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2015年11月12日木曜日

意外にある腹痛の原因: 前皮神経絞扼症候群(ACNES)

前皮神経絞扼症候群 (Anterior Cutaneous Nerve Entrapment Syndrome: ACNES)

腹壁の感覚を支配する皮神経が, 腹壁で絞扼されることで急性経過~慢性経過の腹痛を呈することがある.
・腹痛は局所的であり, 圧痛部位は<2cm2程度, 最強点は指一本分.
 圧痛は腹筋を緊張させると増悪する(Carnett試験)のが特徴的.
・圧痛部位に1%リドカイン 10mlを皮下注すると10-15分で疼痛は改善する.
(Ann Surg 2011;254:1054–1058)

ACNESの頻度: 稀な疾患と言われつつ, 気づかれていない可能性が高い.
・オランダの教育病院のERにおける評価では, 急性腹痛で受診した5111例中, ACNESは97例(1.9%)であった報告がある.
 その統計より推測されるACNESの有病率は1/1800程度とされる.(Resuscitation and Emergency Medicine (2015) 23:19)
10-18歳の小児における慢性腹痛(外来症例)の解析では慢性腹痛で外来受診した症例 95例中, ACNESは12例で診.(12.6%, 8人に1人がACNES). (Prevalence of Anterior Cutaneous Nerve Entrapment Syndrome (ACNES) in a Pediatric Population with Chronic Abdominal Pain. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2015 Aug 26.)


ACNESの腹痛部位
・腹直筋の外縁を皮神経が通過するため, 同部位に沿って圧痛点がある.
(J Am Board Fam Med 2013;26:738–744.) 

ACNESの身体所見
ACNESでは, 
・限局(<2cm2程度)する圧痛点の存在,
・圧痛点周囲の触覚, 温痛覚の低下
・圧痛点周囲の皮膚をつまむと疼痛が増強する所見が得られる.
・また, Carnett試験はACNESでは有用な身体所見であり, 8-10割で陽性となる.

Carnett試験圧痛部位を限局的に圧迫しつつ, 腹壁を緊張させる
・疼痛が増悪すれば陽性 = 腹壁の痛みを示唆する所見.
130例の腹痛患者において, Carnett試験を施行
・腹痛は精神的な疼痛, 腹壁痛, 腹腔内の疼痛の3つに分類され, 最終的に 精神的疼痛は22例, 腹壁痛 19例, 腹腔内の疼痛が62例.(残りは診断不明, 試験施行できず, IBS, FDなどで除外)
・精神的腹痛患者では19/22がCarnett試験陽性
・腹壁痛では16/19が陽性.
・腹腔内の疼痛ではCarnett陰性が54/62であった

それぞれの内訳:
ACNESは3例のみであり, そのうち2例がCarnett試験陽性
(Intern Med 50: 213-217, 2011) 

ACNESの症例報告より
ACNES: 139例のコホート
・女性例が77%, 男性例が23%と女性で多い. 
・平均年齢は47±17歳, 13-87歳まで幅広い.
・腹痛の持続期間は様々. 数カ月~数年である
・腹痛部位は, 右腹部(62%), 左腹部(37%), 右下腹部(47%)
 複数のトリガーポイントがある例が6%
・Carnett試験で陽性が88%であった

ACNESの原因
・突発的に出現したのが半数
 外科手術や妊娠, 運動に関連する.
(Ann Surg 2011;254:1054–1058)

ACNES 88例のデータ


身体所見



年齢
37[12-76]
右上腹部痛
14.8%
Trigger pointあり
100%
男女比
17:71
左上腹部痛
5.7%
Carnett試験陽性
92.9%
症状の持続期間

右下腹部痛
59.1%
感覚障害
87.0%
<1wk
70.5%
左下腹部痛
19.3%
皮膚のPinchで疼痛あり
88.1%
1wk-1M
15.9%
下腹部両側
1.1%


1M-6M
11.4%




>6M
2.3%




(Resuscitation and Emergency Medicine (2015) 23:19)

ACNESの対応
トリガーポイント注射が1st choice
・圧痛の最強点に1%リドカイン 10mlを皮下注する.
 10-15分で疼痛は改善.
 初回リドカイン投与にて反応するのは86%
 そのうち24%が寛解, 76%が一時的のみの改善
・数週間フォローし再度増悪する例ではリドカイン + 40mg mPSLを皮下注射する.
・改善がない場合は手術治療が選択される.

44例のACNES患者を対象としたDB-RCT.
・外科手術による皮神経切除術 vs 皮膚切開のみに割り付け, 疼痛の変化を比較.
・疼痛はVASと0-5の6段階評価で判断し, VASで50%以上, スケールで2pt以上の改善があれば成功と判断.

アウトカム
・外科手術では有意に治療成功例が多い.
(Ann Surg 2013;257: 845–849)

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