JAMA. 2014;311(15):1547-1555のReviewより
Fibromyalgia
OAに次いで頻度の高い “Rheumatic disorder”
診断クライテリアを満たすのは一般人口の2-8%にもなる.
慢性の全身性疼痛を認め, 倦怠感, 抑うつ症状を合併する.
1990年のクライテリアでは疼痛部位, 圧痛部位で診断するため, 女性の方が遥かに多く診断されていたが, 新しいクライテリアでは圧痛点は無くなったため, 男女比は1:2と他の慢性疼痛症と同等のレベルとなった.
どの年代でも発症し得る. 小児でも認める.
人種, 文化, 国で頻度は異なるが, 先進国で特別多い訳でもない.
Fibromyalgiaでは長期間の体全身の慢性痛を認める.
慢性の局所, 広範囲の疼痛は一般人口の30%で認める.
“疼痛が生じやすい体質” が特徴的で, Fibromyalgiaの患者では頭痛や生理痛, 顎関節症, 慢性倦怠感, IBS, 他の機能性胃腸障害, 間質性膀胱炎/painful bladder syndrome, 子宮内膜症, 他の局所性疼痛症候群(主に背部, 頸部)の病歴を認めることが多い.
中枢での疼痛の自覚, 末梢性疼痛の感受性の増幅がFibromyalgiaの原因と考えられている
遺伝性要素も関わる可能性がある
Fibromyalgiaの第一親等はFibromyalgiaや慢性疼痛の OR 8.5[2.8-26]とリスクとなる.
(環境因子の関連も大きい可能性)
双生児の調査では遺伝的要素が50%, 環境要因が50%.
環境要因ではストレス因子が発症のトリガーとなり得る
Fibromyalgiaや慢性疲労症候群はVirus感染(EBV, Lyme, Q fever, Hepatitis), 交通外傷, 戦争経験, 精神的ストレスで出現することがある.
他の慢性疼痛を来す疾患に合併することもある
変形性関節症, 関節リウマチ, Lupus等. それらリウマチ性疾患患者の10-30%が診断クライテリアを満たす.
診断クライテリア
ACR 1990 criteria: リサーチ目的のCriteriaで臨床的には使われない.
広範囲の疼痛(Axial skeleton, 上半身, 下半身, 左右の疼痛)と18箇所の圧痛点の内11箇所以上で陽性となる.
2011年 Fibromyalgia survey criteria
このCriteriaでは患者の自覚症状が含まれ, 疼痛の部位, 倦怠感の程度, 睡眠障害, 記憶障害, 頭痛, IBS, 気分障害の有無を評価する.
圧痛点の評価は必要なく, 実臨床で好まれる.
臨床では外傷や炎症では説明つかない多部位の疼痛でFibromyalgiaを疑う.
主に筋骨格系の疼痛が最も多い症状となる.
疼痛感受性が亢進しているため, どの部位の痛みも生じえる.
慢性頭痛, 咽頭痛, 内臓痛, 感覚過敏等も多い.
身体所見は特に異常ないことが多い. びまん性の圧痛は認める.
血圧計のカフでも痛みを訴えることがある.
血液検査も特に有用なものはない.
抗核抗体やリウマチ因子は其々の疾患を示唆する症状がある場合に限るべきで, Fibromyalgiaを疑う場合は調べる必要性は無い.
治療について
Fibromyalgiaはプライマリケアで診断, 治療すべき疾患.
他の疾患を疑う場合に専門医紹介となる.
先ず行うべきは患者教育.
疼痛の機序, 疾患について教育することでストレスを軽減.
睡眠や運動習慣も重要な指導となる.
これをやらずに薬剤療法に手を出しても十分な効果が得られないことが多い.
疼痛と併存する症状に合わせて薬剤を選択.
全体的にはTCAは効果的
抑うつや倦怠感 → SNRI
不安や不眠 → gabapentinoidの併用も考慮する.
オピオイドは避けるべき.
末梢性の疼痛要素があればNSAID, アセトアミノフェン