抗血小板薬2剤療法を行う(アスピリンとクロピドグレルの組み合わせが多い).
上記2剤療法にシロスタゾールを併用した3剤療法を行うとどのような利点があるか?
ACS患者1212例を対象としたRCT
(Am Heart J 2009;157:733-9.)
・UAP, non-STEMI, STEMIで受診した20-80歳の患者群・PCI後にASA+Clopidogrelの2剤療法群 vs 上記 + Cilostazolを6ヶ月併用した3剤療法群に割り付け, 比較.
ASA 300mg/dを1ヶ月, 以後100mg/d
Clopidogrel 300-600mg, その後75mg/dを3-12ヶ月
Cilostazol 100mg bidを6ヶ月間.
・アウトカムは1年以内の心血管イベントリスク
母集団
アウトカム
・心血管死亡, MI, Strokeリスクは有意に3剤療法群で低い結果.
・MACCE(major adverse cardiac or cerebral event)も有意に低い結果.
・副作用はCilostazol使用群で動悸や頭痛, 皮疹が多い
・出血リスクは有意差なし.
DECLARE-Long: ACSで≥25mmの病変に対して, ≥32mmのDESを用いてPCIを行った患者群500例を対象 (Am J Cardiol 2007;100:1103–1108)
・ACS患者でPCIを施行後, 抗血小板療法として, ASA + Clopidogrel群(2剤療法) vs 2剤 + Cilostazol (3剤療法)群で6ヶ月間継続し, 再度血管造影を施行し, 所見を比較した.
・また, 使用するDESもSirolimus vs Paclitaxel-eluting stent群で比較.
母集団
血管造影所見
・Late-loss(PCI直後の血管径とフォロー時の血管径の差)は有意に3剤療法群で少ない
・3剤療法群の方が狭窄リスクは低い可能性
9ヶ月における臨床アウトカム
・TLR(Target lesion revascularization)は有意に3剤療法群で少ない結果.
・死亡やACSリスクは有意差なし.
・副作用は出血リスクは有意差なし
・消化管症状は3剤療法で有意に多い.
DECLARE-DIABETES: 糖尿病患者でPCIを施行した患者群400例を対象としたRCT.
(Am J Cardiol 2007;100:1103–1108)
・ACS患者においてDESを使用しPCIを施行.
その後ASA + Clopidogrel (2剤群) vs 2剤+ Cilostazol(3剤群)に割り付け 6ヶ月継続.
・6ヶ月後の血管造影検査所見を評価.
・DESはSirolimus, Paclitaxel-eluting stentを使用.
母集団
血管造影検査結果
・Late lossは有意に3剤療法群で少ない結果.
臨床アウトカム
・TLRは有意に3剤療法で少ない.
・出血リスクは有意差なし
2剤療法 vs 3剤療法を比較した17 trialsのMeta-analysis.
(Open Heart 2014;1:e000068. )
・Studyの大半が第一世代DES(PES, SES)
・BMSを除いたDESによるPCIで, 3剤療法の効果を評価
アウトカム
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Platelet reactivity units
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MD -47.73[-61.41~-34.04]
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% PLT inhibition
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MD 12.71[10.76-14.67]
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MACE
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IRR 0.64[0.55-0.75]
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全死亡
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IRR 0.82[0.59-1.15]
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MI
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IRR 0.80[0.58-1.11]
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TLR
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IRR 0.57[0.44-0.74]
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TVR
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IRR 0.65[0.54-0.79]
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ステント血栓
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IRR 0.64[0.39-1.05]
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Major bleeding
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IRR 1.26[0.79-2.00]
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Minor bleeding
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IRR 1.44[0.87-2.37]
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Any bleeding
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IRR 1.37[1.03-1.80]
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薬剤中断
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IRR 1.60[1.31-1.95]
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まとめると,
DESによるPCI後の抗血小板薬は2剤療法よりも3剤療法(ASA, Clopidogrel, Cilostazol)を使用したほうが血小板活性の抑制効果は高く, 再狭窄リスクは低下する.
ただし, 薬剤による副作用は増加. Major bleedingリスクに有意差はないが, 頭痛や動悸, 消化管症状は増える.
またこれらのStudyは主に第一世代のDESを用いたStudyであり,
第二世代ではどうかはまだ不明.
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では第二世代DESを用いた場合は3剤療法の方良いのか?
第一世代DES
Sirolimus, Paclitaxel-eluting stentが第一世代にはいる
第二世代DES
Everolimus, Zotarolimus-eluting stentが第二世代.
COACT cohortにおいて, EES, ZESでPCIを施行された1248例でPCI後2剤療法施行群 vs 3剤療法施行群をPropensity-matched analysisを用いて抽出(各群 362例ずつ).
(Medicine 94(46):e2062)
・Major cardiovascular events(MACE)リスクを比較した.
・薬剤投与量と期間は
ASA 250-500mg初回, 100mg/dで継続,
Clopidogrel 300-600mg初回, 75mg/dで6ヶ月以上継続,
Cilostazol 200mg/日を3ヶ月以上投与
アウトカム(平均13ヶ月フォロー)
・MACEは2剤群, 3剤群で有意差なし.
・TLR/TVRはHR 1.64[0.85-3.17]と有意差ないが, IPTW調整HR 2.39[1.25-4.59]と有意差あり
第二世代DESでも3剤のほうが再狭窄リスクは少ないのか、どうかは未だ結論はでない.
RCTを待ちたいところではある.
第一世代では再狭窄リスクが低くなり, 心血管イベントリスクも低下するため,
高リスク群では考慮すべきといえる.