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2014年4月10日木曜日

真性多血症と本態性血小板増多症

真性多血症 (Polycythemia vera: PV)と本態性血小板増多症 (Essential thrombocythemia: ET)
Am. J. Hematol. 87:285-293, 2012.

PVとETは其々RBC, PLTが増加する骨髄増殖性疾患の1つ.
WBC上昇, 脾腫, 血栓症, 掻痒感(特に入浴後)を伴い, AMLや骨髄線維症へ進展するリスクが少なからずある.

骨髄悪性腫瘍の分類のうち, 骨髄増殖性腫瘍(MPN)に分類される.
MPNは古典的MPNと非古典的MPNに分類される. 
古典的MPNにはCML, PV, ET, 骨髄線維症(MF)が含まれ, CMLはBCR-ABL1陽性となる. BCR-ABL1陰性MPNに,  PV, ET, 骨髄線維症が含まれる.

PV, ET, MFは遺伝的要因の関連性が示唆されているBlood. 2008;112:2199-2204
 スウェーデンのNation-wide cohortの解析
 第一親等の病歴(縦軸)と各MPNのRR

 CML, AML, MDSに対してはリスクとならない

PVとET, MFの診断Criteria(WHO) (Am. J. Hematol. 87:285-293, 2012.)
PVはHgb高値, JAK2V617FもしくはJAK2 exon12変異があることが重要であり,
骨髄所見, Epo値, Endogenous Erythroid Colonyが補助となる.
 診断には2 Major + 1 MinorもしくはHb高値 + 2 Minorで診断となる.

PVに対するJAK2V617Fは感度97%, 特異度100%であり, PVの診断には非常に有用な検査となる. (他のHt上昇する疾患との鑑別において)
 Epoは85%で低値となる. 骨髄検査はMajorを満たす群では必須ではない.

ET診断には4項目全て満たすことが必要.
(ET診断には他のMPNの除外が必要であり, MPNを考慮したがPVもCMLもPMFも満たさず, 血小板系統の増加が認められればETと診断される)

Polycythemia vera
PVの好発年齢は60歳台. <50歳での発症はPVの1/3
 臨床経過は3つに分類される;
  ① 検査にて偶発的に発見 (最も多い)
  ② 血栓症で発見 (~30%, 内12%が重度の血栓症)
  ③ 疾患による症状にて発見

血液検査は全血球が上昇していることが多く, 脾腫はPVの30-40%で認められ, 特に全血球の上昇パターン例で多い.
(Blood. 2012;120(2):275-284)

赤血球上昇を来す病態 (Hematology 2009; 629-635)
PVを考慮した場合, 先ず二次性のRBC上昇をチェック.
ただし, 全血球が上昇している場合は先ずPVをチェックする.
 喫煙歴, 睡眠時無呼吸, 肺疾患, 心疾患, 肝臓, 腎臓腫瘍.
 EPO値はPVでは低下し, 二次性では上昇する.

JAK2遺伝子変異 (Am. J. Hematol. 87:285-293, 2012.)
 PVではほぼ全例でJAK2遺伝子異常を認める.
 exon14 (JAK2V617F)が96%, exon12が3%.
 一方で, ETでは55%, 骨髄線維症では65%の陽性率.
 また, ETや骨髄線維症ではexon12の変異は稀.

MPL(myeloproliferative leukemia virus oncogene; 1p34)変異はETの4%, 骨髄線維症の8%で認められるが, PVでは稀.

日本国内のMPNの解析では,
 JAK2変異はPVで98.5%(そのうちexon 12が4.5%), ETで56.3%, MFで47.8%の陽性率.

PV, ETの血栓症リスク (Am. J. Hematol. 87:285-293, 2012.)

 PV, ETにおいて予後やQOLに関わるものは血栓症.
 これらの病態は血栓症のリスクが高く, リスクに応じた治療が必要となる.

ET891例の解析における血栓症リスク: (Blood. 2011;117(22): 5857-5859)


血栓症(+)のPV, ET群(235/259例)における, 血栓症再発に関連するリスク因子の評価(Retrospective) (Haematologica 2008;93:372-380)

再発を認めたのは33.6%, 7.6% pt-y.

血栓症のリスクは動脈血栓, 静脈血栓で異なるが,
60歳以上, 男性例, 血栓症の既往, JAK2陽性等が挙げられる.


血栓症のリスク分類と治療の推奨:

リスクに応じた治療; (Am. J. Hematol. 87:285-293, 2012.)

 前述の通り, PV, ETは生命予後は悪くないが, 血栓症や血管症状(頭痛, めまいなど)は20%以上で認める為, 血栓症リスクに応じた治療が必要となる.
 
