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2017年6月23日金曜日

オルメサルタン関連腸炎

(Human Pathology (2016) 50, 127–134 )(Arch Pathol Lab Med. 2015;139:1242–1247 )よりまとめたもの

オルメサルタン(オルメテック®)ARBであるがSprue-like enteropathyを来すことがある.
・2012年に提唱され, 2015年までに100例ほど英語論文で報告されている
 Olmesartan-associated enteropathy(OAE)という疾患概念が形成された.
・頻度は稀であり, 4000人規模のオルメサルタンのRCT(ROADMAP)では両群で下痢や腸炎の頻度に有意差はない結果.
報告例の平均年齢は68. 範囲は46-91歳と高齢者で多い.
 男女差は認めない.
大半の患者が慢性の非血性下痢と体重減少が認められる
 他は倦怠感, 悪心嘔吐, 腹痛, 腹部膨満感
 重症例では脱水や電解質異常, 低栄養で入院が必要となる.

・Olmesartan開始後数カ月~数年経過して発症
 平均 3.1年間, 範囲 0.5-7年間という報告もある.

血液検査所見では,
・正球性貧血, 低アルブミン血症
Celiac sprueの検査であるanti-trasglutaminase, anti-gliadin, anti-endomysial antibodiesは陰性.
・HLA-DQ2, DQ865例中45(69%)で認められる. HLA-DQ2が最も多い
 DQ2, DQ8Celiac sprueのリスクでもある
 補足: 日本人では, DQ20.26%, DQ88.74% (http://www.bmdc.jrc.or.jp/stat.html 骨髄提供希望登録者の頻度)

画像所見は非特異的.
・小腸 腸管壁のびまん性腫大と腹腔内リンパ節腫大が認められる.
内視鏡では粘膜の小結節形成, 絨毛萎縮, 潰瘍病変が認められる.

OAEの組織所見
・十二指腸粘膜生検でよく報告されるのが絨毛構造異常
 100例中92例で絨毛の鈍化所見が認められた.
 5例は絨毛構造は正常, このうち2例は上皮内リンパ球浸潤あり


1: 十二指腸絨毛の鈍化が認められる
2: 部分的な絨毛構造の鈍化, 粘膜固有層の炎症が粘膜下層に及んでいる

・上皮内リンパ球の増加: 25~100以上/100enterocyte (61%で陽性)
粘膜下のコラーゲン線維の肥厚(22%)も多く認められる所見.


3: 上皮内のリンパ球増加
4, 5: 粘膜下コラーゲン線維の肥厚

・胃粘膜では潰瘍やlymphocytic, collagenous gstritisの所見が得られることもある(6)
大腸や潰瘍末端部でも十二指腸と同様の所見や, 陰窩アポトーシス, 陰窩過形成, 好酸球増多を伴う粘膜固有層の慢性炎症所見が認められる(7)

2016年のReviewより, 104例のまとめ
(Human Pathology (2016) 50, 127–134 )
(DQ2/DR8はDQ2/DQ8と思われる)

OAEの診断, 治療
OAEは除外診断であり, 他にCeliac sprueや自己免疫性腸炎の診断, 除外が優先される.
・除外が必要な疾患: 自己免疫性腸炎, Celiac sprue, CVID(common variable immune deficiency), 細菌過増殖
オルメサルタン内服中に出現した腸炎で
 他の原因が考えにくく
 組織所見で矛盾しない結果ならばOAEを考慮する.
治療はオルメサルタンの中止
 中止後 1週間以内に下痢症状は改善を認める事が多い
・薬剤中止前にステロイドや免疫抑制剤を使用した報告では一部の患者では, 症状の改善が得られている.
薬剤中止後組織所見をフォローした46例では前例で所見は改善
 中止後2ヶ月以上で, 絨毛構造の正常化は41/46で確認された

他疾患とOAEの組織所見の鑑別点

市中急性腸炎(下痢あり, 嘔吐なし)の1/10がCDIかもしれない

米国の10箇所のERにおいて, 2歳以上で下痢(13回以上)を認め, 嘔吐を認めない患者群を前向きに評価.
(Ann Emerg Med. 2017;70:19-27.)
・上記を満たす患者で便培養, CDトキシン検査を行い, CDIを評価した.
・422例の患者で評価(46[30-57], 範囲2-94)
 このうち 47(11.1%)が便培養, 肛門スワブ培養でCD陽性であり
 さらに43(10.2%)でトキシン陽性であった 

場所により頻度には差がある

CDI群とそれ以外の比較

CDIのリスク因子

3ヶ月以内の抗菌薬暴露, 医療施設に1泊以上の滞在, CDIの既往は市中CDI感染症のリスクとなる.
ただし, これらリスクを認めない症例が39.5%をしめる.

