ACR, もしくはPCR(Protein-Cre ratio)は "1日の尿から排泄するCre量が1g" という仮定のもとで計算しているため, その分バラツキ(Bias)のリスクもある.
そこでより高精度に1日Cre排泄量を推定し, ACR(もしくはPCR) x 予測Cre排泄量(g/日)をすればより高精度な1日尿中アルブミン量(もしくは蛋白量)を推定可能ではないか, ということ.
Am J Kidney Dis. 2014;63(3):415-421
PREVENT study; NetherlandsのPopulation cohortの解析
2711名において, Albumin-Cre Ratio(ACR), estimated Alb excretion rate(eAER), measured Alb excretion rate(mAER)の相関性を評価.
mAERは24時間蓄尿し測定した尿中Albの1日量
eAERはSpot尿を用いて, ACRとeCERを評価し, ACR x eCERで算出.
(eCERとはestimated Cre値. 患者の年齢, 体格より算出する)
各計算式は以下の通り
eCRE値の評価方法には3つの計算式がある.
其々 eCER lx, eCER Ellam, eCER Walserと記載し, その数値で求められたeAERはeAER lx, eAER Ellam, eAER Walserと記載する.
患者群の体重別のデータ;
赤□は其々の測定, 計算値
ACRよりもeAERの方が実際のアルブミン尿の測定値(mAER)に近い.
ACRと各eAER値とmAER値のBiasを評価すると
全体的にACRよりもeAERの方が実測値との差は少ない.
eCREの計算方法は<70kgの群ではEllamが最も差が少ないが, >82kgとなると最も差が大きくなる.
日本人の体格ではEllamを使用するのが良いのかもしれない.
Am J Kidney Dis. 2014;63(3):405-414
さらにeAERを3つのCohortで評価したStudy
eAERによるAlb尿検査をMDRD cohortから1693例, CRIC cohortから3645例, DCCT cohortから1179例で解析
eCREはEllamの計算式とeCRElxを使用 (eCRElx = eCRECKD-EPIと表示)
患者群
PREVENT studyでは腎機能正常例が大半を占めていたが,このCohortsではeGFRは40台が平均と軽度の腎不全が多い.
eAERとACRのBiasの差
若年, 男性例では特にACRとmAERの差が大きい. 低く見積もられる.
女性例ではACRは実測値に近いが, 全体的にはeAERの方が精度は高い.
腎機能別のBiasの評価
eGFR ≥30ではACRよりもeAERの方がBiasは少ない.
ただし, eGFR<30ではACRの方がBiasは少なくなる.
ただし, eGFR<30ではACRの方がBiasは少なくなる.
eAERもEllamの式を使用したeCREの方がより高精度と言える.
(Table 7)微量アルブミン尿(U-Alb>30mg/24h)の有無を評価するだけならば
ACRでも十分な感度, 特異度. ただし性別によりCut-offは異なる点に注意.
ACRでも十分な感度, 特異度. ただし性別によりCut-offは異なる点に注意.
Alb尿の量を正確にするならばeAERの方がBetterと言える.
つまり, タンパク尿量の評価ではePERの方が良いともとれる.
(Table 4)はMDRD cohortにおけるPCRとePERと, mPERの評価Bias評価であるが,
よりePERの方が実測値(mPER)に近く, タンパク尿評価も同様に有用と言える.
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まとめると,
尿中Albの評価にはACRよりmAERの方がより高精度と言える.
特に若年男性例ではACRのBiasが大きい.
反対に女性例, 高齢者ではACRでもBiasはそこまで大きい物ではない. ただし, それでもeAERの方が精度は良好.
eGFR<30の腎不全例ではeAERよりACRの方が精度は高いと言える.
でも, 『微量アルブミン尿の有無』, を評価するならばACRでも十分な感度, 特異度.
ただし男女でCutoffは異なるので注意
アルブミン量をより高精度に推測可能ということから, タンパク尿の評価の方が使えるかもしれない.
eCERはEllamの式を用いるのが最も簡便で高精度となる
ただし体重<70kgではより高精度であるが, >82kgとなると他の計算式よりも精度は落ちる.