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2014年3月28日金曜日

Churg-Strauss Syndrome, Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis (EGPA)

Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiiti(EGPA)について
(旧名 Churg-Strauss Syndrome, チャーグストラウス症候群) (UpToDate)

アレルギー性鼻炎, 喘息, 好酸球増多症を特徴とする血管炎
 侵襲臓器は肺が最多で次に皮膚が多い
 心血管, 消化管, 腎, CNSも含まれる
 様々な病態があるため, 正確な頻度や分布は不明
 英国では2.4[0.9-5.3]/1000 000の頻度と言われている
 性差は無く, 平均診断年齢は50台. >65yrの血管炎では稀
 明らかな血管炎の10%がCSSという説もある

 日本国内では100万人あたり, GPA 2.3, MPA 13.8, EGPA 1.0とANCA関連血管炎ではもっとも稀な病態. (GPA: Granulomatosis with Polyangiitis, MPA: Microscopic Polyangiitis)
(Clin J Am Soc Nephrol 2006;1: 1016–1022)

遺伝因子の可能性も示唆されており, HLA-DRB1*07, HLA-DRB4が有意に多い
 Single nucleotide polymorphisms(SNPs) ⇒ IL 10 gene
 IL 10-3575/-1082/-592 TAC HaplotypeがCSSに関連(OR 2.16)

EGPAの臨床症状
臨床経過は3期に分かれる
 Prodromal Phase; 20-30台で, アトピー, アレルギー性鼻炎, 喘息が主
 Eosinophilic Phase; 末梢血好酸球増多, 好酸球組織浸潤が特徴
 Vasculitic Phase; 30-40台, 中血管~小血管の血管炎, 血管(外)肉芽腫.

喘息は>95%で認められ, Vasculitic Phaseの8-10年前に発症
ステロイド吸入によりCSSの症状がマスクされることもアリ
鼻閉, 副鼻腔炎, 鼻ポリープも一般的に認められ, 好酸球性眼球突出, 慢性中耳炎, 難聴, 脳底骨浸潤は稀だがあり得る
上気道, 鼻咽頭の壊死病変はCSSよりWegenerを疑う

各臨床症状の頻度

Churg
Chumbley
Lanham
Hashimoto
Reid
Guillevin
Sugawara
Karina

US
US
UK
Japan
UK
France
Japan
US

1951
1977
1984
1994
1998
1999
2006
2003
N
13
30
138
87
23
96
55
99
F:M
4:9
21:9
72:66
41:46
15:8
45:51
18:37
48:51
Age
33[7-62]
47[15-69]
38
47[17-79]
57
48[17-74]
54[20-77]
49(16)
気管支喘息
100%
100%
100%
93%
96%
100%
100%
99%
肺浸潤
39%
27%
74%
33%
48%
38%
73%
58%
,,鼻症状
77%
70%
69%

52%
48%
96%
74%
多発単神経炎
69%
63%
64%
65%
70%
78%
98%
76%
消化管症状
92%
17%
62%
19%
43%
33%
78%
31%
心臓
54%
16%
52%
33%
17%
30%
65%
8-13%
関節痛
31%
20%
46%
52%
57%
41%
32%
30%
筋肉痛


33%
51%
57%
54%
27%

皮膚

66%
51%




57%
 紫斑
62%

46%
44%
26%
31%
52%

 皮下結節
54%
27%
33%
27%
9%
19%
15%

腎臓
31%
20%
46%
46%
57%
16%
36%
25%
中枢神経
61%

27%

39%
8%
8%
11%

日本国内のデータ: 2008年に報告された473例の解析 Mod Rheumatol, 2014; 24(4): 640–644
 日本国内での予測有病率は17.8/1000000.
 発症年齢は55±14歳. 男女比は1:2
 喘息は98%で認められ, アレルギー性鼻炎は13%で認められた.
 MPO/p-ANCA陽性 50%
 PR3/c-ANCA陽性 3%

侵襲臓器とその頻度は

%
Systemic
76%
皮膚
51%
粘膜,
10%
ENT
23%
胸部
60%
心血管系
16%
腹部
16%
腎臓
39%
神経
93%

MPO-ANCA陽性例 vs 陰性例の比較
 陽性例ではより腎障害, 粘膜, 眼病変の頻度が高い.

 神経障害は変化なし.

