Immunol Allergy Clin N Am 34 (2014) 73–88
Physical urticaria (PhysU)
身体的刺激, ストレス, 熱刺激(寒冷, 暖)刺激にて誘発される, チクチクするミミズ腫れ, Flare-typeの皮疹±血管浮腫を伴う病態.
様々なSubtypeがあり,
Urticaria factitia/symptomatic dermographism(人工蕁麻疹/皮膚描記症)
Delayed pressure urticaria(DPU), Vibratory urticaria/angioedema,
Cold contact urticaria(ColdU), Heat contact urticaria(HeatU),
Solar urticaria(SolU)等がある.
Cholinergic Urticaria (CholU)
同じく誘発性の蕁麻疹だが, 体温上昇に伴い誘発される.
入浴や運動で誘発され, 外的刺激では誘発されない.
これらPhysU, CholUはDPUを除いて刺激により急速に出現し, 数分〜数時間で消失する.
皮疹出現時にチクチクとした痛みを伴うもの特徴的. 全身症状を伴うこともある.
慢性化し, 其々 慢性蕁麻疹の25%, 5%を占める.
Urticaria factitia/symptomatic dermographism:
PhysUの中で最も多いタイプで, 50%を占める.
一般人口の5%で認めるとされる.
皮膚を引っ掻く等, Shear forceが加わると, その部位にチクチクした疼痛や皮疹を生じる.
症状は1.5-2hほど持続することが多い. どの年代にも発症し, 平均6.5年間ほど続く.
治療は第2世代のH1ブロッカーが第一選択.
通常使用量の4倍ほど使用せねばならないこともある.
他の選択肢として, Omalizumab, cycA, Montelukast等
Delayed pressure urticaria: ミミズ腫れを来さないurticaria
DPUは血管浮腫性の紅斑様の皮疹を呈する.
圧迫を加えられた皮膚に生じ, 粘膜にも生じ得る(上気道等)
垂直方向の圧で誘発され, チクチク感, 焼ける様な感じ, 疼痛を伴う
発熱やFlu-like symptom, 関節痛, 悪寒も伴うことがある.
典型的な経過は, 鞄を肩にかけた後やキツい靴を履いた後, 裸足で梯子を上る行為, クッションのない椅子に長時間座る等の行為後に生じる.
皮疹は圧迫後4-8時間経過して出現し, 数時間持続(6-9h).
時間の解離があるため, DPUと認識せず, 慢性蕁麻疹と解釈している患者もいる.
膨疹よりは血管浮腫Like, 圧がかかる部位に生じる点, 慢性蕁麻疹はより表在性で, 持続時間も短い点で鑑別.
DPUの診断は誘発試験
圧をかけ, その30分, 4,6,8,24h後に評価.
誘発後6時間程度で赤色の腫脹を認めれば診断
治療は垂直方向の圧を避けること, 第二世代のH1ブロッカーを使用する.
Cold contact urticaria: 寒冷刺激で誘発される蕁麻疹
PhysUの1/3を占めるタイプ
冷たい空気, 水, 物質に触れた数分後に, 触れた部位のみで生じる.
ヒスタミン, 肥満細胞からのMediatorが原因.
プール等で全身が暴露すると全身で蕁麻疹を生じ, 低血圧や意識障害を来すこともあり, 致命的なことも.
若年成人で多く, やや女性で多い傾向. 4.8-7.9年持続する.
非典型例として, Delayed ColdU (DCU)があり, 寒冷曝露後~24hで出現するタイプもある
さらに稀であるが常染色体優性遺伝の家族性DCU, familial cold auto-flammatory syndrome, familial atypical cold urticariaがある.
DCUは寒冷誘発試験では検出が困難.
ColdUの誘発試験
氷をビニール袋に入れて5分間前腕に接触させる. その後10分後に評価し, 隆起した皮疹, 掻痒感, 焼ける様な感覚があれば陽性と判断する.
陽性ならば次はどの温度, 何分接触すると生じるかを評価 (4度-44度で評価).
これらの情報で治療効果判定を行ってゆく.
Heat contact urticaria: 稀で<100程度の報告しかない
温熱刺激後, 数分で生じる蕁麻疹.
温熱刺激で誘発するか, 入浴で深部温を45度まで上げて誘発する.
