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2017年7月25日火曜日

起立時のバイタルサインの変化は1分以内に行う

失神や起立時のふらつきの評価では起立時のバイタルサイン評価を行う.
方法は 10-20分程度臥位で安静とし, 起立させて3分後に評価する方法がガイドラインでも推奨されている方法であるが, どのタイミングで評価するのがよいのか?


Association of History of Dizziness and Long-term Adverse Outcomes With Early vs Later Orthostatic Hypotension Assessment Times in Middle-aged Adults. JAMA Intern Med
ARIC study(The Atherosclerosis Risk in Communities)において起立時のバイタルサイン変化とその後のフォローにおける起立時ふらつき, 失神などのイベント発症リスクを評価
・ARIC: 米国の4地域において, 1987-1989年に45-64歳であった15792例を前向きにフォローした報告.
起立時のバイタルサインは20分間の安静臥位とし起立後25秒間隔で5回測定.
起立性低血圧はsBP 20mmHg, dBP 10mmHg以上の低下で定義
・どの時点での評価が最もイベント, 予後との相関性があるかを評価した

母集団

起立時のふらつき症状の頻度とバイタルサインの変化
測定タイミング:
 1: 28±5.4秒
 2: 52.6±7.5秒
 3: 75.4±9.1秒
 4: 100±10.4秒
 5: 115±4.6秒

・起立時のふらつき症状は, 起立直後(25秒程度)の血圧低下所見との相関性が最も高い.

他の症状: 転倒, 骨折, 失神, 交通外傷, 死亡
・転倒や骨折, 失神, 交通外傷との相関性が高いのは起立後〜1分前後のバイタル変化と言える. 
・2分に近くなると転倒や骨折, 交通外傷は有意差はなくなる.

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起立時のバイタル変化は3分待つ必要はなく, 起立直後から数回測定する方が時間の節約, 且つ病態把握に有用な可能性はある.
ただし, 遅延型起立性低血圧の場合は3分以上は評価必要なのは注意

側頭動脈炎, GCAで認める頭痛

GCA, 側頭動脈炎では頭痛を伴うことは有名.
・初発症状として頭痛を認めるのは32%, 全経過を通じて68%で頭痛を認める.
 (CMAJ 2011;183:E301-5)
・他の報告では初発症状として35%, 全体で73%で認める報告もあり, 大体この辺りの数字
 (Curr Neurol Neurosci Rep (2015) 15: 30 )

どのような頭痛となるか?

日本国内からの報告. 
頭痛外来を受診し, GCAと診断された19例の解析
(Intern Med 50: 1679-1682, 2011) 
・男性9, 女性10, 発症年齢は78.1±4.8.
 19例中17例が他病院の受診歴があるが, 2例しかGCAの診断には至らなかった
・初発症状は頭痛が89.5%, 耳痛が5.3%, 下顎痛が5.3%

頭痛の部位は側頭部が12(63.2%), 後頭部が2(10.5%), 前頭部が2例, びまん性が1(5.3%)
拍動性頭痛が10(52.6%), 9例は非拍動性
・頭痛の程度は重度が8(42.1%), 中等度が7(36.8%), 軽度が4(21.1%)
持続性の頭痛が11(57.9%), 発作性の頭痛が8(42.1%)
他の症状: 全身倦怠感10, 発熱5, 体重減少3眼症状は2例で認められた.
 顎跛行は3, PMRの合併も3例, 三叉神経麻痺も1例で合併

18例が側頭動脈の圧痛(+), 10例で側頭動脈の突出や拡大8例で拍動の消失, 低下を認めた.

GCA 240例の臨床症状, 所見を評価.
スペインの単一施設において, 1981-2004年に生検にて診断されたGCA症例
(Medicine 2005;84:269–276) 
・側頭動脈生検で診断された症例 = 側頭動脈病変陽性例.
・上記のうち頭痛を認めたのは84.6%.
頭痛(+)群では側頭動脈の異常所見が80%認められる.
側頭骨の圧痛は4割程度
38度以上の発熱は8.9%のみと少ない

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側頭動脈炎, GCAで認められる頭痛は緊張型, 片頭痛型で, 頭痛のタイプ, 部位, 程度は様々で固定されたものはなさそう.
症例報告レベルではTAC様の頭痛を呈する例も報告されている.

発熱や消耗症状もそこまで多く認めるわけではなく, 高齢者の新規発症の頭痛では側頭動脈の診察, 側頭骨の圧痛は意識して, しっかりと評価する方が良い.

2017年7月21日金曜日

手術部位感染症予防の抗菌薬はどのタイミングで投与するか

手術部感染: SSI
SSIは院内感染症の21.8%を占め, 予後の増悪, 入院期間の増加や医療コスト増大につながる
術前に抗生剤の予防投与を行うことで, 感染リスク軽減効果があるが具体的にどのタイミングで投与するかは議論があるところ.
術前60-120分以内に投与すべきとの推奨が多い.

SSIの予防的抗生剤投与のタイミングと感染リスクを評価した14 trialsMeta-analysis. N=54552.
(Medicine (2017) 96:29(e6903))
・RCTはなく, Observational studyのみ.

