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2017年11月21日火曜日

マイコプラズマ肺炎における抗菌薬変更のリスク

(Clinical Infectious Diseases® 2017;65(11):1837–42)
マイコプラズマ肺炎の治療はマクロライド, キノロン, テトラサイクリンがあるが, 近年マクロライド耐性が増加しており, 日本国内では80%が耐性と言われている.
・マクロライドを使用し, 48時間で解熱しない場合は耐性と考える.

国内のJapanese Diagnosis Procedure Combination national databaseより, 2010-2013年に診断(検査にて証明), 入院加療されたマイコプラズマ肺炎1650例を解析.
・患者は18歳以上で, ペア血清, PCR, 抗体検査で診断.
・2日以内に退院, 2日以内に複数抗菌薬を使用した症例, 2日以内に抗菌薬を使用しなかった例, 抗菌薬使用期間が<3日の症例は除外

開始薬剤はマクロライド 508, キノロン 569, テトラサイクリン 573例であった

抗菌薬を変更したのはマクロライド群52.8%
・キノロン群で21.8%, テトラサイクリンで38.6%.
・マクロライド群でキノロンへ変更することが多い
・入院期間や30日死亡リスクは有意差なし.
・Total costはキノロン群で高い. テトラサイクリンで安い

抗菌薬変更のOR

キノロン群とテトラサイクリン群よりPropensity-score matched analysisで抽出した487例を比較

・テトラサイクリンでは他薬剤への変更するリスクが高いが,
入院期間や死亡リスクは有意差なし.
費用は有意差ない結果
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マクロライド耐性は多いものの, マクロライドで効果乏しく治療を変更せねばならない症例は約半数程度.
キノロンで2割, テトラサイクリンで約4割程度ということを考慮すると, In vitroでは耐性だけどもIn vivoでは効果があるか, もしくは治療せずとも自然に改善する症例が多いのか.

どの薬剤で治療を始めても, しっかりとフォローし, 必要に応じて変更すれば予後には影響しない可能性が高い.

まあ、重症ではなければマクロライド開始でもよいでしょうし, いきなりキノロンにする必要もないでしょうか.

2017年11月17日金曜日

片頭痛に対するノバミン

片頭痛の頭痛治療に制吐剤が有用.
以前ブログでもプリンペランの効果は良いと書いた

片頭痛にプリンペラン


2017年のNEJMのレビューでも制吐剤というカテゴリーがある
(下から3行目)
(N Engl J Med 2017;377:553-61.)

片頭痛患者におけるProchlorperazine(ノバミン®)とオピオイドであるHydromorphoneの効果を比較したDB-RCT
(Neurology® 2017;89:2075–2082)

ニューヨークの2箇所のERにおいて片頭痛で受診した127例を対象
・患者は21歳以上でICHD3βの片頭痛の基準を満たす中等度~重度の頭痛でERを受診した群
・他の疾患が疑われる場合, 発熱(+), 頭部画像評価が必要と考えられた症例などは除外.
 また1ヶ月以内にオピオイドを使用した症例, 薬剤アレルギーも除外

Hydromorphone 1mg vs Prochlorperazine 10mg + Diphenhydramine 25mg投与群に割付け, 頭痛の改善を比較. 薬剤は5分かけてIV投与.
・1時間後に効果不十分の場合は再投与(Diphenhydramineを除く)
・Diphenhydramineはアカシジア予防目的に使用.
頭痛の改善は2h以内に頭痛が軽度~消失し, その後48時間レスキュー治療が不要であることで定義.
 頭痛の強度はPain scale 0-3点で評価. 中等度は2, 重度が3点.

母集団

アウトカム
薬剤を1回のみ投与し, その後48時間頭痛が消失~軽度となった症例は, Prochlorperazine群で60%, Hydromorphone群で31%
 AD 28%[12-45], NNT 4[2-9]と有意にProchlorperazine群で良好.
 また, 1-2回投与後の頭痛改善は60% vs 41%, AD 19%[2-36], NNT 6[3-52]Prochlorperazine群で良好となる
・Prochlorperazine群では2回目の投与が必要となることが少ない.

