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2014年4月26日土曜日

巨赤芽球性貧血 Review

巨赤芽球性貧血 Megaloblastic anemia
ビタミンB12や葉酸欠乏等により, DNA合成が阻害され巨赤芽球が産生される貧血
 MCVが増加する大球性貧血を呈する.

大球性貧血の原因頻度 (AFP 2009;79:203-208)
原因
入院患者
@NY*
外来患者
@Finland†
>75yr 
@Finland‡
患者
@US, Finland¶
アルコール
26%
65%
15%
36%
Vit B12, 葉酸欠乏
6%
9%
28%
21%
薬剤性
37%
3%
2%
11%
甲状腺機能低下
-
1%
12%
5%
骨髄異形成
6%
1%
5%
5%
肝疾患
6%
-
2%
6%
Reticulocytosis
8%
-
-
7%
その他
3%
21%
13%
7%
不明
7%
-
22%
12%

* Am J Med Sci 2000;319:343-52
† J Stud Alcohol 1996;57:97-100
‡ Age Ageing 1996;25:310-2
¶ Med Clin North Am 1992;76:581-97

大球性貧血を来す薬剤 (AFP 2009;79:203-208)
HIV治療薬; 逆転写酵素阻害薬
 Stavudine, Lamivudine(ゼフィックス®), Zidovudine(レトロビル®)
抗てんかん薬; Valproic acid(デパケンR®), Phenytoin(アレビアチン®)
Folate Antagonist; MTX
化学療法; Alkylating agents, Pyrimidine, Purine inhibitors
ST合剤
Biguanide; Metformin(メルビン®, グリコラン®, メデット®)

制酸剤もVit B12欠乏のリスク因子となる.
 Kaiser Permanente Northern California populationのCohortでは, PPIを年2回以上処方されている患者ではOR 1.65[1.58-1.73], H2阻害薬を年2回以上処方されている患者ではOR 1.25[1.17-1.34]でリスク上昇あり. 高用量ほどリスクも上昇する.
 このCohortにおける他のリスク因子はMetformin, チラーヂン, 喫煙, 飲酒, 萎縮性胃炎, 糖尿病であった. (JAMA. 2013;310(22):2435-2442. )

巨赤芽球性貧血の血液所見:
血液検査ではMCVが増加する貧血を呈する
MCV >=130flならばほぼ100%が巨赤芽球性貧血
 MCV 115-129fl 50%
 MCV 80-100fl <25%
 MCV <80fl 0% (混合性でない限り) (Am J Med 1994;96:239-46)

PLT減少(<150000)は12%, WBC減少(<4000)は9%で合併
LDHの異常高値も, (CK, ALT正常より血液由来と確認されれば)溶血性貧血, 巨赤芽球性貧血などの無効造血で認める.
 LDH >=3000U/Lならば溶血性よりは巨赤芽球性貧血 (Indian J Pathol Microbiol 2000;43:325-9)

好中球の過分葉
5分葉が3つ以上, 6分葉以上が1つ以上で判断
アルコール症患者での巨赤芽球性貧血の予測

Sn(%)
Sp(%)
LR(+)
LR(-)
MCV >100fl
66[49-79]
68[56-77]
2.0[1.4-3.0]
0.5[0.3-0.8]
MCV >110fl
27[15-43]
98[90-100]
11[2.5-46]
0.8[0.6-0.9]
大型卵形RBC
90[76-97]
68[56-77]
2.8[2.0-3.9]
0.1[0.1-0.4]
大型卵形RBC>3%
56[40-71]
96[89-99]
15[4.8-47]
0.5[0.3-0.7]
好中球過分葉
78[57-85]
95[87-98]
16[5.9-41]
0.2[0.1-0.4]
LDH >225IU/L
73[57-85]
45[34-57]
1.3[1.0-1.8]
0.6[0.4-1.0]
葉酸値<2.1 ng/mL
42[27-58]
76[65-85]
1.8[1.0-3.0]
0.8[0.6-1.0]


