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2014年4月10日木曜日

肺塞栓症に対する線溶療法について

肺塞栓症に対する線溶療法の適応アルゴリズム
(Am J Emerg Med 2009;27:84-95)

PEによる心停止患者
 10-20%のPE患者は心停止となる, 死亡率は66-95%
 Alteplase 50mg IV bolusが推奨
 心拍再開なければ 15min後に再度 IV bolusを

Massive PE; sBP<90で定義
 PEの4-5%を占め, 死亡率は22-53%
 線溶療法の禁忌が無ければ,  Alteplase 10mg IV bolus, その後90mgを2hrで (Level 1B)
 改善認めない場合は血栓除去術が必要となる

 不安定なPE患者(sBP<90)において, 線溶療法 vs 抗凝固療法;
  死亡, 再発率; 9.4% vs 19% OR 0.45[0.22-0.92], (NNT 10) (Circulation 2004;110:744-749)
  死亡率; 6.2% vs 12.7% OR 0.47[0.20-1.10] (Chest 2009;135:Issue 5, May)

Submassive PE; sBP>90, RV dysfunction(+)
 PE全体の40-50%を占める
 RV function正常と比較して, 死亡率 9.3% vs 0.4%
 BNP <50pg/mLは予後良好を示唆
 Trop(+)はRV dysfunctionと相関性が認められ, 陰性ならば, RV dysfunctionは90%で正常を示す

 線溶療法の禁忌が無ければ,  Alteplase 10mg IV bolus, その後90mgを2hrで投与

MAPPET studyのSub解析にて,
 線溶療法は死亡率, PE再発率を有意に低下させるが, 脳出血, 出血性副作用も増加 (Circulation 1997;96:882-8)
 PE with RV dysfunction 256名のRCTでは, 死亡率は有意差なし(3.4% vs 2.2%)であるが,積極的治療の必要性はAlteplaseで有意に低下する(10.2% vs 24.6%) (NEJM 2002;347:1143-50)

Thrombolytic Therapy Recommendations
 
From the 2008 ACCP Evidence-based Guidelines
(Chest 2009;135:Issue 5, May)
全てのPEは早期にRiskを評価する(Grade 1C)
 RV dysfunction, BP, BNP, Troponinなど
Massive PE(sBP<90, 血行動態不安定)ならば, 線溶療法の禁忌が無い限り, 線溶療法が推奨される(Grade 1B)
sBP>90のHigh-Risk PE患者では, 出血Riskが低ければ線溶療法が推奨される(Grade 2B)
線溶療法の適応はPEの重症度, 予後, 出血リスクを総合的に判断
線溶療法を行う際は, 末梢ルートより行うべきであり, 肺動脈カテーテルを留置する必要性は無し(Grade 1B)
Massive PEで線溶療法が施行できない患者(出血Risk, 施設の都合)では, カテーテル治療による血栓除去が推奨される(Grade 2C)

Intermediate risk群へのt-PA (N Engl J Med 2014;370:1402-11.)
PEITHO trial: 血圧正常のIntermediate riskのPE患者1006例を対象としたDB-RCT.
 患者は≥18yの急性PE患者(onset~15d以内). エコー, CTで右室不全(+), Trop上昇を認める群.
 Tenecteplase + ヘパリン vs Placebo + ヘパリン群に割り付け, 死亡リスク, 血行動態の変化を比較.
 Tenecteplaseは体重に応じて30-50mgを5-10秒でIV.

死亡リスクは両者で有意差無し.
 t-PA投与群の方が血行動態不良となるリスクは低い
 頭蓋内, 頭蓋外出血リスクは上昇する.

Sub解析では75歳以上, 以下ではPrimary outcomeは変わらないが, 出血リスクは75歳以上の群でのリスク上昇が顕著となる.

PEに対するt-PAのMeta-analysis
JAMA. 2014;311(23):2414-2421
PEに対する線溶療法 vs 抗凝固療法を比較した16 RCTs, N=2115のMeta-analysis
210(9.93%)がLow-risk PE, 1499(70.87%)がIntermediate-risk, 31(1.47%)がHigh-risk PE.
アウトカム

線溶療法
抗凝固群
OR
NNT(NNH)
全死亡リスク
2.17%
3.89%
0.53[0.32-0.88]
59
Major bleeding(MB)
9.24%
3.42%
2.73[1.91-3.91]
18
頭蓋内出血
1.46%
0.19%
4.63[1.78-12.04]
78
PE再発
1.17%
3.04%
0.40[0.22-0.74]
54
>65yでの全死亡
2.08%
3.65%
0.55[0.29-1.05]
64
>65yでのMB
12.93%
4.10%
3.10[2.10-4.56]
11
≤65yでの全死亡
2.32%
4.29%

