NEJM 2007;357:266-81 J of Clin Investigation 2006;116:2062-72
Vitamin: 外部から摂取することがVitalなものという意味.
ビタミンDは,
魚の脂肪に含まれるVit D2,D3の摂取
日光暴露により皮膚で7-dehydrocholesterolよりD3が合成され, 体内へ取り込まれる.
肝臓にてVit D ⇒ Calcidiol(25(OH)D)
腎臓にてCalcidiol ⇒ Calcitriol (酵素;CYP27B1)(1,25(OH)2D) へ合成.
日光はUV-B(290-315nm)が関与. 皮膚を透過して作用する.
又, 日光への多量暴露では, Vit D3が破壊され, 過剰にはならない
Calcitriol(活性Vit D)
@腸管 Ca, P吸収UPが最も重要な作用
他, 腎, 骨へ作用
25(OH)Dから1,25(OH)2DへはPTHの作用が関連しており,
また, 1,25(OH)2D自体はPTH分泌にNegative feedbackをかける.
Vit D欠乏症について
Am J Med 2009;122:793-802 NEJM 2007;357:266-81 J of Clin Investigation 2006;116:2062-72
Vit D無しでは, 摂取したCaの10-15%, Pの60%しか吸収されない
Vit DによりCaの30%, Pの80%が腸管より吸収される
25(OH)D 20⇒32ng/mLまで増加すると, Ca吸収率は45-65%UP
Vit D欠乏では, 血中Ca, P値は低下し, PTHは上昇.
→ 骨代謝は亢進し, くる病を生じる.
Vit D欠乏の評価は血中25(OH)Dを評価する
25(OH)Dは血中半減期2wkであり, 体内Vit Dを評価するのに最適
Vit D欠乏症では, PTH分泌が亢進し, 25(OH)D ⇒ 1,25(OH)2Dの反応も亢進する.
従って, 1,25(OH)2Dは通常正常値~やや増加していることが多い.
でも国内では1,25(OH)2Dのみ保険適応あり, 25(OH)Dは自費となるため, 保健適応内ではビタミンD欠乏症の診断は出来ない.
ちなみに25(OH)Dは10000円オーバーで検査は可能.
25(OH)Dのカットオフは?
CutoffはControversial.
<20ng/mL: Vit D deficiency
21-29ng/mL: Vit D insufficiency
>30ng/mL: Vit D sufficiency
>150ng/mL: Vit D intoxicationと一般的には定義される
上記Cutoffを用いた場合, 世界で1,000,000,000名がVit D deficiency, insufficiency,
アメリカでは36%の健康成人, 57%の入院患者が基準を満たす.
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25(OH)D
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1,25(OH)2D
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Ca
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HPO4
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ALP
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PTH
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FGF23
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骨病変
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Vit D Deficiency
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<20
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↑
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↓NL
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↓
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↑
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↑
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NL
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Rickets/Osteomalacia
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Vit D Insufficiency
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21-39
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↑ or NL
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NL
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NL
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↑ or NL
|
↑ or NL
|
NL
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↓ BMD
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Vit D Sufficiency
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>30
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NL
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NL
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NL
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NL
|
NL
|
NL
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None
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XLH
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NL
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↓
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NL
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↓↓
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↑
|
NL
|
↑ or NL
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Rickets
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ADHR
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NL
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↓
|
NL
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↓↓
|
↑
|
NL
|
↑↑
|
Rickets
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TIO
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NL
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↓
|
NL
|
↓↓
|
↑
|
NL
|
↑↑
|
Rickets
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XLH; X-linked hypophosphatemic rickets, ADHR; Autosomal dominant hypophosphatemic rickets
TIO; Tumor-induced osteomalacia
TIO; Tumor-induced osteomalacia
甲状腺機能正常, Ca正常の1741名 @ 甲状腺クリニックでの解析
(J Clin Endocrinol Metab 2003;88:185-191)
25(OH)Dと1,25(OH)2Dの値を比較すると,
全年齢群において, 25(OH)Dと1,25(OH)2Dの関連性無し.
1,25(OH)2Dは25(OH)Dに関わらず, 一定の値を取るように調節されている.
⇒ 異常があるならば, 先天性のRicketsを疑う
Vit D欠乏症と副甲状腺
VitDの欠乏より, PTHの刺激は亢進し, 副甲状腺腫を形成
低Mg血症があると, PTH抑制されるため, 25(OH)D<20ng/mLでもPTHが正常値のままのことがある.
PTH分泌亢進すると, 25(OH)D ⇒ 1,25(OH)2Dの代謝がさらに亢進.
⇒ 低Vit D血症をさらに助長することになる.