・48時間後の評価では, 機能障害, 薬剤再投与, Restlessness, Drowsyのリスクは両者で変わらない.


2017年11月15日水曜日

AKIにおけるCKD進行リスク

(JAMA. 2017;318(18):1787-1797 )

入院前のeGFR>45mL/min/1.73m2,入院時AKIを併発し, さらに生存退院した患者群をフォロー
・慢性腎疾患への移行リスクを評価し, External validaitonを施行.
 カナダのアルベルタで上記を満たした9973例でリスクを評価し(Derivation cohort),オンタリオの2761例でValidationを行なった.
・基礎のeGFRは入院から7日~365日前に評価されたeGFRで定義
・慢性腎疾患は退院後30日~1年の間に, 3ヶ月空けて2回評価したeGFRが共に<30mL/min/1.73m2で定義.

上記を評価可能であったAKI患者群で評価し, 死亡例や退院後30日以内の死亡例は除外.

母集団
CKD合併率はDerivation cohort2.7%, Validation cohort2.2%

Derivation cohortにおけるCKD移行リスク

リスク因子は
 高齢者
 女性
 AKIステージ
 退院時, 基礎のCr
 アルブミン尿の6項目

Alb尿は,
 Neg <30mg/gもしくはDipstick陰性
 Mild 30-300mg/gもしくはDipstick1+
 Heavy >300もしくはDipstick2+以上 で定義

これら6項目よりスコアを作成
スコアとCKD進行リスク
・15点を超えるとCKDリスクは上昇.
 18点以上では10%以上がCKDへ進行する.

2017年11月14日火曜日

血管浮腫の鑑別

浮腫では局所性浮腫, 全身性浮腫, 血管浮腫の3つに分けて考えると良い

血管浮腫は血管透過性亢進による浮腫であり, 非圧痕性, 左右非対称性, 非重力依存で一過性の浮腫を呈する.

好発部位は眼周囲や口唇, 舌, 四肢, 腸管など.
・腸管の浮腫では下痢や腹痛, 嘔吐など消化管症状を呈する
・喉頭浮腫では致命的となり得る
(ACADEMIC EMERGENCY MEDICINE 2014;21:469–484 )

血管浮腫, またはクインケ浮腫で救急や外来を受診する患者はたまにいる.
その場合しっかりと系統立って鑑別することが重要.

私個人的な診療フローチャートはこんな感じ

・まず多臓器障害や気道狭窄があればアナフィラキシーや気道緊急として対応する.
 それがなければ, 血管浮腫の鑑別に入る.

血管浮腫の鑑別では,
 ①じんま疹の有無, 好酸球増多の有無をチェック.
  じんま疹を伴う場合, ヒスタミン関連の血管浮腫と判断する
  好酸球増多を伴う場合, 好酸球性血管浮腫を考える
   参考:好酸球性血管浮腫
 ②上記を認めず, また明らかなアレルギーを疑う状況ではない場合, 非ヒスタミン関連性血管浮腫を考慮する. 主にブラジキニンが関連する
  ここには薬剤性(ACE阻害薬が主. NSAIDは厳密にはヒスタミン関連性), 遺伝性血管浮腫, 後天性血管浮腫がある. これらが否定的ならば特発性.

両者の浮腫, 症状の比較
(International Journal of Emergency Medicine (2017) 10:15)

経過の比較
・ヒスタミン関連性は出現も早く, 改善も早い
・ACE阻害薬や遺伝性血管浮腫(非ヒスタミン関連)は1日かけて増悪し、数日で改善

それぞれの鑑別疾患
ヒスタミン関連性
(主にじんま疹を伴う)
備考
アナフィラキシー反応
皮膚, 粘膜, 消化管, 呼吸器, 循環器(血圧低下), 中枢神経障害(意識障害)など多臓器障害を呈する
アレルギー反応
食物, 薬剤, 洗剤, 化粧品などに対するアレルギー反応
ヒスタミン不耐症
薬剤性
NSAIDやアスピリンで多い
じんま疹を伴わないこともあり
物理的じんま疹
皮膚描記症, 遅発性圧じんま疹, 振動性じんま疹, 寒冷じんま疹, 温熱じんま疹, 日光じんま疹
他のじんま疹
コリン性じんま疹, 特発性じんま疹

