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2018年2月20日火曜日

アル中の 1%に 落とし穴

ミネアポリスのHennepin County Medical Cenerにおいて2011-2016年に急性アルコール中毒でERを受診し初期評価で単純酩酊と判断された31364例を後ろ向きに解析
([Ann Emerg Med. 2018;71:279-288.] )
・患者は18歳以上で, 主訴が単純酩酊, 意識障害+呼気中アルコール検出でERを受診した群を対象*
・中央年齢38, 71%が男性

*補足:
 この施設では
 ①中毒疑い患者では初期に10分程度で診察, 呼気中アルコール濃度評価, バイタルサインチェックを行い明らかな内科疾患や外傷疾患の疑いがある場合は他ブースへ移す.
 ②上記評価で問題ない場合は中毒ユニットに残りこの場合は血糖の評価程度と意識改善までバイタルサインのフォローを行う意識改善がない場合や急変時に対応.
 この報告は①の時点で問題がなかった患者を対象としている


このうち後に重症疾患と判断され, 加療, ICU入室となった患者は325(1%[0.9-1.2)
重症疾患では
 アルコール関連の呼吸不全
 アルコール離脱
 外傷
 敗血症
 消化管出血が多い.
挿管管理や薬剤による鎮静が処置として多い
・頭蓋内出血は32(1.6[1.2-2.1]/1000pt)
 死亡例は2(双方とも脳血管疾患による死亡)

重症疾患が判明するリスク因子

・低血糖, 低血圧(sBP<90), 頻脈(>110bpm), 体温異常といったバイタルサインの異常がリスク因子として挙げられる

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初期評価で一見単純酩酊に見えても, 1%で緊急対応が必要, 重症疾患が紛れている可能性がある点に注意が必要.

特にバイタルサインやその変化には注目すべきと言えます.

ここで一句
 アル中の いちパーセントに 落とし穴

2018年2月19日月曜日

PCI既往がある患者では術前にアスピリンを止めない方が良い

POISE-2 trial
待機的な心臓外科以外の手術患者10010例が対象
 2x2 factorial design, Aspirin, Clonidineの効果を評価したRCT
(N Engl J Med 2014;370:1494-503)
・患者は心血管イベントリスク(+)の群
ASA使用群: (ControlではASAPlaceboに置き換え)
 もともとASA未使用群(5628)では術前に200mg/d投与し, その後100mg/d30日間使用
 もともとASA使用群(4382)では術前3日前に内服を中断し, 術直前~術後7日間100mg/dを使用, 以後は元々の投与量とした
・Clonidine(交感神経遮断作用) 0.2mg/dを術前~72h使用. vs Placebo.
アウトカムは心臓血管イベント, 出血リスク.

母集団データ

アウトカム
・周術期のアスピリンは心血管イベント抑制効果は認められず, むしろ出血リスクを増加させる結果.


また, 出血リスクは術後7日間は上昇している

このPOISE-2 trialにおいて, PCI既往がある患者群で評価したサブ解析
(Ann Intern Med. 2018;168:237-244.)
6wk以内のBare-metal stent留置群, 1年以内のDES留置群を除く, PCI既往がある患者群でのサブ解析.
・上記を満たす患者はASA群で234例, Placebo群で236例

アウトカム
PCI既往がある患者群では, ASA継続群の方が有意に30日以内のMIリスクは低下する.
また, 出血リスクは増加させない結果

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・心血管系リスクのみならば周術期のアスピリンは必須ではないが
 PCIが既往がある場合は極力続けた方が良いという結論.

2018年2月16日金曜日

菌血症と悪寒の関係

「悪寒戦慄」があれば菌血症を疑う, というのはほぼ常識化してきている知識.

これは沖縄県立中部病院より2005年にAm J Medで発表された報告が先駆け(と思う)

沖縄県立病院ERに急性の発熱で受診した526例の悪寒のレベルと血液培養陽性率を評価した報告.
(The American Journal of Medicine (2005) 118, 1417.e1-1417.e6)
・このうち7.6%で血液培養が陽性であった.
・悪寒は以下に分類して評価:
 Mild chill; 上着を必要とする悪寒
 Moderate chill; 毛布を必要とする悪寒
 Shaking chill; 毛布をかぶっても全身性の震えがある悪寒
・血液培養陽性に対する各悪寒の感度, 特異度は以下
悪寒
Sn(%)
Sp(%)
LR(+)
LR(-)
Any chills
87.5[74.4-94.5]
51.6[50.6-52.2]
1.81[1.51-1.98]
0.24[0.11-0.51]
Moderate以上
75.0[60.5-85.6]
72.2[71.0-73.1]
2.70[2.09-3.18]
0.35[0.20-0.56]
Shaking chills
45.0[31.8-58.6]
90.3[89.2-91.5]
4.65[2.95-6.86]
0.61[0.45-0.77]

・Shaking chillsは菌血症に対する特異性が高い.
 Shaking chills = 悪寒戦慄を呼ぶ.
・寒いなぁと思って布団をかぶるのは基本的に菌血症かもしれないと思う.