Solar urticaria:
稀なタイプで, 光線, 紫外線暴露後5-15分で生じる蕁麻疹. 24h以内に改善.
一部で曝露後1h以上経過して出現し, 24h以上持続する例も報告されている
21974例の蕁麻疹の内, 0.08%
Vibratory angioedema:
振動刺激より10分以内に局所の血管浮腫を来す病態. 非常に稀なタイプ
Cholinergic urticaria:
体温が上昇することで誘発される蕁麻疹. 血管浮腫は少ない.
ストレスや運動, 入浴が刺激になる.
掻痒感やチクチクした痛みを伴い, 膨疹や紅斑を生じる. 皮疹は15-60分程度持続し, 改善することが多い.
若年成人に多く, 加齢と伴に症状は軽快することが多い. また季節性もあり, 夏は軽度となる.
インドの大学生600例でCholUを評価したところ, 25例でCholUと診断(4.16%). 大半が軽症であった. (Indian Dermatology Online Journal 2013;4:62-63)
CholUにはいくつかのタイプがある
汗腺閉塞型CholU
低汗症を伴うCholU
汗に対するアレルギー反応を伴うCholU
特発性CholU
CholUには汗が関連している可能性がある
汗には様々なサイトカイン, IgA, IgEが含まれており, 汗腺が閉塞することで膨疹を生じる(汗腺閉塞型CholU). 夏には発汗が多くなり閉塞が解除されるため, 軽快する可能性がある
低汗症に伴うCholUでは, 汗腺のAcetylcholine-Rも障害され, 組織のAcetylcholineが高値となり, 生じる可能性が示唆.
汗自体に対するアレルギー反応での蕁麻疹の機序もある.
Allergology International. 2012;61:539-544
Type
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汗アレルギー
|
無, 低汗症
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アセチルコリン
皮下注射試験 |
病理所見
|
治療
|
汗過敏症
|
+
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ー
|
+
|
汗腺周囲の
リンパ球浸潤 |
減感作療法
|
無, 低汗症
|
ー
|
+, モザイク
|
+(一部)
|
正常
|
ステロイド
|
特発性
|
ー
|
ー
|
ー
|
正常
|
抗ヒスタミン
|
発汗, 無汗の評価はヨウ素-デンプン試験で評価する.
ヨウ素-デンプン試験: 評価部位(この場合全身)にヨウ素を塗り, 乾燥. その上からコーンスターチをかける.
運動負荷 or 高湿度(70%), 高温の部屋で汗をかかせ, 発汗(+)部位は青紫に. 発汗(-)部位はそのままとなる.
発汗部位と無汗部位の皮膚生検を行い, 評価する.
CholUの検査:
運動負荷試験; 年齢, 状態に応じた運動負荷を行い, 発汗がある時点から15分間まで継続.
運動負荷後, 10分で蕁麻疹が出現すれば陽性.
上記が改善した後(24h空けて) 42度の風呂に15分はいり, 深部温を+1度上昇させ, 誘発させる.
運動負荷試験のみでは運動誘発性蕁麻疹との鑑別が出来ない.
CholUの治療はH1 + H2阻害薬の併用がBetter
16-29歳でCholUと診断された251例のRCT.
(二次性; HL, SLE, 血管炎や, 既に薬剤使用している群は除外)
A) Chlorpheniramine maleate 4mgを運動の30分前
Chlordiazopoxide 5mg + Clindium bromide 2.5mg tid投与群
B) Chlorpheniramine maleate 4mg tid + Maprotiline HCl 25mgを眠前に投与群
C) Chlorpheniramine maleate 4mg tid + Cimetidine 200mg tid投与群 で比較したRCT.
Chlorpheniramine maleate; H1ブロッカー (レスタミン®)
Chlordiazopoxide; ベンゾジアゼピン系 (バランス®)
Clindium bromide; 抗コリン薬
Maprotiline HCl; 四環系抗うつ薬 (ルジオミール®)
Cimetidine; H2阻害薬 (タガメット®)
アウトカム;
A) 抗コリン + ベンゾ, 運動前に抗ヒスタミン群
B) 抗ヒスタミン + 抗うつ薬
C) 抗ヒスタミン + H2阻害薬 の比較では,
H1+H2阻害薬の併用が最も症状の緩和には有効であった.
抗コリン + 抗ヒスタミン常用の群も作って欲しかったが...