過分葉を伴う大球性貧血の原因 (West J Med 1974;121:179-84)
葉酸欠乏
44%
VitB12欠乏
2%
葉酸+鉄欠乏
13%
VitB12+鉄欠乏
2%
葉酸+VitB12欠乏
6%
腎不全
11%
葉酸+VitB12+鉄欠乏
2%
未測定
11%


不明
9%


ビタミンB12欠乏, 葉酸欠乏
巨赤芽球性貧血の原因であるが, これらの欠乏症の背景は,
ビタミンB12欠乏ならば内因子欠乏, 胃切後が最も多く,
葉酸欠乏ならばアルコール性, 栄養不良が主な原因となる.
Vit B12欠乏の原因
葉酸欠乏の原因
胃からの内因子欠乏
76%
アルコール症
87%
熱帯スプルー
9%
栄養不良
9%
腸管切除
7%
それ以外
4%
空腸憩室
2%


吸収不良
1%
Am J Med
1994;96:239-4
ベジタリアン
1%
不明
5%

Vit B12欠乏では, 回盲部病変にも注意すべきといえる
アルコールは葉酸吸収を低下させる
 アルコール依存患者では摂取不足も大きな要素
 葉酸は加熱にて半分に低下
 フェニトイン, フェノバルビタール, 経口避妊薬でも吸収低下
 MTX, ST合剤, サルファでは体内での利用障害が生じる
 空腸病変(クローン, リンパ腫, スプルー, 強皮症, DM, アミロイド)でも吸収障害あり

NEJMのReviewより, ビタミンB12欠乏の原因一覧 (N Engl J Med 2013;368:149-60.)
重度の吸収障害;
 悪性貧血(自己免疫性胃炎)
 胃全摘後
 Gastric bypass, bariatric surgery 
 空腸切除
 炎症性腸疾患, Tropical aprue
 Imerslund-Grasbeck syndrome 
中等症の吸収障害;
 Protein-bound vit B12 malabsorption 
 軽度の萎縮性胃炎
 メトフォルミン使用
 制酸剤使用
摂取不良
 (成人)ベジタリアン
 (乳児)母乳中のVit B12欠乏
 (小児)成人と同様
Nitrous oxide中毒
Nitrous oxide麻酔

ビタミンB12, 葉酸の血液検査
血液検査
 Vit B12は200-400pg/mlがCut-off
 葉酸は2-4ng/mLがCut-off
 しかしながら, 病院食を1回でも摂取すると正常化. また, 絶飲食患者では低下する.
 重要なのは血球内, 組織内の濃度であり, 血清濃度と解離することがある.

鉄欠乏性貧血の治療に伴い, 葉酸値も有意に上昇を示す.(Blood 1970;35:821-8)

葉酸, ビタミンB12欠乏のモデル (Am J Clin Nutr 1987;46:387-402)
葉酸
 
HoloTC II: Holotranscobalamin II, TC II %:Transcobalamin IIとCobalamin比, Holohap: Holohaptocorrin, TBBC %: Total B12 binding capacity of plasma with B12, Hap %: Total haptocorrinとB12比

ビタミンB12値と欠乏症に対する感度, 特異度
Vit B12 Level
Sn(%)
Sp(%)
< 100pg/mL
90%
< 200pg/mL
90-95%
60%
200-300pg/mL
5-10%
> 300pg/mL
<1%
(Arch Intern Med 1999;159:1289-98)

血中のビタミンB12と葉酸値は絶対的な指標とはならないため, ビタミンB12欠乏, 葉酸欠乏をしっかりと診断する為にはメチルマロン酸とホモシステインの測定が必要となる.

