ブログ内検索

2018年7月9日月曜日

重度の代謝性アシドーシスに対する重炭酸NaのRCT

重症の代謝性アシドーシスに対するNaHCO3の投与については長年議論されている分野投与しても予後には関係しないとの意見が多く現在はあまり行われていない治療かもしれないこのへんは施設毎でやり方が異なる.

この度フランスよりランダム化比較試験が発表された
(Lancet 2018; 392: 31–40)

BICAR-ICU; フランスの26施設のICUにおけるRCT. 
重度のアシデミア(pH≤7.20, PaCO2≤45, HCO2≤20mmol/L), さらにSOFA≥4もしくはLac ≥2mmol/Lを満たす成人患者を対象.
・NaHCO3を投与しない群 vs 4.2%NaHCO3pH>7.30を保つ様に投与する群に割付け, 死亡リスクや臓器障害, 腎障害リスクを比較.
透析の基準は統一: ICU入室時にK>6.5mEq/L+無尿, 肺水腫+無尿
 割付後24hで尿量<0.3mL/kg/h24h以上, pH<7.20, K>6.5mEq/L
投与速度は125-250mL30分で投与, 24h1000mlを上限とする.

除外項目: 呼吸性アシドーシス, 消化管, 尿からNaHCO3喪失が認められる群(≥1500ml/dVol lossがある群), CKDステージIV, ケトアシドーシス, スクリーニングの24h以内にNaHCO3投与されている群

母集団
・敗血症性ショックは50%程度
・pH7.15

アウトカム
・全体では死亡リスクや臓器障害リスクは有意差なし.
・AKIN 2-3では, 死亡リスクの軽減効果, 臓器障害リスクの軽減あり.
 透析治療リスクや導入までの期間は有意に改善
*AKIN 2-3はベースラインからのCr2倍以上に上昇、尿量<0.5h12h

----------------------------
透析の導入基準が24h後のpH<7.20なので、Control群で透析導入が多く早くなるのは当然
 
AKIN 2-3群において死亡リスクを改善させるというのは興味深い結果
ベースラインからのCr2倍以上に上昇、尿量<0.5h12hの患者群における重度のアシドーシスではNaHCO3を投与するマネージメントはありか

2018年7月7日土曜日

症例 CO2ナルコーシスの高齢女性

80台女性意識障害で救急搬送 CO2貯留(116mmHg)を認めNIVを装着し入院となった.
 血液ガスの結果からは, Acute on chronic平常時のCO270-80mmHgの計算.
 喫煙歴はない.

 NIVにて翌日の意識は改善呼吸様式を確認すると両側のAir入りが悪い意識させると深呼吸はできるが通常の状態を確認すると低換気状態.
 呼気延長はなしややビア樽状の胸郭ではある.

 頚部〜胸郭上肢は筋萎縮あり痩せている. 一方で下肢の肉付きは良い. CT検査でも頚部上肢背部傍脊柱筋は萎縮が目立つが下肢の殿部、大腿筋は萎縮認めない.

 改めて病歴を聴取すると, 1-2年前より嚥下時の噎せこみや嚥下しにくい感じが出現したと。またふらつきも増え転倒も最近は増加
 呼吸苦はたまに訴えることがあった。1年前に他病院の呼吸器内科、循環器内科などで肺の評価心臓評価を行なったが特に異常は認められず症状はよくわからないと言われた.

------------------------------

















ここまで情報を集めるとそろそろ分かってくる人も多いかと思いますが,改めて身体所見を評価特に四肢や舌をよくよく観察してみたところ,
筋維束性攣縮を確認.

神経内科コンサルトとしエコーでの筋維束性攣縮の確認筋電図の評価も行われ
Bulbar ALSと診断された.

-----------------------

ALS: Amyotrophic lateral sclerosis
(Orphanet Journal of Rare Diseases 2009, 4:3 )(N Engl J Med 2017;377:162-72.)
運動ニューロンの進行性の変性を来す疾患群.
様々な疾患が含まれておりClassical ALS, Progressive bulbar palsy, Progressive muscular atrophy, Primary lateral sclerosis, Flail arm syndrome, Flail leg syndrome, ALS with multi-system involvement.などある
現在はClassical ALSSpinal ALS(四肢麻痺からくるALS), 
 PBPBulbar ALS(脳幹症状からのALS)と呼ぶことが一般的.