非ヒスタミン関連性
(主にじんま疹を伴わない)
備考
遺伝性血管浮腫
発症年齢は2-13歳と若年
家族歴が75%で陽性
薬剤性
ACE阻害薬で多い
後天性血管浮腫
MGUSやB細胞リンパ増殖性疾患, リンパ網様体形悪性腫瘍, SLEなどの自己免疫疾患で合併する.
好酸球性血管浮腫
繰り返すタイプ(1-2割)と繰り返さないタイプ(8-9割)がある.
じんま疹は1/3から半数程度で認めることがある.
特発性血管浮腫
明らかな原因を認めない場合
(Int J Emerg Med2017 Dec;10(1):15.) (Acad Emerg Med. 2014 Apr;21(4):469-84.)( Crit Care Med. 2017 Apr;45(4):725-735. )( Immunol Allergy Clin North Am. 2014 Feb;34(1):73-88.)を参考に作成

じんま疹(-)の繰り返す血管浮腫 929例の解析
(CMAJ 2006;175(9):1065-70)
・原因の判明した776例
原因
頻度(%)
:女比
発症年齢
特異的な因子に関連*
16%
0.51
39[13-76]
自己免疫疾患/感染症
7%(55)
0.62
49[3-78]
ACE阻害薬関連
11%
0.93
61[32-84]
C1-inhibitor欠損
25%(197)


 先天性

0.88
8[1-34]
 後天性

1.8
56.5[42-76]
不明(Idiopathic)
38%


 Histaminergic

0.56
40[7-86]
 Nonhistaminergic

1.35
36[8-75]
末梢, びまん性浮腫
3%
0.17

*薬剤, 食事, 虫刺され, 環境, 身体刺激

自己免疫性疾患/感染症の内訳


各論
ACE阻害薬による浮腫についてはこちらを参照

遺伝性血管浮腫
(Lancet. 2012 Feb 4;379(9814):474-81. )(Medicine (Baltimore). 1992 Jul;71(4):206-15.)
・C1エステラーゼインヒビター(C1 INH)の異常が主な病態.
 C1 INH自体が低下する1型(85%), 
 C1 INH活性のみ低下する2型(15%).があり.
 またC1 INHと関係のない3型(XII因子遺伝子異常)があるが, 国内からの報告はない.
タイプ
頻度
病態
検査所見
I
85%
C1インヒビターの分泌, 活性が低下
C3正常, C4低下
C1インヒビターは活性, 蛋白量ともに低下
C1q
は正常
II
15%
C1インヒビターの活性のみ低下
C3正常, C4低下
C1インヒビターは活性のみ低下
C1q
は正常
III
国内からの報告例なし
C1インヒビターは正常.
女性のみ生じる
上記以上は認めない

10歳未満での発症が多く, 20歳までに85%が発症している. 30歳以降での発症は1%程度と稀.
・血管浮腫は精神的,身体的なストレスや月経に付随して生じることが多い. 発作頻度は年1回程度〜月1回以上と様々. 浮腫は24時間程度かけて増悪し, 2-3日かけて消退する経過となる.
・血液検査では発作時にC3正常, C4低下が認められるが, 補体低下は後天性血管浮腫(SLEや血液腫瘍)でも認められるため注意が必要. C1インヒビター活性の検査は保険適応あるが, C1インヒビターの定量検査は保険適応外となるため注意.
 検査はSRLで受け付けている.

後天性血管浮腫
・40歳以降の発症が多く, 血液悪性腫瘍と自己免疫疾患が原因となる
・血液悪性腫瘍ではMGUSやB細胞リンパ増殖性疾患.
 C1インヒビターの消費が主な病態. また一部でC1インヒビター抗体の産生もある
・自己免疫疾患ではSLEが有名. これもC1インヒビター抗体の産生.
 SLEではじんま疹様の皮膚症状も呈するため注意. また補体も低下する.