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2019年5月24日金曜日

β-Dグルカンの偽陽性

β-Dグルカンは深在性真菌症やニューモシスチス肺炎の診断に有用な検査であるが, アルブミン投与やIg投与, 輸血, 透析, 抗真菌薬などで偽陽性となることが指摘されている.

実際どの程度これらの因子が影響するのか?

アルブミンとβ-Dグルカン

ICUβ-DGを評価した267例の後ろ向き解析.
(Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2015 Feb;34(2):357-65. )
・BG試験におけるIFIに対する感度, 特異度をアルブミン投与, Ig投与, 輸血施行群で評価, 比較
・全体の評価では, カットオフ 95.9pg/mL, 感度82.9%, 特異度56.7%
アゾール系抗真菌薬の使用, IVIG, RBC輸血はBG試験の感度, 特異度に影響は認められず.
アルブミン投与のみ, BG試験の感度, 特異度に影響あり
 >30gAlb(20%製剤で>150mL)2日以内に投与している場合BG試験の感度は低下する. 感度36.2%[25.0-48.7], 特異度84.7%[77.5-90.3] 
 この場合のカットオフは203.7pg/mL

中国における前向きStudy: ICU患者267例において, Alb投与前後のβ-DGを評価.
(Zhonghua Wei Zhong Bing Ji Jiu Yi Xue. 2015 Aug;27(8):672-6. )
・β-DGの変化(ng/L)
 IFI否定群では 11.25±2.33 → 10.99±1.07, p=0.085
 IFI疑い群 53.14±5.53 → 49.22±8.11, p=0.693
 IFI濃厚群 90.30±9.38 → 85.41±10.11, p=0.860
 IFI 100.98±19.24 → 103.21±17.66, p=0.449

アルブミン投与してもβ-Dグルカンの上昇に関連しない報告もあれば, 大量投与により偽陽性が増加する報告もある.

実際アルブミン製剤にどの程度β-Dグルカンが含まれているかを評価した報告もある.

人血清アルブミン5%製剤の国産製品3種類(A-C)海外製品1種類(D)における含有量を評価
(Therapeutic Research 2013;34:1261-1269)
・β-Dグルカン(pg/mL)
海外製品の含有量が高いが国産製品の含有量は多くはない.
・30pg/mLと仮定すると, 5%製剤250mLで7500pg.
 血漿量を2500mLと仮定すると, 1本投与にて3pg/mL上昇する計算.


免疫グロブリンとβ-Dグルカン

日本国内で使用可能なIVIG製剤7種で各製剤3ロットずつβ-Dグルカンを測定.
(感染症誌 2017;91:1-6)
・含有量は製剤により差がある
・最も高濃度の300pg/mL5g(100mL)投与すると
 血漿量2500mlでは12pg/mL上昇する計算となる

同じ論文で, IVIG投与前にβ-Dグルカンが陰性であった51例で投与後のβ-Dグルカンを評価
・投与期間は2.9±1.2, 投与量は15g(2.5~150g, 50mL~3000mL)
投与前後のβ-Dグルカン:
使用終了~3[1-6]で評価され, β-Dグルカン値は有意に上昇を認めた.
 >20pg/mL5/51で認められ最も上昇した症例では44.5pg/mL上昇
・上昇例と非上昇例では製剤や投与量, 期間に差は認められない.


透析膜とβ-Dグルカン

Literature reviewでは, 
透析膜は, Unmodified cellulose膜でβ-DGが偽陽性となる
Modified celluloseでは結果が割れている.
(Mycoses. 2015 Jan;58(1):4-9. doi: 10.1111/myc.12267.)

・Unmodified celluloseでは透析後の数値は平均100pg/mL
日本からの報告では,Modified cellulose膜を使用した透析においてβ-DGが中央値2778pg/mL上昇した報告がある

日本国内より, 透析前後のβ-Dグルカンを評価した報告
(Kidney International, Vol. 60 (2001), pp. 319–323 )
・β-DグルカンはCellulose膜でのみ顕著に上昇を認める.
 Cellulose triacetate, PMMA膜では上昇しない.

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この辺の感覚を踏まえておかないと, ICUで過少・過大評価に繋がるかもしれません.
結構β-Dグルカン値を解釈でこの辺の議論になることが多いです.

2019年5月22日水曜日

NPHとパーキンソン病

80歳代男性. 主訴 体動困難.
 他病院でパーキンソン病(PD)と診断され, 加療されている患者.
 徐々に進行する体動困難があり, 3日前より動けなくなったとのことで救急要請された.

 診察の結果, 感染症や脳梗塞, 脱水といった急性疾患は否定され,
 頭部CTでは正常圧水頭症に典型的な所見(DESH)が認められた.

 身体所見では, 安静時振戦は認められない, 左>右の歯車様固縮+程度.
 入院後, 歩行させると左右足は肩幅程度に開き, 小刻み, すり足歩行.

あれ? これってPDよりはiNPHでは?
そもそもPDとiNPHってどのような違いがあるのだろうか?
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iNPHとパーキンソン病の症候は類似しており, しばしば鑑別に苦労する.