PTH分泌亢進はさらに, Pの尿中排泄増加, 骨破壊細胞活性化
⇒ 血清Pの低下. 骨粗鬆症の進行を認める
骨粗鬆症は全身性の疼痛を来すことがある, 又, 骨軟化症の場合, 脛骨全面, 胸骨の圧迫により疼痛を来すことがあり, 臨床上重要な所見と言える.
血清25(OH)DとPTHの関係
19172名の血清検査を施行し, 関連を評価. (The American Journal of Medicine (2011) 124, 1165-1170)
25(OH)D<50nmol/Lでは血清PTH値が増加.
75-85nmol/L以上ではPTH値はプラトーとなる.
高Ca血症, 腎不全患者を除くと, PTHプラトーとなる25(OH)DのCutoffは46.2nmol/L.
Vit D欠乏症と筋骨格系症状, その他の症状 (NEJM 2007;357:266-81)
Vit D欠乏は筋力低下の原因となり得る
筋細胞にはVit D受容体があり, 最大筋力発揮時に必要とする
Meta-analysisでは, Vit D摂取 vs Placebo(Caのみ)において, 転倒のRiskは OR0.78[0.64-0.92]と低下することが分かっている.
摂取量も重要であり, Vit D3 400IU/dでは有意差ないが, 800IU/d + Ca摂取では転倒Riskが減少する.
1,25(OH)D2は単球, Mφにも作用し, Cathelicidinの産生に関与
⇒ Cathelicidinは結核の破壊に関与しているタンパクである.
黒人における結核の感染, 重症化が多い理由として考えられている
1,25(OH)D2は他には Renin産生の抑制作用, Insulin産生効果, 心筋収縮亢進に関与している.
他, 25(OH)D< 20ng/mL群では大腸, 乳癌, 前立腺癌の頻度が30-50%高い
自己免疫性疾患(Type 1 DM, RA), Type 2 DM発症頻度も, Vit D内服により有意に低下するとの報告もあり.
統合失調症, うつ病とVit Dの関連
胎生期, 乳児期のVit Dの低下は, 脳発達障害を来し, 統合失調症, うつ病の発症率を上昇させ得る.
肺機能, Wheezing
25(OH)D >35ng/mL群ではFEV 176ml上昇するとの報告.
妊娠時のVit D欠乏は小児喘息のRiskを上昇させるかもしれない.
Vit D欠乏症と心疾患
Framingham offspiring studyにおいて, 1739名を5.4yrフォロー. その内120名が心血管イベントを発症.
25(OH)D <15ng/mLをCutoffとした時, 28%がVit D欠乏を認めた. Vit D欠乏は心血管イベントのRisk factorとなり, HR 1.62[1.11-2.36].
Subanalysisでは, 高血圧(+)群で有意にRisk増加を認めた. HR 2.13[1.30-3.48] vs HR1.04[0.55-1.96](HT(-)群).
Vit D欠乏の補正は心血管イベント抑制に繋がる. 特にHT(+)患者では重要となり得る. (Circulation 2008;117:503-11)
Vit D欠乏症の原因
原因
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Effect
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皮膚産生の低下
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Sunscreen使用
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Vit D3産生低下; SPF 8では92.5%, SPF 15では99%低下
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皮膚色素沈着
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Vit D3産生低下; 最大99%低下する
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加齢
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Vit D3産生低下; 70歳では75%低下する
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季節, 地域, 時間
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緯度>35度地域では, 11-2月の間は産生量が0になる
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熱傷, 皮膚移植
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皮膚量に応じた産生量となる
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Bioavailability低下
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吸収不良
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Vit Dの吸収不良となる
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肥満
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Availabilityの低下を認める
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代謝の増加
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薬剤性
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抗てんかん薬, Glucocorticoid, HAART, 免疫抑制剤
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授乳
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母乳
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母乳中のVit D量が少ない
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25(OH)D産生低下
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肝不全
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90%以上の機能低下で25(OH)Dの産生が低下, 不可能となる
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25(OH)D尿中排泄
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ネフローゼ症候群
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25(OH)D結合タンパクごと排泄される
|
1,25(OH)2D産生低下
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慢性腎障害
(GFR 31-89) |
高P血症 ⇒ Fibroblast grouwth factor 23の上昇
⇒ 25(OH)D-1α-hydroxylase活性を低下させる |
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(GFR<30)
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25(OH)2D産生不可 ⇒ 低Ca, Scondary Hyperparaなど
|
原因
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Effect
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先天性
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Pseudovit D deficiency rickets(type 1)
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Renal 25(OH)D-1α-hydroxylase gene(CYP27B1)の異常
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(Rickets)
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Vit D-resistant ricket(type 2)
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Vit D受容体のmutation. 1,25(OH)2Dは上昇する
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Vit D-dependent rickets type 3
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Hormone-responsive-element binding proteinの産生過剰
⇒ 1,25(OH)2Dの反応を阻害する |
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常染色体優性低P性Rickets
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Fibroblast growth fafctor 23の変異による代謝阻害.