その後様々報告はある.

台湾からの報告.
2006-2007年からランダムに選択した96日間において, 発熱でERを受診した患者群を前向きにフォロー菌血症のリスク因子を評価した.
(Diagnostic Microbiology and Infectious Disease 73 (2012) 168–173)
・30日以内の入院歴, 意識障害, 施設入所者は除外.
患者は396例で, 年齢は53.8[18-95]
・15.2%が真の菌血症であった.
菌血症のリスク因子 
 悪寒(Chills): 上着や毛布を必要とする悪寒
 悪寒戦慄(Rigor): 上着や毛布をかぶっても震える悪寒
 (Am J Med 2005と同じ定義)

・上記よりリスクスコアを作成すると, 4点以上は要注意となる

沖縄における菌血症を疑った366例を対象とした後向き解析
(SpringerPlus 2013, 2:624)
・悪寒戦慄と菌血症の関連を評価
・患者は菌血症を疑われ入院となった成人症例HIV患者は除外.
患者は78.5[62-88]
 18-79歳と80歳以上の2群にわけて解析

・悪寒戦慄は「悪寒を感じ, 体温を上げるために全身を震えさせるような状態」で定義.

悪寒戦慄は菌血症の可能性を上昇させる: OR 2-3
・特に80歳以上ではさらに高い.

名古屋第二赤十字病院, 天理よろず相談所, 沖縄中部病院, 静岡県立総合病院のERにおいて, 2011-2012年に血液培養を2セット以上採取された16歳以上の患者群を後ろ向きに評価.
(PLoS ONE 11(3): e0148078. )
・菌血症に関連する因子を抽出し, 予測スコアを作成
・前3病院の症例にてDerivationを行い静岡県立総合病院の症例でValidationを施行.
 Derivationでは7026例のうちからランダムに1570例を抽出
 Validationでは823例のうちからランダムに500例を抽出

菌血症に関連する因子として,
 病歴, 身体所見, 血液検査の合計11項目が認められた
悪寒は2点.
 悪寒は悪寒戦慄を含むが, それに限定してはいない

カットオフと菌血症に対する感度, 特異度
・2-3点以上では要注意.

日本からの前向き報告入院した成人患者において, 菌血症と食事量低下, 悪寒戦慄の関連を評価.
(J Hosp Med. 2017 Jul;12(7):510-515.)
・血液培養を採取された入院患者で食思不振症や摂取困難例を除く1943例を対象. 年齢は14-93歳. このうち223例が菌血症であった.
・消化管疾患, 消化管出血, 虫垂炎, 胆管炎, 膵炎, 憩室炎, 虚血性腸炎, 化学療法中の患者は除外
・食事量低下は通常の摂取量の8割未満で定義.
悪寒はAm J Med 2005の定義.

菌血症を示唆する因子

・HR>90bpm, 体温異常WBC異常, CRP>10mg/dL, 悪寒戦慄は菌血症を示唆する
・食事量低下は感度93.7%[89.4-97.9%], 特異度34.6%[33.0-36.2]
 LR+ 1.43[1.37-1.50], LR- 0.18[0.17-0.19]で菌血症を示唆
・悪寒戦慄は感度23.5%[22.5-24.6], 特異度95.1%[90.7-99.4]
 LR+ 4.78[4.56-5.00], LR- 0.80[0.77-0.84]で菌血症を示唆する

悪寒戦慄がなく, 食事摂取量が正常ならば菌血症は2.4%のみ.
 食事摂取量が低下し且つ悪寒戦慄があれば47.7%が菌血症!

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どの報告を見ても, 悪寒や悪寒戦慄は菌血症予測の重要な因子となっている.
血液検査と同等の因子であり, やはり重要な情報と言える.

また, 最近悪寒戦慄の定義?をよくわかっていない人も見受けられる. 
布団かぶっても震えているのが悪寒戦慄.

オカンはいつの時代も大事ですね.