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もはやCDIは「入院患者の下痢」というイメージから脱却し,
感染性腸炎の原因の1つ と捉える方が良いであろう.

2017年6月20日火曜日

口腔内レンサ球菌による心内膜炎と歯磨き習慣

口腔内レンサ球菌によるIE症例 73例とそれ以外の細菌によるIE症例 192例で歯磨き習慣, 歯科処置を比較したProspective, Case-control study
(Clinical Infectious Diseases® 2017;64(12):1678–85)
・IV drug userRt-sided IEは除外される.
歯磨き習慣は質問票により調査
 歯科処置はIE診断から3ヶ月前までの処置を評価
 また, IEの原因菌, 歯磨き習慣がブラインドされた歯科医により, 口腔歯牙の衛生状態も評価された.

両群の母集団

両群における歯磨き習慣, 歯科処置の比較

口腔内レンサ球菌のIEと関連がある行為は
 食事の後に歯磨きをしない
 フロスなど歯間ブラシを使用する
 3ヶ月以内の歯科処置 がある

口腔内衛生状態の比較
・差があるのは歯髄壊死のみ.

多変量解析による口腔内レンサ球菌IEのリスク因子
・<65, 女性例, Native valve
食後に歯磨きしない
・フロスなど歯間クリーニング器具を使用
3ヶ月以内の歯科処置 が挙げられる

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面白い結果です.

フロスや歯間ブラシなどを使ってれば良いわけではなく, それはむしろIEのリスク.
歯磨きも毎食後しっかりするのが重要, ということ.

敗血症治療におけるプロカルシトニン測定の意義

プロカルシトニン(PCT)は敗血症や細菌感染症で評価されることがる項目だが,
そのPCTを指標として抗生剤投与期間を決める、というRCTがある.

オーストリアにおける多施設open-label RCT.
(Lancet Infect Dis 2016; 16: 819–27)
・感染症でICU管理となった患者群を対象としPCTを指標として投与期間を決める群 vs 通常の治療群に割付け, 比較
PCT指標群はピーク値から80%以上低下するか, 0.5µg/L以下となれば終了.

患者は18歳以上で, ICU患者で感染症を認める群.
 予防的投与やSelective decontamination of the digestive tract目的心内膜炎など長期的投与が必要とする病態, 重症免疫不全ウイルス, 寄生虫, TBによる感染症は除外
 ステロイド投与中患者は除外しない.

母集団のデータ

アウトカム
・PCT指標群の方が抗生剤投与期間は短縮
・そして死亡リスクも低いという結果.


この結果を踏まえて, リアルワールドでどうか, ということを調査した報告

米国のICUPCTが測定可能な107施設において, 20750例の敗血症症例を後ろ向きにReview.
(Clinical Infectious Diseases® 2017;64(11):1509–15)
・このうち3769(18%)PCTが評価されておりさらに1119(29.7%)PCTの変動もフォローされていた.
・PCTの評価タイミングは抗生剤開始後 1.6±5.2.
 また, フォローの評価は平均 3.2±4.6日後
PCT評価の頻度は病院により差がある: 敗血症症例の1-95%で評価

測定群 vs 非測定群の比較
PCT測定群ではAbx投与期間が長く, CDI発症率も高く, 死亡リスクは変わらない
・複数回測定でも同様の結果

病院毎のPCT測定率とアウトカムの関連
・これらは特にPCT測定率間で変わらない結果.


2017年6月16日金曜日

アスピリンにNSAID併用するときはCOX-2阻害薬を

Lancet 2017; 389: 2375–82より

CONCERN trial: 香港の大学病院におけるDB-RCT.
・心臓血栓性疾患 + 関節炎があり, アスピリン + NSAID併用が必要な患者で, 且つ上部消化管出血を認めた患者514例を対象.
患者はピロリ陰性が確認, もしくは除菌されている.
上部消化管手術歴, 食道炎, 腎不全(Cr≥2.26mg/dL), 妊婦, ターミナル, 担癌患者は除外

上記患者群を, アスピリン 80mgに加えて
・セレコキシブ 100mg bid + Esomeprazole 20mg/d併用群
Naproxen 500mg bid + Esomeprazole 20mg/d併用群に割付け, 18ヶ月以内の消化管出血再発リスクを比較.

母集団のデータ

アウトカム

・18ヶ月の上部消化管出血リスクは有意にセレコキシブ群で低い.(HR 0.44[0.23-0.82])
心血管イベントリスクは有意差なし

・関節炎のDisease-activity scoreは両者とも低下を認める

上部消化管出血後でアスピリンにNSAIDを併用せねばならないときはCOX-2阻害薬とPPIの併用がベター