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2015年11月3日火曜日

新規発症の難治性てんかん発作(NORSE)の原因

てんかんの既往がない患者のてんかん発作で,
ベンゾジアゼピンやフェニトイン, 他の抗てんかん薬を使用しても改善しない疾患群を
New-onset refractory status epilepticus (NORSE)と呼ぶ.

稀な病態であるが, 個人的にも診療した経験はあり,
その時はバルビツレート, プロポフォールなど様々な薬剤を高用量使用しても抑えきれなかった.
てんかん発作を押さえるよりは原因疾患治療が優先されると判断し, 精査した結果, 卵巣奇形腫が認められたため, 傍腫瘍性と判断した症例であった.

NORSEではどの様な原因が多いのであろうか?
NeurologyよりNORSE 130例の原因疾患の報告が出たので紹介する

てんかんの既往がなく, 新規発症で治療抵抗性であったてんかん症例 130例の解析
(Neurology® 2015;85:1604–1613)
・治療抵抗性とは1st line, 2nd lineの治療に不応性であったことで定義
・さらに以下を満たす患者群を評価した
 ・≥18歳の成人例
 ・病歴や補助検査において, 入院後48時間以内に原因がわからない症例(脳挫傷, 細菌性髄膜炎, 膿瘍, ヘルペス脳炎, 薬剤性, てんかん既往はその時点で除外される)
 ・24時間以上の持続脳波検査が施行され
 ・自己免疫性, 傍腫瘍性辺縁系脳炎の抗体が評価されている.

患者は18-81歳で, 28.5歳と65.5歳に二峰性のピークをとる
≥50歳は48%程度.
・男女比は47:83と女性で多い.

難治性てんかんの原因は63/130(47%)で判明
自己免疫性(自己抗体陽性で腫瘍無し) が25/63(40%)
・傍腫瘍症候性(抗体の有無にかかわらず, 腫瘍を認める)が19/63(30%)
・感染症は10/63(10%)のみと少ない.
原因





原因不明
52%
傍腫瘍性
18%
感染症
8%
自己免疫性
19%
抗NMDA受容体抗体
7%
EBV
2%
抗NMDA受容体抗体
5%
抗VGKC複合抗体
2%
VZV
2%
抗VGKC複合抗体
4%
抗Hu抗体
2%
CMV
1%
SREAT
4%
抗VGCC抗体
2%
WNV
1%
神経ループス
3%
抗CRMP5抗体
1%
Mycoplasma pneumoniae
2%
抗GAD65抗体
2%
抗Ro抗体
1%
梅毒
1%
抗striational
1%
血清陰性
3%
Toxoplasma gondii
1%




その他





SESA
2%




Leptomeningeal carcinomatosis
2%




CJD
1%
CMV: cytomegalovirus, CRMP5: collaps- ing response mediator protein 5, EBV: Epstein-Barr virus, GAD65: glutamate decarboxylase 65 kDa, SESA : sub-acute encephalopathy with seizures in alcoholic patients, SREAT: steroid-responsive encephalopathy associated with autoimmune thyroiditis, VGCC: voltage-gated calcium channel, VGKC: voltage-gated potassium channel, VZV: varicella zoster virus, WNV: West Nile virus. 

傍腫瘍性の原因
Antibody Neoplasm N = 23
Anti-NMDA receptor Ovarian teratoma 9 (39)
Anti-VGKC complex Small cell lung carcinoma
Lung adenocarcinoma
Uterine carcinoma
1 (4)
1 (4)
1 (4)
Anti-Hu Small cell lung carcinoma
Uterine carcinoma
2 (9)
1 (4)
Anti-VGCC Thymoma 1 (4)
Anti-CRMP5 Thymoma 1 (4)
Anti-Ro Thymoma 1 (4)
Seronegative Small cell lung carcinoma
Uterine carcinoma
3 (13)
1 (4)

抗NMDA受容体抗体は全例卵巣奇形腫
抗VGCC抗体, 抗CRMP5抗体, 抗Ro抗体は胸腺腫
血清陰性では肺小細胞癌が多い.

NORSEでは自己免疫性, 傍腫瘍性を考慮し, できるだけ早期に原因の評価を行なうべきである.
疑わしければ抗てんかん薬に加えて, ステロイド治療, 血漿交換, IVIGを考慮する.
それでも改善が乏しければ, 傍腫瘍性ならば摘出を考慮する必要がある.

この辺は複数専門科との連携が重要であり,
先ず ICU管理医が自己免疫性, 傍腫瘍性に気付けるかどうか
気づいても, 辺縁系脳炎の自己抗体なんぞ結果が得られるまでに数週間覚悟せねばならないため, 結果が不明な状況で, 見切り発車でステロイドパルスや血漿交換に踏み切らねばならない. 
さらに, それが効果が乏しいならば外科, もしくは婦人科と連携して腫瘍摘出も考慮する必要がある. 痙攣がコントロールできていない患者では先ず手術なぞしてくれるわけもない... という問題を多く抱える領域ということを実感している.

こういう病気を疑っています! 可能性はかなり高いです!
というようなデータを常に持っている必要があり, その点この論文はとても素晴らしい!
と思いました。

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