明. 発作期には中枢の低還流/代謝低下が認められる
・原因は不明. 発作期には中枢の低還流/代謝低下が認められる
脳卒中や炎症性疾患などによる二次性もある.
症状は過眠と認知障害, 精神症状など.
・寛解, 増悪する重度の過眠と, 認知障害, 無為, 現実喪失感, 精神行動障害(過食や性欲亢進)を伴う.
・寛解期には特に症状は認められない.
・寛解期には特に症状は認められない.
再燃の周期は1-12ヶ月毎で, 14年程度持続する (30-35歳には改善することが多い)
・発作時は数時間から数日で急速に症状が完成する
・発作の持続期間の中央値は10日間. 数日~数週持続し急に改善を認める.
・発作の持続期間の中央値は10日間. 数日~数週持続し急に改善を認める.
・片頭痛様の症状(頭痛, 羞明, 聴覚過敏)や自律神経症状(顔面紅潮, 頻尿, 頻脈, 血圧変動)といった症状も認められる
KLSは感染症症状後に発症することが多い(特に初発時)
・感冒症状や脳炎様症状に引き続き, KLSが生じることが多い(72-96%)
・他にはアルコール摂取や睡眠不足が発作の誘因となりえる.
KLSは感染症症状後に発症することが多い(特に初発時)
・感冒症状や脳炎様症状に引き続き, KLSが生じることが多い(72-96%)
・他にはアルコール摂取や睡眠不足が発作の誘因となりえる.
・発作も感染症状が先行する例がある.
KLSの診断クライテリア
KLSの診断クライテリア
再発性過眠症のクライテリア
・再発性の重度の過眠が2日以上~4週間持続する
・過眠エピソードが年1回以上ある
・認知機能障害, 行動障害, 過眠が他の原因で説明ができない.
・再発性の重度の過眠が2日以上~4週間持続する
・過眠エピソードが年1回以上ある
・認知機能障害, 行動障害, 過眠が他の原因で説明ができない.
Kleine-Levin syndromeのクライテリア
・再発性過眠症を満たし, 以下の4つのうち1つ以上を満たす
認知機能障害(現実喪失感, 混迷, 幻覚)
異常行動(イライラ, 焦燥感, 人が変わったような行動)
過食
性欲亢進
認知機能障害(現実喪失感, 混迷, 幻覚)
異常行動(イライラ, 焦燥感, 人が変わったような行動)
過食
性欲亢進
原発性KLSと二次性KLSの違い
・二次性では, 脳卒中, 炎症疾患などによる二次性KLSがある.
・二次性ではより年齢が高く, 発作期間も長いことが異なる.
・二次性ではより年齢が高く, 発作期間も長いことが異なる.
・原発性KLSでは, CSF所見や画像検査では問題を認めない.
脳波検査では発作時に7割で異常所見が認められる
(Brain (2005), 128, 2763–2776)
原発性KLSにおける鑑別診断
月経関連過眠症(menstruation-related hypersomnia)
・月経の前, 月経中に過眠となる状態
稀であり, 世界でも18例程度しか報告がない
・過眠の他に衝動的な摂食, 性的な脱抑制, 抑うつ症状を認める
・月経の前, 月経中に過眠となる状態
稀であり, 世界でも18例程度しか報告がない
・過眠の他に衝動的な摂食, 性的な脱抑制, 抑うつ症状を認める
・発作は3-15日持続し, 年間3回未満であることが多い
・KLSのValiantとする報告もある.