ALSは進行性の運動神経の変性症.
・一次運動野, 脳幹, 脊髄の運動ニューロンの変性.
脊髄前角細胞の変性による筋萎縮, Fasciculations
・Lateral sclerosis; , 外側皮質脊髄路の運動神経が変性しGliosisにより置き換えられる状態を意味している.

ALSの疫学; 孤発性ALSは欧米, 西欧では1.5-2.7/100,000-yの発症率.
・70歳までに発症する率は400-1000人に1名の割合となる.
男女比は1~1.5 : 1と同等か, やや男性に多い
発症年齢は55-65yで多く, 平均64. <30yでの発症は5%のみ.

今症例のようなBulbar ALSは女性, 高齢者に多い.
・70歳以上のALS発症例の43%Bulbar症状を認める(30歳未満では15%のみ)

家族性ALSは全体の5-10%
・地中海沿岸の人種に多く, 浸透率も高い.
 遺伝形式の殆どが常染色体優性遺伝となる.
家族性ALSは孤発性と比較して, 発症年齢が10歳程若い(40-50)
原因遺伝子は9q34(ALS4, senataxin), 2q33(ALS2, alsin), 15q12-21.

ALSの臨床所見
ALS2/3Spinal ALS.
近位もしくは遠位の四肢筋力低下で発症するパターン.
・症状は非対称性で, 徐々に進行.
当初, 患者は症状に気づかず, なにかを拍子に気づくこともある(冷水につかる等.)
片側の上肢の脱力で来ることが多いため頸椎症として誤診され易く, しばしば手術までされることもある.
下肢の脱力例では腓骨神経麻痺との鑑別が重要.

Bulbar ALS; 全体の1/3.
・構音障害から発症する. これも潜在性に進行し,  初期ではアルコール飲酒に際して出現しやすくなる.
その後嚥下障害を生じる.
唾液の嚥下が困難となり, 流涎が多量となることが多い ラクナ梗塞との鑑別が大事.
四肢の脱力はBulbar症状と同時に出現, 進行することが多い.
 1-2年以内に出現する例が大半を占める.
四肢やBulbar症状が軽度な状態で呼吸不全を生じるのが5%程度
 夜間の低換気が主で, 早朝の頭痛や日中の傾眠など生じやすい.

身体所見では, 筋萎縮とFasciculationが大事.
・Spasticityは筋緊張の亢進と回内筋, 膝蓋の “Catch”, クローヌスが原因で生じる.
深部腱反射は左右対称性に減弱することが多いHoffman徴候は陽性となることはありえる.

脳神経では, 顔の下半分が障害され易い
・嚥下, 呂律, 舌運動, 顔面筋群の障害による無表情等.
嚥下反射は保たれることが多いが, 軟口蓋の機能が低下する.
舌にもFasciculationが認められる.
他の脳神経は保たれ, 眼球運動は可能なことが多い.

ALSと認知症
・ALSでは前頭葉機能の低下が20-40%で認められる.
・Fronto-temporal dementia5%で認められる.

自律神経障害を伴うこともある
・膀胱直腸障害や心臓血管症状
(Muscle Nerve. 2015 May ; 51(5): 676–679.)

ALSと疼痛: 疼痛はほぼ全例で認められる症状.
・どのステージでも生じ, 運動症状に先行することもある.
 QOLを著しく低下させるため, 評価, 対応が重要
(Lancet Neurol 2017; 16: 144–57 )

診断は淡路クライテリアとEl Escorial Criteriaを押さえておく
(Arch Neurol 2012;69:1410-1416)

感度
特異度
OR
淡路
81.1%[72.2-90.0]
98.2%[96.7-99.7]
35.8[15.2-84.7]
El Escorial
62.2%[49.4-75.1]
98.2%[96.7-99.7]
8.7[2.2-35.6]
(8 trialsのmeta)

ALSと鑑別が必要な疾患
特に頸椎症,  腰仙椎疾患腓骨神経麻痺など整形疾患との鑑別が大事

治療に関しては割愛

----------------------------
この症例はBulbar ALSとしては結構典型的な経過と言える.

