(Allergy 2007;62:1349-58)
Syndrome
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遺伝子
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初発年齢
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周期性発熱
/発熱期間 |
炎症反応
発熱期/寛解期 |
皮疹
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他の症状
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治療
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PFAPA
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不明
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0-14yr
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あり/4-5d
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高値/正常
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稀, 様々
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咽頭炎,アフタ潰瘍
頸部リンパ節腫脹 |
ステロイド
Cimetidine 扁桃切除 |
HIDS
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MVK/ 常・劣
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0.5-3yr
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時々/4-6d
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高値/正常
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丘疹
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腹痛, 関節痛
頸部リンパ節腫脹 |
コルヒチン
IVIG, 免疫抑制 |
Cyclic
Neutropenia |
孤発性, ELA-2/
常・優 |
0-5yr
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あり/3-5d
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高値/正常
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蜂窩織炎
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口腔内潰瘍, 歯肉炎,
歯周炎, 細菌感染 |
G-CSF
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FMF
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MEFV/ 常・劣
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1-20yr
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無し/1-3d
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高値/中等度
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丹毒性
紅斑 |
腹痛, 関節痛, 胸膜炎,
アミロイドーシス |
コルヒチン
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TRAPS
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TNFr1A/ 常・優
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0-53yr
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無し/d-wk
|
高値/高値
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移動性
紅斑 |
筋肉痛, 眼周囲浮腫,
結膜炎, 腹痛, 関節炎 胸膜炎, アミロイドーシス |
ステロイド
Etanercept |
FCAS
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CIAS1/ 常・優
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Any
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寒冷誘発
/12hr |
高値/正常
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蕁麻疹
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関節炎, 結膜炎
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寒冷予防
抗炎症 |
MWS
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CIAS1/ 常・優
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乳児期
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無し/様々
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高値/正常
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蕁麻疹
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関節炎, 筋肉痛, 腹痛
アフタ潰瘍, 難聴, アミロイドーシス |
抗炎症
Anakinra |
MOMID/
CINCA |
CIAS1/ 常・優
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新生児期
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無し/持続
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高値/高値
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蕁麻疹
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慢性髄膜炎, CNS障害
難聴, 失明, Eo増多 変形性関節症, 凝固障害 |
Anakinra
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PFAPA; Periodic fever with aphthous stomatitis, pharyngitis, and cervical adenopathy, HIDS; Hyper-IgD syndrome
FMF; Familial Mediterranean fever, TRAPS; Tumor necrosis factor receptor-associated periodic syndrome,
FCAS; Familial cold autoinflammatory syndrome, MWS Muckel-Wells syndrome,
NOMID/CINCA; neonatal-onset multisystem inflammatory disease/chronic infantile neutologic cutaneous and articular syndrome
FMF; Familial Mediterranean fever, TRAPS; Tumor necrosis factor receptor-associated periodic syndrome,
FCAS; Familial cold autoinflammatory syndrome, MWS Muckel-Wells syndrome,
NOMID/CINCA; neonatal-onset multisystem inflammatory disease/chronic infantile neutologic cutaneous and articular syndrome
周期的な発熱を繰り返す, 主に小児に生じる疾患.
遺伝子異常による炎症性サイトカインの増加が原因の1つ.
PFAPA, FMF, TRAPSは成人例での発症もあり.
周期性発熱のアプローチ
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History
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発熱のパターン
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Regular cycle?, 発熱期間, Interval
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随伴症状
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皮疹, 関節痛, 浮腫, 痛み, 成長障害
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家族歴, 人種
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同様のエピソードの有無
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身体所見
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寛解期間は正常か?