Tap testに反応したiNPH 55例を前向きに評価した報告
(J Clin Neurol 2016;12(4):452-459)
・パーキンソン症状は高頻度で認められ左右非対称性のパーキンソン症状は32(58.2%)で認めた
・”Tap testに反応するパーキンソニズム” と記載している論文もある

PDとiNPHの比較
(Nat. Rev. Neurol. 6, 52–56 (2010); doi:10.1038/nrneurol.2009.195 )

歩行様式のシェーマ
(日内会誌 2011;100:3640−3648)

iPNHPDの歩行障害を比較した報告
(J Neural Transm (Vienna). 2013 Aug;120(8):1201-7. )
・iNPH 35, PD 40, Control 30例において歩行障害を評価
 NPHprobable NPHで定義
・歩行は10m歩行試験を行い, 以下の項目を評価
 ・歩行速度(GV): sec/10mで計算
 ・歩幅(SL): 10m/歩数で計算
 ・Cadence(SC): 歩数/時間(10m歩行における秒数)
姿勢反射はShoulder tug test(STT)で評価(肩を後方に押して評価する)
 ・1歩も出さずに維持可能(0),
 ・1歩出すが安定(1)
 ・>1歩必要だが, 安全(2), 
 ・数歩必要で注意が必要(3)
 ・1歩も出ずに転倒(4)

また歩行様式: Frantal gait(FG), Sub-cortical hypokinetic gait(SHG)も評価
 ・FG: バランス障害, 前頭葉症状(マイヤーソン徴候, 口尖らせ反射, 把握反射), 下肢失行, 体幹や下肢の強直
 ・SHG: 緩徐な歩行で, 手がかりにより改善する歩行. 加速歩行, すくみ足歩行, turn enbloc(小刻みにターンする), パーキンソン症状(動作緩慢, 強直, 振戦), すり足
 ・歩幅の狭小化, 姿勢反射障害, すくみ足は双方で認めてよい
  基本的にPD患者ではSHG, NHP患者ではFG様症状が認められる.

アウトカム: 歩行様式
FGの要素はNPHで多いがSCHの要素は双方で多く認められる.

歩行速度, 歩幅など
歩行速度はNPHが最も遅い
 Cadenceは変わらないが歩幅が狭いため, 遅くなる
・姿勢反射も最もNPHで障害される

NPHPD症例において, 姿勢不安定性を評価
(Clinical Neurology and Neurosurgery 165 (2018) 103–107)
・iNPH 27, PD 20, Control 20例において, TUG試験と立位静止時の重心, 傾けた際の重心位置を評価.
・iNPHは国際Guidelineに準じて評価(probable iNPH).
重心位置の評価は図のような装置を使用
 足は踵間を10cmで固定し, 30秒間の重心位置を記録.
 前後左右に10秒間もしくは耐えられる時間傾けてその間の重心も記録

アウトカム
TUGPD, iNPH双方で同等.
静止時の重心の変動はPD, iNPHで大きい.
 前後の傾きではPD, iNPHで差はないが左右の傾きではiNPHでより重心変動が大きい

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改善する可能性がある認知症, 歩行障害, パーキンソン症状としてNPHは重要な鑑別.
NPHの関連を示唆する情報としてはWide basedの歩行であること, Frontal gait様の特徴を有する点があげられる
姿勢反射はPDでは前後方向が障害されるが, NPHでは前後左右で障害されるため, 身体診察では左右の評価も重要かもしれない.
また, L-dopa試験も鑑別に有用との報告もある.
両者の合併も可能性としてはあるため, どちらの要素が強いか, それによりTap testの適応も検討する必要がある.

2019年5月20日月曜日

敗血症性DICに対するトロンボモジュリン

Phase 3 trialが発表されました
(JAMA. doi:10.1001/jama.2019.5358 )

SCARLET trial: 敗血症+凝固障害 816例を対象としたDB-RCT
・敗血症で凝固障害を有する患者, 且つ昇圧剤を必要とする and/or 人工呼吸器管理(P/F <250, 肺炎の場合は<200)となった患者群を対象.
凝固障害はINR>1.40 またはPLT 3-15/µLもしくは24h以内に30%以上の低下を認め, 敗血症以外の原因がないことで定義

上記患者群を, rTM 0.06mg/kg/d vs Placeboに割り付け, 6日間継続
・最大投与量は6mg, 15分かけて投与
・アウトカムは28日死亡率, 出血リスクなど.

母集団

アウトカム
 ・全体では28日死亡リスクに有意差なし(26.8% vs 29.4%)

サブ解析
・どれも有意差はなない
INR>1.4 + PLT >3万では意義があるかもしれない
・4部位の多臓器障害がある場合は予後を増悪させる可能性がある

治療に伴う合併症は有意差なし

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個人的に注目していたPhase 3が発表されました
この薬はPhase 2も3も、ポジティブStudyがないのによく使用されていますよね.
敗血症では自分は使ったことなくて, 一度○ァイザー主催の交流会で吊るし上げられたことありますけども.