メチルマロン酸(Methylmalonic acid)とホモシステイン(Homocysteine)
両者の代謝にVit B12, 葉酸のどちらか, 双方が必要
 欠乏により血中濃度が上昇する ⇒ Markerとなり得る
 が, 国内ではMethylmalonic Acidの測定は不可能…
(Arch Intern Med 1999;159:1289-98)
代謝産物
Vit B12欠乏
葉酸欠乏
MMA上昇
98%
12%
Homocysteine上昇
96%
91%
MMA , Hcy
4%
2%
MMA, Hcy
1%
80%
MMA, Hcy
0.2%
7%
MMAとHomocysteine双方が上昇すればビタミンB12欠乏
Homocysteineのみ上昇し, MMAが正常ならば葉酸欠乏と判断できる.
ただし, 国内ではMMAは測定できないため, Homocysteine上昇のみしか評価できない.
 >> 葉酸かビタミンB12が欠乏している, という評価は可能.

491名のVit B12欠乏患者のHomocysteine, Methylmalonic acid 
(N Engl J Med 2013;368:149-60).
○Ht<35%,  ●Ht≥38%.
Methylmalonic acid; 
 >500nmol/Lは感度98%,
 >1000nmol/Lは感度86%

ビタミンB12欠乏検査のまとめ(N Engl J Med 2013;368:149-60.)


高齢者の10-20%がビタミンB12欠乏 (Am J Clin Nutr 2003;77:1241-7)
>65yrのランダム抽出された高齢患者1562名にてVit B12, 葉酸欠乏を評価
 Vit B12欠乏; Vit B12 <150pmol/Lもしくは, Vit B12 150-200pmol/L + MMA>0.35mcmol/L, tHcy >15.0mcmol/L 
 葉酸欠乏; Folate <5nmol/Lもしくは, Folate 5-7nmol/L + tHcy >15mcmol/L

Vit B12欠乏に当てはまるのは,
 65-74yrの男性で11%, 女性で9% 
 >=75yrの男性で24%, 女性で17%

葉酸欠乏に当てはまるのは,
 65-74yrの男性で10%, 女性で8%
 >=75yrの男性で20%, 女性で16%

ビタミンB12欠乏, 葉酸欠乏の症状 (Lancet Neurol 2006;5:949-60)
Vit B12欠乏患者の40%で神経障害を合併する
 Vit B12欠乏性神経障害の20%, 葉酸欠乏の25%が貧血(-)
 逆に巨赤芽球貧血患者の1/3で神経障害(-)
 末梢神経障害, 認知障害など様々な神経障害を呈する
神経障害
Vit B12欠乏
葉酸欠乏
正常
32%
35%
認知障害
26%
27%
情動障害
20%
56%
亜急性連合変性症
16%
0%
末梢神経障害
40%
18%
視神経萎縮
2%
0%

末梢神経障害〜中枢神経障害, 認知症, 精神疾患様々な症状をとり得る.

末梢神経障害は双方で認めるが機序は異なる
Vit B12欠乏による振動覚低下, 下肢より上行性に出現する.
 Vit B12は中枢, 末梢神経のミエリン合成に重要であり, 欠乏にて脱髄性の変化を来す.
葉酸欠乏患者での末梢神経障害はアルコールによるもの
舌の疼痛はVit B12欠乏で65%, 葉酸欠乏患者の33%で認める (Br Med J 1969;3:436-9)
Peak年齢は60-70yrであり, 大半が40-90yrで生じる

高齢者のビタミンB12欠乏は認知症に関連する (詳しくはこちら)
≥65歳の2741例のCohort study. (Am J Clin Nutr 2007;86:1384–91.)
 上記のうち1648例で血液検査と, MMSEを10年間フォロー.
 認知機能低下とVit B12, 葉酸の関連を評価.
 10年間で, tHcy, MMAが倍となった群では, よりMMSE低下速度が速い
 tHcy, MMAが倍 → Vit B12, 葉酸欠乏を示唆する.