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発熱期間の身体所見
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皮疹, 口腔内潰瘍, 咽頭炎, 頸部リンパ節腫脹, 肝脾腫
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検査所見
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CBC, ESR, CRP
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発熱期, 寛解期での変化
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IgG, IgM, IgA, IgD
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IgDが上昇していれば, 尿中Mevalonic acidをCheck, MVK geneをCheck
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C3, C4, CH50
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低値ならば自己免疫性疾患を精査
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ステロイドtrial
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PFAPAが疑わしい場合, 2mg/kg Prednisoneの経口投与をTry
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数時間で解熱 ⇒ PFAPAが疑わしい
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解熱なし ⇒ 他の疾患を考慮
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経口ステロイドTrialに反応しなかった患者に対する追加検査
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A
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Regular fever cycles, アフタ潰瘍 or 歯肉炎, 下痢, 細菌感染 ⇒ CBCを週1回Check ⇒ Cyclic neutropeniaを評価
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B
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Regular fever cycles, 口腔内病変(-), 丘疹, 関節痛, 脾腫, 腹部症状 ⇒ MVK遺伝子をCheck ⇒ HIDSをCheck
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C
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Irregular fever cycles, 1-3dの発熱, 腹痛, 丹毒性紅斑, 関節痛 ⇒ MEFV遺伝子をCheck ⇒ FMFをCheck
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D
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Irregular fever cycles, 発熱長期間, 筋肉痛, 移動性紅斑, 眼周囲浮腫, 持続的な炎症反応亢進
⇒ TNFr1A遺伝子検査 ⇒ TRAPSをCheck |
E
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冷感に起因する発熱エピソード ⇒ CIAS1をCheck ⇒ FCASをCheck
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F
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Irregular fevers, 蕁麻疹, 関節炎, 腹痛, 乳児期の発症, 難聴 ⇒ CIAS1をCheck ⇒ MWSをCheck
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G
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持続性の発熱, 蕁麻疹. 乳児期の発症, 持続性の炎症反応亢進, 神経障害 ⇒ CIAS1をCheck ⇒ NOMID/CINCA
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H
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腹部疝痛, 下痢, 成長障害, 関節痛, 肛門周囲病変 ⇒ 内視鏡検査でCrohn病をCheck
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I
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発熱時の一過性の丘疹, 関節痛, 筋肉痛, 心膜炎, 心筋炎, 胸膜炎, リンパ節腫大, 肝脾腫, 虹彩炎
⇒ Juvenile idiopathic arthritisを考慮. |
発熱パターンからの鑑別 (N Engl J Med 2001;345:1748-1757)
FMFは頻回の発作で, 各発作あたり3日以内の発熱が典型的.
Hyper-IgD syndromeは1週間前後続く発熱となる.
TRAPSは年に1-2回と少ないが, 1回あたりの発熱が長期間となるのが特徴的
Hyper-IgD syndromeは1週間前後続く発熱となる.
TRAPSは年に1-2回と少ないが, 1回あたりの発熱が長期間となるのが特徴的
PFAPA: Periodic fever with aphthous stomatitis
突然発症の発熱(38.5-41度)が4-5d持続. 3-5wk周期で繰り返す
小児期の発症が多く, 平均発症年齢は2.8yr[6wk-14yr]
発熱期には炎症反応が上昇するが, それ以外は正常.
咽頭炎, 頭頸部リンパ節腫脹の合併頻度が高い
抗生剤には反応せず, ステロイドが著効する
PFAPAに随伴する症状頻度
症状
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頻度
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症状
|
頻度
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咽頭炎
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78%
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嘔気・嘔吐
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21%
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頸部リンパ節腫脹
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69%
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下痢
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8%
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アフタ性潰瘍
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51%
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皮疹
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6%
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腹痛
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35%
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関節痛
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4%
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Hyper-IgD Syndrome
Mevalonate kinase(MVK)遺伝子 @12q24の異常による, 小児期に生じる周期性の発熱疾患
西欧の白人に多い傾向があり, 報告例の60%がフランス, オーストリア.
PAFPAと重なる部分が多く, 発症初期は鑑別できないことも多いが, 経過を追うと徐々に異なる病態となる.
発熱は4-6d持続し, 3-6wk周期で繰り返す. Intervalはバラバラであることが多い.
外傷やストレス, ワクチンがTriggerとなって, 発熱をきたすこともある
随伴症状
頸部リンパ節腫脹が最も多い. 関節痛は80%で認める.
PAFPAと異なり, 咽頭炎やアフタ性潰瘍は認めない
腹痛も認められ, しばしば虫垂炎と誤診されることも.
下痢(水様, 血性)が82%, 嘔吐 56%, 丘疹 82%
IgDは>100U/mLとなるが, 発症早期では正常のこともある
発症後2-3.5yrでIgD上昇し, 異常値となることもある
発熱期では炎症反応高値となるが, 寛解期では正常.
FMFと異なり, アミロイドーシスを来たすことは稀.
Hyper-IgD syndrome 50例の解析 (Medicine 1994;73:133-44)
男性28名, 女性22名. 家族歴でHyper IgD syndrome(+)は20名.
初発年齢は平均0.5yrだが, 生後1wk〜53yrまで幅広い.
68%が1歳以下で発症している.
発熱発作は3-7日間持続することが多い. これも患者によりバラツキが大きい.
発熱発作の回数も2週間毎〜年2回と様々.
最も多いのは1-2ヶ月に1回の頻度. 無熱期間は一定ではない.