51
≤65yでのMB
2.84%
2.27%
1.25[0.50-3.14]
176, p=0.89
Intermediate risk群の全死亡
1.39%
2.92%
0.48[0.25-0.92]
65
Intermediate risk群のMB
7.74%
2.25%
3.19[2.07-4.92]
18
PEに対するt-PAは死亡リスクを減少させ得る. そのNNTは59.
またPE再発リスクも低下させる.
一方で頭蓋内出血 NNHは78, Major bleeding NNHは18
特に>65yの高齢者群では死亡リスクを改善させず, Major bleedingリスクのみ上昇させる.
≤65yの群ではMajor bleedingリスクは上昇せず, 死亡リスクを低下させる.

Low-Dose t-PA  (Chest 2010;137:Issue 2.Feb.)
血行動態不安定なPE, Massive PE患者118名を, 
 t-PA 50mg/2hr群(65名), 100mg/hr(53名)に割り付け, 予後, 出血Riskを比較(RCT, Open-label)
Outcome; エコー所見, V/Q Scanなどで評価
左: @24h, 右@14hでの評価.
Outcome
100mg
50mg
P
100mg
50mg
P
著明な改善
62%
60%
0.297
60%
60%
0.241
やや改善
21%
24%

29%
29%

不変
13%
5%

6%
9%

増悪
4%
11%

4%
2%

改善全体
83.3%
83.6%
0.967
89.6%
89.1%
0.936
著明な改善; 閉塞が>75%改善

やや改善; 閉塞が25-75%改善

副作用

副作用
100mg
50mg
P
死亡
6%
2%
0.472
出血全体
32%
17%
0.054
 Major bleeding
10%
3%
0.288
PE再発
4%
2%
0.858
50mg/2hrのLow doseでも効果は変わらない. 
出血リスクは有意差はないものの, 100mg/2hrと比較して減少する傾向にあり.
特に日本人のような小柄な場合は,  50mgとした方が無難かもしれない.

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まとめると, PEに対する線溶療法は,
CPA症例, 低血圧合併の重症例では推奨される.
 CPAでは50mg(約2400万単位)をIVで使用.
 重症例では合計100mgを10mg IVし, その後2時間で90mgをDIVする方法.
 (おおまかに, 600万U + 2400万U x 2V使用し, 600万U IV後に4800万Uを2hdeDIV)

ただし, 50mgを2hで投与する方法も同様に効果的ある可能性があり, そちらの方が良いかもしれない. その場合は2400万Uを2hでDIVとなる.

(CPAならば2400万UをIV, 重症ならば2hでDIV, とするととても覚えやすい♪)

中等症(血圧正常, 右心障害+群)PEに対するt-PAについてはControversial.
 死亡リスクは変わらないが, 血行動態不安定リスクは下がる.
 当然出血リスクは増える.
 特に75歳高齢者ではリスクが高まるため, 注意した方が良いかもしれない.
 使うとしてもLow-doseで十分であろうと考えられる.
 
t-PAの禁忌
Massive PE, 絶対禁忌
Submassive PE, 絶対禁忌
急性体内出血
頭蓋内腫瘍, てんかんの既往
再発性頭蓋内出血
2Mo以内の脳梗塞
Massive PE, 相対禁忌
1Mo以内の頭部外科手術
頭蓋内腫瘍, てんかんの既往
10D以内の外科手術
2Mo以内の脳梗塞
10D以内の圧迫止血困難な血管穿刺
1Mo以内の頭部外科手術
15D以内の外傷歴
10D以内の外科手術
コントロール困難な高血圧(sBP>180, dBP>110)
10D以内の圧迫止血困難な血管穿刺
PLT <100,000で凝固異常あり
15D以内の外傷歴
肝障害、腎障害
コントロール困難な高血圧(sBP>180, dBP>110)
10D以内のGI bleeding
PLT <100,000で凝固異常あり
妊娠
肝障害、腎障害
Submassive PE, 相対禁忌
10D以内のGI bleeding
年齢 >75yr
妊娠



補足: アルテプラーゼ製剤
アクチバシン, グルトパ注
 600万 IU (10.34mg) 製剤, 53512円.
 1200万 IU (20.69mg) 製剤, 112376円.
 2400万 IU (41.38mg) 製剤, 222007円の3つ.
肺塞栓による心停止例では, 2400万 IUをIV
 つまり15分毎に22万円が吹っ飛ぶ.
Massive, sub-massive PEでは
 600万 IUをIV, その後2400万 IU x 2 vialを2hrで投与という計算. 計 50万円也.
ちなみに脳梗塞では0.6mg/kg = 34.8万 IU/kg
 10%を1-2分でIV, 90%を1hrでDIV.

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