高リン尿症, Pの腸管吸収低下, 低P血症, CYP27B1活性低下 |
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X-linked 低P性Rickets
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PHEX genetの変異 ⇒ Fibroblast growth fafctor 23増加
高リン尿症, Pの腸管吸収低下, 低P血症, CYP27B1活性低下 |
後天性
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Tumor-induced osteomalacia
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腫瘍細胞によるFibroblast growth fafctor 23の産生増加
高リン尿症, Pの腸管吸収低下, 低P血症, CYP27B1活性低下 |
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原発性高副甲状腺機能亢進
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PTH産生増加による25(OH)D ⇒ 1,25(OH)2D反応亢進
|
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Granulomatous disoders
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Sarcoidosis, TB, Lymphomaなど
Mφによる25(OH)D ⇒ 1,25(OH)2D反応亢進 |
|
Hyperthyroidism
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25(OH)Dの代謝亢進
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Vit Dの必要量 (Am J Med 2009;122:793-802)
Vit Dの1日必要量(維持量)
小児, ~50yrまでの成人では200IU/d
51-70yrでは400IU/d, >71yrでは600IU/dの摂取が推奨
閉経後の女性, 肥満患者, 吸収不良(+)がある患者, 他Vit D欠乏のRiskが高い患者では, 800-1000IU/d摂取
Vit D2はVit D3の30%程度の力価しか無いため, D2を投与する場合は上記の3倍以上の投与量を必要とする.
Vit Dの1日必要量(補正量)
1000IU/dのVit D3を3-4mo続けて, やっと25(OH)Dが10ng/mL
25(OH)D 30ng/mLを達成する為には2000IU/d必要とされる
Vit D2; 50,000IU IM 1回/wk for 8wk ⇒ 500,000IU IM 1回/2-4wkも有効
Vit D欠乏の治療 (NEJM 2007;357:266-81)
小児例
|
Vit D維持量
|
Vit D欠乏の治療量
|
授乳中, Age<1yr, Vit D投与なし
|
D3 400IU/d
D3 1000-2000IU/dまでは安全 維持量; D3 400-1000IU/d |
D3 200 000IU/3mo
D3 600 000IU IM q12wk D2,3 1000-2000IU/d + Ca製剤 |
Age 1-18yr, Vit D投与なし, 黒人
|
D3 400-1000IU/d
D3 1000-2000IU/dまでは安全 維持量; D3 400-1000IU/d |
D2 50 000IU/wk for 8wk
|
成人例
|
Vit D維持量
|
Vit D欠乏の治療量
|
日光(-), Vit D投与(-), Age>50yr
|
D3 800-1000IU/d
D2 50000IU/2-4wk |
D2 50000IU/wk for 8wk
25(OH)D<30ならばさらに8wk |
妊娠, 授乳中の女性
|
D3 1000-2000IU/d
D2 50000IU/2wk. D3 4000IU/d for5 moまでは安全 維持量はD2 50000IU/wk |
D2 50000IU/wk for 8wk
25(OH)D<30ならばさらに8wk |
吸収不良症候群
|
日光, UV-Bへの暴露.
D2 50000IU/1-2d, wk D3 10000IU/d for 5moまでは安全 維持量; D2 50000IU/wk |
UV-B治療
D2 50000IU/1-2d |
Steroid, senobiotic receptorを
活性化する薬剤, 免疫抑制剤 |
D2 50000IU/d-wk
維持量; D2 50000IU/1,2,4wk |
D2 50000IU/2-4wk for 8-10wk
25(OH)D<30ならば毎週施行 |
1U=25ngであり, 国内製剤はD2, D3があるものの, µg表記が主.
ワンアルファ®; D3製剤(0.25µg, 0.5µg, 1µg)
通常Vit D 1µg = 40IUであるが, α-Calcidolは活性型Vit Dであり, 7.5倍の力価がある*
(*新しいホルモン活性型ビタミン D. 東京, 新宿書房 1979.)
⇒ 1mcg ⇒ 40IU x 7.5 =300IU, 4mcgで1200IU投与可能.
食事中のVit D量
サーモン(天然)100g
|
600-1000IU D3
|
ツナ缶 100g
|
230IU D3
|
サーモン(養殖)100g
|
100-250IU D3
|
シイタケ(生)100g
|
100IU D2
|
サーモン(缶詰)100g
|
300-600IU D3
|
シイタケ(乾燥)100g
|
1600IU D2
|
イワシ(缶詰)100g
|
300IU D3
|
卵黄
|
20IU D2,3
|
サバ(缶詰)100g
|
250IU D3
|
|
|
日光暴露は10 a.m.-3 p.m.の時間帯に, 5-30min, 週2回日光を浴びれば十分量確保可能.(露出は腕, 脚のみでOK)
水着を着て, 皮膚に紅斑が出来る程度の日光暴露を行うと, Vit D2にして20000IU程度のVit Dを生成できる.
