腹壁の感覚を支配する皮神経が, 腹壁で絞扼されることで急性経過~慢性経過の腹痛を呈することがある.
・腹痛は局所的であり, 圧痛部位は<2cm2程度, 最強点は指一本分.
圧痛は腹筋を緊張させると増悪する(Carnett試験)のが特徴的.
・腹痛は局所的であり, 圧痛部位は<2cm2程度, 最強点は指一本分.
圧痛は腹筋を緊張させると増悪する(Carnett試験)のが特徴的.
・圧痛部位に1%リドカイン 10mlを皮下注すると10-15分で疼痛は改善する.
(Ann Surg 2011;254:1054–1058)
ACNESの頻度: 稀な疾患と言われつつ, 気づかれていない可能性が高い.
・オランダの教育病院のERにおける評価では, 急性腹痛で受診した5111例中, ACNESは97例(1.9%)であった報告がある.
その統計より推測されるACNESの有病率は1/1800程度とされる.(Resuscitation and Emergency Medicine (2015) 23:19)
・10-18歳の小児における慢性腹痛(外来症例)の解析では慢性腹痛で外来受診した症例 95例中, ACNESは12例で診.(12.6%, 8人に1人がACNES). (Prevalence of Anterior Cutaneous Nerve Entrapment Syndrome (ACNES) in a Pediatric Population with Chronic Abdominal Pain. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2015 Aug 26.)
ACNESの腹痛部位
・腹直筋の外縁を皮神経が通過するため, 同部位に沿って圧痛点がある.
(J Am Board Fam Med 2013;26:738–744.)
ACNESの身体所見
ACNESでは,
・限局(<2cm2程度)する圧痛点の存在,
・圧痛点周囲の触覚, 温痛覚の低下
・圧痛点周囲の皮膚をつまむと疼痛が増強する所見が得られる.
・また, Carnett試験はACNESでは有用な身体所見であり, 8-10割で陽性となる.
Carnett試験: 圧痛部位を限局的に圧迫しつつ, 腹壁を緊張させる
・疼痛が増悪すれば陽性 = 腹壁の痛みを示唆する所見.
130例の腹痛患者において, Carnett試験を施行
・腹痛は精神的な疼痛, 腹壁痛, 腹腔内の疼痛の3つに分類され, 最終的に 精神的疼痛は22例, 腹壁痛 19例, 腹腔内の疼痛が62例.(残りは診断不明, 試験施行できず, IBS, FDなどで除外)
・腹痛は精神的な疼痛, 腹壁痛, 腹腔内の疼痛の3つに分類され, 最終的に 精神的疼痛は22例, 腹壁痛 19例, 腹腔内の疼痛が62例.(残りは診断不明, 試験施行できず, IBS, FDなどで除外)
・精神的腹痛患者では19/22がCarnett試験陽性
・腹壁痛では16/19が陽性.
・腹腔内の疼痛ではCarnett陰性が54/62であった
それぞれの内訳:
・腹壁痛では16/19が陽性.
・腹腔内の疼痛ではCarnett陰性が54/62であった
それぞれの内訳:
ACNESは3例のみであり, そのうち2例がCarnett試験陽性
(Intern Med 50: 213-217, 2011)
ACNESの症例報告より
ACNES: 139例のコホート
・女性例が77%, 男性例が23%と女性で多い.
・女性例が77%, 男性例が23%と女性で多い.
・平均年齢は47±17歳, 13-87歳まで幅広い.
・腹痛の持続期間は様々. 数カ月~数年である
・腹痛部位は, 右腹部(62%), 左腹部(37%), 右下腹部(47%)
複数のトリガーポイントがある例が6%
・Carnett試験で陽性が88%であった
ACNESの原因
ACNESの原因
・突発的に出現したのが半数
外科手術や妊娠, 運動に関連する.
外科手術や妊娠, 運動に関連する.
(Ann Surg 2011;254:1054–1058)
ACNES 88例のデータ
身体所見
|
|||||
年齢
|
37歳[12-76]
|
右上腹部痛
|
14.8%
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Trigger pointあり
|
100%
|
男女比
|
17:71
|
左上腹部痛
|
5.7%
|
Carnett試験陽性
|
92.9%
|
症状の持続期間
|
右下腹部痛
|
59.1%
|
感覚障害
|
87.0%
|
|
<1wk
|
70.5%
|
左下腹部痛
|
19.3%
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皮膚のPinchで疼痛あり
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88.1%
|
1wk-1M
|
15.9%
|
下腹部両側
|
1.1%
|
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1M-6M
|
11.4%
|
||||
>6M
|
2.3%
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(Resuscitation and Emergency Medicine (2015) 23:19)
ACNESの対応
トリガーポイント注射が1st choice
・圧痛の最強点に1%リドカイン 10mlを皮下注する.
10-15分で疼痛は改善.
初回リドカイン投与にて反応するのは86%
そのうち24%が寛解, 76%が一時的のみの改善
10-15分で疼痛は改善.
初回リドカイン投与にて反応するのは86%
そのうち24%が寛解, 76%が一時的のみの改善
・数週間フォローし再度増悪する例ではリドカイン + 40mg mPSLを皮下注射する.
・改善がない場合は手術治療が選択される.
44例のACNES患者を対象としたDB-RCT.
・外科手術による皮神経切除術 vs 皮膚切開のみに割り付け, 疼痛の変化を比較.
・疼痛はVASと0-5の6段階評価で判断し, VASで50%以上, スケールで2pt以上の改善があれば成功と判断.
・疼痛はVASと0-5の6段階評価で判断し, VASで50%以上, スケールで2pt以上の改善があれば成功と判断.
アウトカム
・外科手術では有意に治療成功例が多い.
(Ann Surg 2013;257: 845–849)