発熱はSpike Feverであり, 直腸温で38.5-41.2度と高熱になる.
76%で40度以上となる. 発作中は高熱が持続し, 徐々に平熱に解熱する.
発熱以外の症状;
下痢
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41/50
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腹痛
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36/50
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リンパ節腫大
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47/50
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脾腫
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24/50
|
関節痛
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40/50
|
嘔吐
|
28/50
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皮膚所見
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41/50
|
Serositis
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350
|
悪寒
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38/50
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頭痛
|
26/50
|
関節炎
|
34/50
|
|
|
腹部消化管症状が最も多い症状となる
急性腹症様の症状を示し, しばしば虫垂切除される例もある.
腹膜リンパ節腫脹を認める例, イレウスを合併する例も報告されている.
関節症状, 皮膚所見一覧
膝関節
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71%
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Erythematous macules
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63%
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足関節
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65%
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Erythematous papules
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41%
|
手関節
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41%
|
Urticaria
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24%
|
肘関節
|
32%
|
Erythematous nodules
|
22%
|
MCP
|
24%
|
Morbilliformic rash
|
19%
|
PIP
|
15%
|
Non-defined exanthema
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19%
|
MTP
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12%
|
Annular erythema
|
15%
|
DIP
|
9%
|
Purpura
|
12%
|
肩関節
|
6%
|
Petechia
|
10%
|
股関節
|
6%
|
|
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CVC
|
3%
|
|
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CVC: cervico vertebral column
多発関節痛, 関節炎を呈する. 左右対称性に生じることが多い.
長期的な間欠性の発熱を来すが, アミロイドーシスを併発した例は無し.
検査所見
ESRの平均値は90mm/h[20-150]と発熱期間は上昇する.
WBCも18700[4600-42000]と高値となる.
IgDの上昇は診断に必須だが, 発症早期は上昇しないこともある.
50名ではIgDは0-5300U/mLまで様々.
IgD値と発熱頻度, 重症度の相関性は無し.
Cyclic Neutropenia
<5yrの小児に発症する稀な遺伝子疾患
Elastase遺伝子(ELA2) @19p13.3の異常
周期的な骨髄Myelocyteの成熟障害により, 一過性にNeu <200/mcLとなる.
発熱は21日周期で3-5日間持続することが多い.
好中球減少エピソード後に発熱を認めるパターン.
歯肉炎, 頸部リンパ節腫脹, 口腔内潰瘍, 細菌感染症の合併が多い
TRAPS: TNF receptor-associated periodic syndrome
(N Engl J Med 2001;345:1748-1757)
TRAPSは2wk-53yrまで様々な年齢で発症する周期性発熱
別名Hibernian fever. 常染色体優性遺伝
日本国内では30例程度の報告例のみだが, 60台発症もあり得る.
TNFRSF1A @12pの異常により, 可溶性TNF-Rが減少し, TNF活性が上昇する.
ただし, 上記遺伝子異常は一般人口の1%で認められるため, それ以外の要素も関連している可能性が高い.
発熱, 寛解期は不定で発熱はd-wk(平均21d), 寛解期はwk-yrの単位.
局所的な筋痛が遊走する経過が特徴的で80%で認められる.
腹痛と消化器症状も多い症状.
他には限局性の胸膜炎が半数. 眼瞼周囲の浮腫, 結膜炎, 関節痛, 精巣痛, 頭痛.
関節炎は稀
日本国内のTRAPS報告例 23例のまとめ (Mod Rheumatol (2013) 23:210–217)
特徴
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女性
|
52.2%
|
発症年齢
|
2m-29y
|
TNFRSF1A変異
|
78.3%
|
発熱
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100%
|
腹痛
|
50.0%
|
筋肉痛
|
54.5%
|
紅斑
|
84.6%
|
結膜炎, 眼周囲浮腫
|
20.0%
|
胸痛(胸膜炎)
|
20.0%
|
関節痛
|
73.3%
|
頭痛
|
10.0%
|
ステロイドへの反応
|
66.7%
|
周期性発熱の家族歴
|
95.7%
|
紅斑, 関節痛を呈する頻度が高い. それ以外はFull-like symptom.
TRAPSはステロイドが効果的で, コルヒチンが無効な点でMFMと異なる
PSL >20mg/dで効果が期待できる.
開始初期は著明に改善し得るが, 徐々に効果は低下し, Dose-upが必要となることが多い.
コルヒチンの効果は乏しい.
Etanerceptが著効することが分かっている.
25mg 2回/wkの投与で著明に改善が見込める.