神経疾患など: 学童期に性格変化や急性の認知機能障害を生じる疾患を考慮
・アルコールや違法薬剤 >> 病歴
・脳腫瘍, 頭部外傷, 炎症性疾患, MS, 脳卒中 >> 頭部MRI
・脳炎 >> 腰椎穿刺
・側頭葉てんかん >> 脳波検査
・代謝性疾患 >> 血糖測定, 腎機能, 肝機能, ビタミン
・内分泌疾患 >> 副腎不全, 甲状腺機能異常症
・精神疾患 >> うつ病, 統合失調症
・その他: ポルフィリア, ライム病
神経疾患など: 学童期に性格変化や急性の認知機能障害を生じる疾患を考慮
・アルコールや違法薬剤 >> 病歴
・脳腫瘍, 頭部外傷, 炎症性疾患, MS, 脳卒中 >> 頭部MRI
・脳炎 >> 腰椎穿刺
・側頭葉てんかん >> 脳波検査
・代謝性疾患 >> 血糖測定, 腎機能, 肝機能, ビタミン
・内分泌疾患 >> 副腎不全, 甲状腺機能異常症
・精神疾患 >> うつ病, 統合失調症
・その他: ポルフィリア, ライム病
KLSの重症度
・軽症例: 1週間程度の発作が年に2-3回程度
・中等症例: 7-10日間の発作が毎月生じる
もしくは年1-2回と少ないが, 発作期間が3-6ヶ月と長い.
大半の症例が中等症に分類される
成人例ほど発作の期間が長くなる傾向がある
・重症例: 年間40-80回と多数の短い発作を繰り返すタイプ
長期間にわたる注意力障害や気分障害を呈する
・中等症例: 7-10日間の発作が毎月生じる
もしくは年1-2回と少ないが, 発作期間が3-6ヶ月と長い.
大半の症例が中等症に分類される
成人例ほど発作の期間が長くなる傾向がある
・重症例: 年間40-80回と多数の短い発作を繰り返すタイプ
長期間にわたる注意力障害や気分障害を呈する
症例報告のまとめ
108例の評価では, 食欲亢進は66%, 性欲亢進は53%(主に男性),
・抑うつ症状は53%(主に女性)で認められる. (Ann Neurol. 2008 Apr;63(4):482-93.)
特発性KLS 130例のデータ
・発症時の年齢は15.8歳±3.8, 男性例が63.1%
・発症のトリガーとなったエピソードは
感染症が38.5%, アルコール摂取が20.8%, 睡眠欠乏が16.2%
(Neurology® 2015;85:1655–1662)
KLS 186例のLiterature review
・そのうち特発性KLSが168例. 男性例が68%
発症年齢は15歳[4-82], 発作期間は10日間, 発作間欠期は3.5ヶ月
発症年齢は15歳[4-82], 発作期間は10日間, 発作間欠期は3.5ヶ月
発症年齢の分布
発作の持続期間と寛解期の期間
・初発時の誘因として感染症, アルコール, 頭部外傷があり,
繰り返す発作時の前駆症状としては感冒症状が一部である
・KLSの症状頻度
症状
|
頻度
|
症状
|
頻度
|
過眠
|
100%
|
摂食障害
|
80%
|
認知機能障害
|
96%
|
過食
|
78%
|
発語異常
|
60%
|
甘味の渇望
|
12%
|
混迷
|
51%
|
飲水増加
|
8%
|
健忘症
|
48%
|
無茶食い
|
6%
|
現実喪失感
|
24%
|
食欲低下
|
5%
|
幻覚
|
14%
|
食物利用障害
|
4%
|
妄想
|
16%
|
|
|
抑うつ症状
|
48%
|
性欲亢進
|
43%
|
イライラ
|
92%
|
歌, 書く, 歩くなどへの衝動
|
29%
|
(Brain (2005), 128, 2763–2776)
KLSの治療
・発作期にはStimulantや抗精神病薬, 抗不安薬が使用される
・発作が頻回の患者では, 予防治療として抗てんかん薬や炭酸リチウムが使用される.
・発作が頻回の患者では, 予防治療として抗てんかん薬や炭酸リチウムが使用される.
186例のLiterature reviewでは, 29例に炭酸リチウムが使用され41%で発作頻度が減少した.
バルプロ酸やカルバマゼピンはリチウムと比べると効果は弱い
(Neurology® 2015;85:1655–1662)
特発性KLS 71例において, 炭酸リチウムを使用し, 使用前後の発作頻度を評価. また, リチウム以外で治療された群も同様に評価
治療薬一覧 (Lancet Neurol 2012; 11: 918–28 )
KLS治療のまとめ