Vit B12と認知機能を評価した2011年までのProspective cohortをまとめたSystematic review
 35 trials, N=14325例の評価.
 Vit B12欠乏の診断はVit B12値のみで判断したStudyが31 trials, MMA, HoloTCで判断したStudyが4 trials
 Vit B12のCutoffは110-251 pmol/L

認知症(-)患者群でのVit B12と認知症進行の関連
 6 trialsが上記を評価しており, 内2つがVit B12欠乏と認知障害進行に関連性を認め, 4つが平均5.1年間のフォローにて関連性無しとの結論.

認知障害の有無を問わない母集団での評価
 11 trials中, 4 trialsで認知障害への関連ありと評価.
 Vit B12値と認知障害進行への関連性は認めないが, HoloTC, MMA高値との関連性は認められた報告もあり.

全体的には, Vit B12値による欠乏の評価と認知障害進行には関連性は乏しいと判断される.
しかしながら, MMA, HoloTCによる欠乏の評価と認知障害進行への関連性は認められるという結果(4 trials) (British Journal of Nutrition (2012), 108, 1948–1961)

ビタミンB12欠乏と色素沈着
Vit B12欠乏患者では, 皮膚のHyperpigmentationを認めることがある
 貧血に先立って(1yr程度)色素沈着を生じることもあり, Vit B12欠乏の初発症状としてもあり得る.
 手足の皺, 関節の伸側で多いが, 顔面, 体幹に生じることもある.
 他には爪の縦方向に走る縞や, 歯肉の色素沈着, 白髪も認める.
 それらはVit B12補充にて6mo後には完全に消失 (EJD 2007;17:551-2)

Vit B12欠乏 + 色素沈着の成人患者(15), 小児患者(6名)
 成人の年齢は16-50yr, 小児では1-10 mo.
 Hgは2.9-14.3g/dL. 成人でHg>10g/dLであったのは4/15.
 平均Vit B12値は49pg/mL, ACTH負荷試験では副腎機能は正常.
 色素沈着は手足の末端、IP関節から手指末端までが多い. 爪は白色のままであることが多い.
Vit B12投与により全例が色素沈着改善
 乳児例では改善が早く, 3wk以内に全例改善. 成人例では2wk以内に目に見える変化があり, 6-12wkで改善する. (BMJ 1963;June 29:1713-5)


色素沈着の機序
 Vit B12欠乏はGlutathioneの低下を来す.
 Glutathioneの低下はtyrosinase上昇を来たし, tyrosinaseがHypermelanosisを引き起こす.
 また, Melaninの輸送が障害されるとの機序も報告されている.

ビタミンB12欠乏の症状のまとめ (N Engl J Med 2013;368:149-60.)

ビタミンB12欠乏の治療
悪性貧血, 胃切患者でもVit B12の吸収はある 
 内因子を必要としない吸収経路, 回腸からも吸収(摂取量の約1%程度)
(内因子を通しての吸収率は60%に達する)

Cobalamin 2mg/day POと1mg IV*を比較
 (RCT, N=38, 内28名が吸収不良あり)(Blood 1998;92:1191-1198)
 2mo, 4moでの血中Vit B12濃度は経口投与群で有意に高値
* 1mg IV 1,3,7,10,14,21,30,60,90D

Cobalamin 1mg/day POと1mg IVを比較
 (RCT, N=70, 内35名が吸収不良あり)(Clin Ther 2003;25:3124-34)
 両群で有意なVit B12上昇を認めたが, 両群間では比較していない
‡ 1mg IV 10日間 ⇒ 週1回 4wk ⇒ 月1回

日本の保険適応は1.5mg/dayまで

治療への反応
6hr後; 骨髄反応の開始
48hr後; 骨髄中巨赤芽球性変化消失, LDH低下, K低下
1wk; 網状赤血球増加のピーク
1-2wk; 末梢のWBC過分葉の消失
8wk; Hbの正常化
6mo; 神経学的異常の改善

治療が思ったように上手くゆかない場合 ⇒ 鉄欠乏の合併を考慮
治療開始時に鉄欠乏(-)でも起こり得る. 治療失敗の最も多い原因とされる
(自己免疫性胃炎や胃全摘では鉄の吸収も低下している!)

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