アウトカム:
術開始後投与 vs 術前投与: OR 1.89[1.05-3.40], NNT 40
・術前>120min投与 vs 術前<120min投与: OR 5.26[3.29-8.39], NNT 4
術前 60-120min投与 vs 術前 0-60min投与: OR 1.22[0.92-1.61]
術前 30-60min投与 vs 術前 0-30min投与: OR 1.07[0.53-2.17]

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予防的抗菌薬投与は術前 120分以内に投与するのがベスト.
内科医, 救急医としてはERに来た緊急手術が必要な患者で, 救急室で投与開始しておくことが優しさか. 理解してくれないかもしれないけども.

2017年7月20日木曜日

コレステロール塞栓症

コレステロール塞栓症: Cholesterol Embolisation Syndrome(CES)
(Circulation 2010;122:631-41)(Current Opinion in Cardiology 2011, 26:472 – 479)
近位部血管壁の動脈硬化plaqueが末梢に詰まる病態.
・閉塞による虚血 + 塞栓子(異物)による炎症が主な病態.
通常100-200µmの小動脈にコレステロール血栓が詰まる.
・A to Aの塞栓症と異なり, 細かい栓子が多数に飛ぶことが多く, Shower emboliを認める.
  A to Aでは巨大血栓が飛ぶため, 虚血症状が強い.
・Plaqueは線維皮膜に被われたコレステロール, Mφを含む組織.
皮膜の破裂にて急激に血栓形成コレステロール結晶が遊離する.

Plaqueの浸食の程度で塞栓症のriskも変化.
・中等度浸食されたPlaqueが大動脈にある場合, 塞栓症は1.3%,
 一方, 重度浸食されたPlaqueならばrisk12.3%まで増加する.
最もPlaqueを形成しやすい部位は腹部大動脈~腸骨A, 大腿A.
 従って下肢の塞栓症が多い.
鎖骨下AでのPlaque形成は少なく, 上肢の塞栓症は少ない.
腹部大動脈瘤(+)患者では15.3±15moのフォローで,  2.9%がコレステロール塞栓症を併発.(J Vasc Surg 2004;40:424-9)

Plaqueの評価はTEE, CT, MRIで可能.
・上行大動脈の≥4mmPlaqueは脳梗塞のRisk Factorとなる.
生検では, 針状の結晶と, 周囲のMφを認める.

心カテや血管手術におけるコレステロール塞栓症合併率
・日本国内で行われた1786例のLeft-heart catheterizationの内25例でコレステロール塞栓症が合併(1.4%). その内, 皮膚症は0.67%, 腎障害 0.90%, 両方が0.17%.
大腿動脈, 橈骨動脈アプローチで特に差は無し.(J Am Coll Cardiol 2003;42:211-6)
・PCIではRiskは低く, 0.6%との報告がある
心臓外科手術では高Riskであり冠動脈手術で26.1%, 弁手術では8.9%にコレステロール塞栓合併.
腹部大動脈造影では2.9%で合併.
・AAA置換術後では77%でコレステロール塞栓を生じ得る.
・Stent graftによるAAA治療では, コレステロール塞栓症状の改善を見込める (J Vasc Surg 2004;40:424-9)



CESの症状
CESでは微小血栓が全身に播種することで様々な症状, 所見を呈する.
・炎症反応: 発熱, 悪寒, 体重減少, 食欲低下, 筋肉痛などの非特異的症状
・検査では血小板減少や白血球増多, ESR亢進, CRP上昇, 補体低下などが認められる.
好酸球増多は~80%で認められ, 6-18%程度.
 発症初期で多い. 機序は不明.

高齢者の腎不全では6.9%がコレステロール塞栓由来
・≥60yrの急性腎不全患者259名の腎生検では,  6.9%でコレステロール塞栓を認めた. (Am J Kidney Dis. 2000;35:433– 447. )
コレステロール塞栓症の50%で腎への塞栓(+)あり, Cre上昇(83%)と蛋白尿(54%)認める

消化管のコレステロール塞栓は18.6-48%で認める.
・粘膜障害, 潰瘍形成による慢性出血偽ポリープ形成, 潰瘍による急性出血パターンがある.

皮膚は35-96%で塞栓を認める部位.
・下肢の皮膚に多く, 体幹, 上肢には少ない.

Livedo reticularis
49%
Ulceration
17%
gangrene
35%
Nodules
10%
Cyanosis
28%
Purpura
9%
(Arch Dermatol. 1986;122:1194–1199. )

中枢病変
・多発性の脳梗塞を呈する.
塞栓による脳梗塞では神経局所症状を呈することが多いが, CESによる中枢病変では記憶障害や昏迷などを呈することが多い.
上行大動脈のプラーク厚が4mm以上あると脳梗塞, 塞栓のリスク因子となる.
(Curr Atheroscler Rep (2013) 15:315 )

臓器傷害のまとめ
(Int. J. Mol. Sci. 2017, 18, 1120 )

CESの診断
Hypereosinophiliaは約80%で認められる.
・発症初期数日のみ認める場合が多く6-18%程度の上昇. 程度, 期間は様々.
 手技前後のEoを比較し, 上昇していれば有意ととらえても良い
・機序は不明だが, サイトカインの影響と考えられている.

特異的な検査所見は無く, 臨床所見による診断が殆ど.
・発症のトリガー(カテ, 侵襲), 所見(CNS, , 皮膚)Point.
確定診断は生検によるコレステロール結晶の検出.