しかしながら, 疑わないとCOPD疑い」とか「窒息誤嚥」とかで片付けられてしまうかもしれない.
病院総合内科医をやっていると挿管患者でよくわからない低換気, CO2貯留などは確かにあるし高齢者の嚥下障害も多いため神経内科医ではなくてもこの病態は理解しておいた方が良いと個人的には思っている.

同様にClassical ALSは頸椎症や腰仙椎疾患など整形外科疾患と間違われることもありこれらを疑う時は頭のどこかにALSを置いておくことが大事
.

2018年7月2日月曜日

AOSDの皮疹にはどのようなものがあるか?

症例: 70台の高齢女性.
主訴 2週間前からの高熱, 関節痛・炎症.
 2週間前より倦怠感、発熱、食欲低下を認め、他病院を受診。その際膝関節腫脹、疼痛があり、関節穿刺を行った。関節液培養陰性。結晶陰性だが偽痛風とされた。
 その後も発熱が持続。体幹や四肢に皮疹も持続。近医にて抗菌薬なども使用されたが改善乏しく、紹介となった経過.

所見: 
 体温は39度台が持続。
 有意な所見としては, 両側膝関節腫脹、左手母指PIP関節腫脹・圧痛
 背部に境界明瞭、やや皮膚硬化や落屑を伴う皮疹を認める。
 殿部には均一に広がる紅斑を認める
 両側下肢にも軽度紅斑を認める。

検査:
 血液培養は陰性。CRP20台と高値。
 白血球15000, 好中球優位87%
 LDH 400, CPK上昇や肝障害は伴わない. フェリチン4-5000台と著明に上昇
 胸腹部CTでは軽度の肝脾腫、腹腔内リンパ節がやや目立つ程度(反応性腫大)
---------------------------

という流れで成人Still病を疑い
夜間のSpike fever時の評価をするとサーモンピンク様の一過性の皮疹を認めた。
また、背部や下肢の皮疹も日々変動を認めている.
まだ悪性腫瘍などの除外が未であるものの可能性としてはAOSDを疑う状況と考えている.

さて, AOSDではサーモンピンク様の一過性の皮疹が有名であるが他にはどの様な皮疹があるのか?

典型的なAOSDの皮疹
(Rheumatol Int (2012) 32:2233–2237)
・Spike feverと同時に出現し, 解熱で改善する
・体幹, 下肢で多く, サーモンピンクの丘疹を呈する
・病理では皮膚上層に非特異的な炎症性細胞の浸潤を認める

非典型的な皮疹
・持続性の掻痒感を伴う丘疹や紅斑でKoebner現象による線状の皮疹や
・表層に落屑や硬化を伴う皮疹を認める. 主に体幹で多い
・病理では, 皮膚上層の異常角化を伴う好中球浸潤が認められる

蕁麻疹: AOSDでは蕁麻疹, 蕁麻疹様の皮疹も認められる.
・皮膚描記症を伴うこともある

その他: 膿疱水疱性病変, 痤瘡様皮疹, 紫斑びまん性の持続性の紅斑, 固定皮疹, 色素性,痒疹様皮疹オレンジ皮様浸潤性病変が報告されている.
さらに白斑, 慢性遊走性紅斑, 血管浮腫, PAN, Sweet病の報告がある.

81例のAOSDの解析では46/81が典型的な皮疹+非典型的な皮疹双方あり.
(Medicine (2017) 96:11(e6318))
・非典型的な皮疹の頻度
 持続性の掻痒感を伴う丘疹や紅斑は61/81(75%), 掻痒感は53/61で伴っていた(87%)
皮疹の色は紅斑~褐色斑, まれに紫色とされていた
 また落屑や皮膚肥厚と共に出現していることもあり
・部位は体幹が最多. ついで四肢伸側

--------------------------
AOSDにおいてサーモンピンク疹は典型的皮疹であるが非典型皮疹として落屑や皮膚硬化を伴う持続的な皮疹も多く認められるまたKoebner現象を伴うような線状の皮疹もある(そういえばこの間の京都GIMでの症例はこれでしたね)

この症例で認められた皮疹は背部〜殿部の紅斑でちょうど2つ目の写真の真ん中の皮疹に類似。軽度の皮膚硬化と落屑も伴っており, AOSDの皮疹としても矛盾しない印象.とはいい典型的ではないので他疾患の鑑別も重要なのはいうまでもないですが。