Low-risk PV, ETで著明なPLT上昇が無い患者群への治療
 アスピリンは全PV症例と, JAK2V617F陽性Low-risk ET患者と, 心血管リスク(+)群への投与が推奨.
 瀉血療法は全PV患者へ推奨され, 目標Ht値は<55%, もしくは<48%.
 妊娠可能女性や妊婦でも同様の治療方針をとるが, ヘパリンやPLT低下させる薬剤(Hydroxyurea)は避ける.
 Hydroxyureaは症状がとれれば, PLT 400k/µLを達成する必要は無い.

Low-risk PV, ETで著明なPLT上昇がある, もしくは出血リスクのある患者群への治療
 PV, ETで出血傾向を示すのは, 様々な因子が関連する.
 1つはvWF multimerの低下が関連しているとされる.
 上記理由より, この患者群へのアスピリンの使用は注意が必要.
 特にPLT>1000k/µLの患者群へアスピリンを使用することで, 後天性vWF症候群が生じ, 出血リスクが上昇する可能性がある.
 このような患者群では, 先ず凝固因子をチェックし, 活性が<30%ならばアスピリンを控える方が良いと考えられる.

High-risk PV, ETの治療
 Alkylating Therapy (Hydroxyurea, pipobroman)はAMLへの転化率を低下させる
 また, 血球正常化, 瀉血の必要性の減少効果も認める.
 IFN治療はRBC, PLT増加を抑制し得る (3MU SC 3回/wk).
 また, 脾腫の改善効果や, 掻痒感の改善効果が期待できる治療.

 peg-INF-α ~90µg SC/wkの投与にて, 寛解率80%を見込め, さらにJAK2V617Fの低下が認められた(CR 5-10%).

PV治療のフローチャート(Intern Emerg Med (2007) 2:13–18)

瀉血療法の目標は? (N Engl J Med 2013;368:22-33.)
CYTO-PV trial; JAK-2陽性のPV患者365名のRCT.
瀉血療法, Hydroxyureaにて治療.
 治療目標Ht <45%群 vs 45-50%群に割り付け, 心血管イベント, 死亡, 血栓症リスクを比較.

治療は抗血小板薬(84.4%), 瀉血(68%), Hydroxyurea(52.6%), 降圧薬(48.2%)

アウトカム;(31mフォロー)

Outcome
<45%
45-50%
HR
心血管イベント
4.4%
10.9%
2.69[1.19-6.12]
全死亡
1.6%
3.3%
2.15[0.54-8.62]
心血管死亡
0
2.2%
NA
MI死亡
0
0.5%
NA
Stroke死亡
0
1.1%
NA
肺塞栓死亡
0
0.5%
NA
Ht<45%を目標とした方が心血管イベントリスクは軽減. 死亡リスクは有意差無し.

Outcome
<45%
45-50%
HR
非致死的MI
1.6%
0
NA
非致死的Stroke
0
2.2%
NA
非致死的動脈血栓症
0
1.6%
NA
非致死的DVT
0.5%
2.2%
4.11[0.46-36.74]
非致死的PE
0
0.5%
NA
TIA
0.5%
2.2%
4.24[0.47-37.97]
血栓性静脈炎
2.2%
1.1%
0.51[0.09-2.79]
出血
1.1%
2.7%
2.53[0.49-13.06]
MI, Stroke, DVT, PE, 塞栓症どれも個別には有意差ないが, まとめると若干の有意差を認め, Ht<45%群の方が 治療目標として優れていると判断される
特に心血管イベントリスクが高い患者群ではHt<45%を目標とすべきと言える.

PVの治療: 状況に応じた治療 (Blood. 2012;120(2):275-284)
内臓血管 血栓症(Splanchnic vein thrombosis)
 SVTがある場合, 脾機能亢進や出血によりPVがMaskされている可能性ありSVTの治療として, ヘパリン, ワーファリンが必要となる.
 また, High-risk群としてHydroxyureaを使用する(妊婦には注意)

外科手術患者
 PV, ET患者の8%が周術期に致命的な血栓症を来し得る.
 待機的手術の場合, 術前に可能な限り正常な血球に近づける.
 (Hydroxyureaを使用, もしくはRBC高値だけならば瀉血)

妊婦の場合
 PVでは60台発症が主であり, 妊娠には影響しないことが多い.
 ETは若年が多いため, 妊娠可能女性にあり得る.
 HydroxyureaやCytotoxic agentは避けるべき.
 瀉血にてHt <45%を維持しつつ, 出産後6wkはLMWHを投与.
 Major thrombosisや重度の妊娠合併症がある場合, 妊娠中もLMWHを投与.
 PLT>1500k/µLや重度の出血がある場合はINFの投与を考慮する.

掻痒感への対応
 抗ヒスタミンは効果乏しい. 決まった治療は無い.

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