Thoracic outlet syndrome; 動脈(A), 静脈(V), 神経(N) TOSに分類
(J Vasc Surg 2007;46:601-4)
鎖骨下動脈, 静脈, 腕神経叢が前斜筋, 第一肋骨, 鎖骨などで圧排され, 上腕に不快感, うっ滞, 疼痛を生じる病態.
とくに圧排されるもの, するものでの定義は無し.
NTOSが最も多く, 90-98%を占め, ATOSが最も少なく, 1-5%程度.
ただし, 機能予後, 症状が最も悪いのはATOS. VTOSは1.5-3%前後であり, 圧倒的にNTOSが多い. (これは症状の出現頻度, 外来受診, 手術適応にも影響されている)
NTOSでは頸部外傷がTriggerとなることが多く, 既往が重要.
VTOSはPaget-Schrotter病が発見の切っ掛けになることもある.
ATOSは外傷や運動に関係なく, 突如発症する.
第一肋骨, Cervical ribなどのAnomalyにより圧排されることが原因となりやすいため, 頸部XPが良いスクリーニングとなる.
胸郭出口は4つの部分に分類
Pectoralis minor space (小胸筋腱と肋骨に挟まれた部位)
Costoclavicular space (鎖骨と第一肋骨の間)
Scalene triangle (第一肋骨, 前, 中斜角筋)
Sternocostovertebral space (胸骨-第一肋骨-脊柱に囲まれた部位)
Cervical Ribs(頸肋);C6からの遊離肋骨
人口の0.004-1.0%で認めるAnomaly, 女性が70%を占め, 50%が両側性
通常, 無症候性だが, 頸部外傷(むち打ち)によりNTOSを発症することがある
一部で鎖骨下動脈を圧排し, 閉塞や動脈瘤を形成し, ATOS発症へと繋がる.
頚肋意外にも, 胸郭出口には様々なValiantがある(斜角筋Anomalyなど)
ATOSは初期は無症候性
血栓形成すると症状(+). それまでは数年に1回USチェックを行い, 動脈形態評価が推奨される.
異常があれば手術治療の適応.
胸郭出口症候群の症状
ATOSの症状
手指の虚血, 間欠破行, 蒼白, 冷感, 痺れ, 疼痛といった虚血症状が主.
健側よりも血圧が20mmHg以上低くなることもある.
症状は手指に多く, 肩や頸部には稀.
動脈瘤や閉塞部からの血栓閉塞, 塞栓が原因.
VTOSの症状
上腕の腫脹や, チアノーゼ所見. 疼痛や痺れも認めるが, 上肢の腫脹を認めるのはVTOSのみであり, 特異的.
NTOSの症状
上肢の疼痛, 痺れ, 脱力. 頸部痛や後頭部痛も認める.
末梢の冷感やRaynaud現象もNTOSで認める. (阻血よりも, 交感神経の過活動によるため[C8,T1,腕神経叢の下位])
症状の頻度
症状
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50名中の頻度
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頸部痛
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88%
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僧帽筋痛
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92%
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鎖骨上の疼痛
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76%
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胸痛
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72%
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肩痛
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88%
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上腕痛
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88%
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後頸部痛
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76%
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知覚鈍麻;
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98%
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全5指全て
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58%
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第4,5指
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26%
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第1-3指
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14%
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所見: NTOS vs ATOS
NTOSとATOSは身体所見で判別可能
NTOSは斜角筋に圧痛を認め, 以下の誘発テストにより症状(+)
Neck rotation and head tilting; 頸部を健側に回旋, 外転させ, 患側に疼痛, 知覚鈍麻が出現する.
AER(Abducting the arms in external rotation); 肩関節を90度外転, 90度外旋させる. 60秒維持し, 症状の出現を評価する.
ULTL(Modified upper limb tension test of Elvey); 座位で, 補助無しで能動的に行う.
1) 両上腕を90度外転
2) 両手首を背屈
3) 頸部を外転. 両側行う.
1→3の運動は腕神経叢を徐々に伸展する. 肘周囲の疼痛, 指先の痺れがあれば陽性.
ULTLが陽性→ 3箇所の内, どれかで圧迫(+) 胸郭出口, 小胸筋, 頸椎のどれか.
ATOSの診断
ATOSは安静時の橈骨動脈拍動減弱がCommon.
上腕の外転に伴う脈の減弱は有用でないことが多い.
ULTTや頸部の進展, 回旋での症状誘発は無し.
症状は前腕, 手に出現するのが一般的であり, 症状や病歴のみで診断がつくことも少なくない.
ATOSに対するMRA検査
3 studiesのMetaでは, MRAは鎖骨下動脈狭窄に対するSn 52.6% Sp 100%, LR(+) ∞ LR(-) 0.47
Evidence levelの高いStudyが無く, ATOSのReference standardも様々であるため, 真の有用性は未だはっきりしない.
MRIにより周辺軟部組織の評価も可能のため, 考慮しても良い検査.
TOSに対するDoppler Adson's Test
TOSに対するDoppler Adson’s testは, 手術治療による症状改善を予測する因子になり得る.
TOS患者16名のRetrospective study (World J Surg 2006;30:291-2)
Adson’s testをしながら, 鎖骨下動脈にDoppler USを施行.
陽性; Peak systolic velocityが2倍 or 血流が消失 or 低下.
16名中8名がDoppler Adson’s test陽性.
その内87.5%(7名)が手術治療により完全に症状改善. 残り1名は軽度改善を示した.
陰性の8名中, 手術治療に反応を示したのは50%(4名)のみ. 残り2名は部分的に改善, 2名は反応無し.
他の身体所見 (Circulation 2002;106:1874-80)
Adson’s test
上肢は進展位, 頸部を伸展位, 同側に回旋させる. 深吸気させて, 橈骨動脈を触れる.
脈が弱ければ, 鎖骨下Aの圧迫を示唆.
陽性率は31%[22-100]であり, 頸部を体側に回旋させた方が陽性率が上昇するとの報告もある. 健常人でも9-53%でAdson’s test陽性.
Wright’s maneuver
肩を外転位にし, 上腕を外旋させ, 症状の誘発, 橈骨動脈を触れる.
TOS患者での検査感度.
検査
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感度
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ULTT
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98%
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90’ Abduction in external rotation
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94-100%
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斜角筋圧痛
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94%
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斜角筋圧迫にて放散する症状
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92%
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反対側への頸部回旋
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90%
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反対側への頸部屈曲
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90%
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触覚の異常
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68%
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無症候の健常人53名での各検査の偽陽性率
単一ならば偽陽性も多いが, 組み合わせで偽陽性率は低下
(Acad Emerg Med 1998;5:337-42)
検査
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脈の減弱
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疼痛
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感覚鈍麻
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Adson’s test
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11%
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0%
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11%
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Costoclavicular maneuver
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11%
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0%
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15%
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Elevated arm stress test
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62%
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21%
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36%
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Supraclavicular pressure
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21%
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2%
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15%
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組み合わせ; 上記の2つ
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6%
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2%
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21%
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上記の3つ
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4%
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0%
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4%
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上記4つすべて
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0%
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0%
|
0%
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CCM; 肩関節を下後方に牽引し, 30秒保持し症状を見る.
EAST; 両側上肢を挙上し, 3分間手を開いたり, 握ったりする.
SCP; 両側の斜角筋を, 第一肋骨の付近で, 母指で30秒圧迫する.