α-Calcidolの効果
国内で多く用いられるVit D製剤(Hydroxylated Vit D)
前述の通り, 4µg/dでもビタミンD ユニット換算で1200U.
通常≤1µg程度の使用が多く, その場合300U/dとやや心もとない量であるが,
以下のMeta-analysisをみると,
閉経後女性に対して, 骨折, 骨粗鬆症 予防目的のVit Dの効果を評価した25 RCTsのMeta-analysis (Endocrine Reviews 2002;23(4):560-9)
13 RCTがHydroxylated Vit Dに関するRCT(半数以上が国内より)
Hydroxylated Vit Dの骨折, 骨粗鬆症予防効果を評価
Outcome; 骨折Risk
|
RR
|
Vertebral Fx
|
0.64[0.44-0.92]
|
Nonvertebral Fx
|
0.87[0.29-2.59]
|
BMDの変化
|
WMD
|
Hydroxylated Vit D; 0.25-0.43µg
|
-0.47[-1.17~0.33]
|
Hydroxylated Vit D; 0.50-1.00µg
|
9.79[3.39-16.18]
|
α-Calcidolも≥0.5-1.0µg/dで投与すればBMDの改善を見込める.
理論上の力価は7.5倍IUであるが, 実際はややもう少し高い可能性がある.
Vit DはCaとの併用が重要 (BMJ 2010;340:b5463)
Vit D単剤 or Vit D + Ca併用 vs Placeboで骨折Riskを評価した6つのRCTのMeta-analysis(n=68517)
Vit DのDose, Ca併用の有無による骨折Risk
骨折の種類
|
Vit D 10mcg
|
Placebo
|
HR
|
Vit D 20mcg
|
Placebo
|
HR
|
Any
|
18.7/1000pt-yr
|
20.2/1000pt-yr
|
0.91[0.85-0.99]
|
43.2/1000pt
|
51.1/1000pt
|
0.95[0.80-1.14]
|
Hip
|
2.4/1000pt-yr
|
3.0/1000pt-yr
|
0.74[0.60-0.91]
|
10.3/1000pt
|
9.2/1000pt
|
1.30[0.88-1.92]
|
Vertebral
|
1.4/1000pt-yr
|
1.6/1000pt-yr
|
0.86[0.65-1.14]
|
2.7/1000pt
|
3.1/1000pt
|
0.97[0.48-1.98]
|
Any
|
85.9/1000pt-yr
|
94.1/1000pt-yr
|
0.93[0.67-1.28]
|
45.9/1000pt
|
44.4/1000pt
|
1.02[0.92-1.14]
|
Hip
|
61.3/1000pt-yr
|
56.2/1000pt-yr
|
1.10[0.74-1.64]
|
14.0/1000pt
|
13.0/1000pt
|
1.08[0.89-1.30]
|
Vertebral
|
NA
|
|
|
2.4/1000pt
|
2.1/1000pt
|
1.10[0.69-1.76]
|
上段がCaとの併用あり, 下段はVit D単独の群
有意差が明らかなのは10µg/d + Ca投与群のみ.
20µg/dでもCa非投与では有意差は認められない.
ちなみに,
1-α Calcidol, CalcitriolなどShort acting, potent Vit D製剤はVit D欠乏を補うには不向きであり, 高Caを来たすRiskがあるとの意見もある.
Caとの併用も長期的には必要なく, 製剤の内服し難さが問題となることもあり, 長期的には推奨されない. (BMJ 2010;340:b5664)
Vit D補正には長期間を要する
86名のVit D insufficient患者に対して,
Vit D2 50000IU/wk ⇒ 50000IU/2wk投与を施行した患者群の25(OH)Dをフォロー
(25(OH)D>30ng/mL時点で維持量 50000IU/2wk投与へ変更)
少なくとも6か月以上は投与継続が必要であることが示唆される.
Vit D中毒
普通Vit D過剰となることはない
Vit D製剤の過量服薬にて生じる場合がある.
D3 10000IU/dを5カ月間続けても過剰にはならない.
25(OH)D >150ng/mLで定義され, 高Ca, P血症を生じる.
Granulomatous disorderの患者では, Mφによる25(OH)D ⇒ 1,25(OH)2D産生亢進があるため, 25(OH)D >30でも高Ca, P血症を来すことがある.
上記患者群では25(OH)D 20-30に保つようにコントロールする