より細かい症状の頻度 (Clin Exp Rheumatol 2003;21:S69-77)
呼吸器

末梢神経障害

喘息
96-100%
多発単神経炎
75%
肺浸潤
62-77%
CNS障害

副鼻腔炎
60%
脳虚血, てんかん
8%
胸水
29%
脳神経障害
4%
肺胞出血
3%
心血管障害

皮膚所見

心嚢水
23%
Palpable purpura
31%
心筋炎, 冠動脈炎
22-26%
皮膚結節
19%
消化管障害

蕁麻疹
8%
腹痛
17-44%
骨格筋

血便

関節痛
40%
腎障害

筋肉痛
54%
糸球体腎炎
20-47%
非融解性関節炎
15%



皮膚病変
 Vasculitic phaseでは最も多く認められる所見
 Palpable purpura, 斑状, 丘状紅斑, 点状出血斑, 出血斑
 有痛性 皮膚, 皮下結節(肉芽腫を伴う)

心血管病変; 心膜炎(32%), 収縮性心膜炎, 心不全(47%), MI
 心血管病変はCSSの死因の半分を占める

神経病変多発単神経炎が主で75%で認められる.
 未治療で増悪し, 多発神経障害へ進展. 不可逆であり, 早急な治療が必要となる

腎病変急速進行性糸球体腎症~蛋白尿のみと様々
 約50%で腎病変を認め, Mild/Moderateが94%を占める
 腎不全は<10%以下とWegenerと比較して少ない (J Am Soc Nephrol 1999;10:2048-55)

消化管障害Eosinophilic gastroenteritis
 腹痛(59%), 下痢(33%), 消化管出血(18%), 大腸炎がVasculitic phaseに伴う

筋骨格系障害; 筋肉痛, 移動性多発関節痛, 関節炎は比較的稀な病態. Vasculitic phaseに伴う 

神経障害の頻度 (European Journal of Neurology 2010, 17: 582–588)
 神経症状は6-8割で合併しており, 末梢神経障害が多い.
 多発単神経炎が最も多い. 次いで多発神経症, 脳神経障害, 脳梗塞.

多発単神経炎で侵されやすい神経, 感覚, 運動

EGPAと心臓合併症 (Medicine 2009;88: 236-243)
EGPA患者49名のRetrospective study.
 心エコー, MRI, ECGにて心臓合併症を評価.
 43y[18-69], 男性23名. 22/49(45%)で心疾患を合併.

LV dysfunctionが50%, 中等度〜重度の弁膜症73%,
心嚢水貯留 41%, MRIでの心筋炎所見 59%.
心臓合併症(+) vs (-)群で比較すると, 心臓合併症(+)群の方がより, ANCA(-)が多く (0% vs 25.9%), Eo数が多い (9947±9092 vs 3657±3710/µL)
HESによる心筋障害と同様, Eo浸潤による心筋障害が主と考えられる.

検査所見
Eosinophilia; 5000-9000/mcLが特徴的
 ステロイド投与にて急速に減少する
 末梢好酸球増多(-)でも, 組織好酸球増多を認めることがある

他非特異的所見
 IgE Level上昇
 補体上昇
 Hypergammaglobulinemia 
 リウマチ因子弱陽性

Antineutrophil Cytoplasmic Antibodies
 EGPAでは38-59%でANCA(+), 内70-75%でMPO-ANCA(+)
 ANCA(+) EGPAでは, 腎症, 末梢神経障害, 血管炎組織(+)が多い
 ANCA(-) EGPAでは, 心血管障害, 発熱が多い

各病態のANCA陽性率 (Am J Kidney Dis. 62(6):1176-1187.)
胸部画像所見
 一過性, 斑状陰影が75%で認める
 左右対称性の腋窩, 末梢分布
 肺門から広がる陰影 + 肺門部リンパ節腫脹
 びまん性間質影, 粟粒陰影
 肺胞出血は3%で認める
 両側性の結節影(非空洞性)
 肺門部リンパ節腫脹
 胸水は30%で認められ, 滲出性, 好酸球増多を認める

慢性好酸球性肺炎(CEP)とEGPAの胸部CT画像の比較
 16例のEGPAと34例のCEP患者の胸部CTを比較 (J Comput Assist Tomogr 2010;34: 19-22)
胸膜下のGGOは双方に認められるが, MidzoneはEGPAで多い部位.
GGOの中に結節を認めるのはEGPAでより多い.
牽引性気管支拡張はCEPを示唆する.

EGPAの診断クライテリア いろいろ

厚生省研究班(1988) ;  Sn87%, Sp99%
主要臨床所見
1. 気管支喘息
2.
好酸球増多
3.
血管炎症候群
臨床経過
1,2が先行し, 3が発症
組織
1. 著名な好酸球浸潤を伴う肉芽腫性
 or フィブリノイド動脈炎
2.
内弾性板の断裂を示す瘢痕性血管炎
3.
血管外肉芽腫の存在
参考検査
1. WBC >=10000
2. PLT >= 40

3. ESR >= 60mm/hr
4.
血清IgE >= 600U/mL
5. RF
陽性
確実例
1. 主要臨床症状3項目 + 特徴的な経過
2. 主要臨床症状1, 2 + 組織所見1 or 3
疑い例
主要臨床症状1,2を満たし, 組織所見 2

ACR 1990の診断基準
(Arthritis Rheum 1990;33:1094-100)
1. 気管支喘息
2.
好酸球増加 > 10%
3.
アレルギー
4.
/多発神経炎
5.
肺浸潤(移動, 一過性)
6.
副鼻腔の変化
7.
組織; 好酸球性顆粒球の血管, 血管周囲浸潤
4項目以上でSn 85%, Sp 99.7%
 Sn74%, Sp95%という報告も

Lanham’s Criteria(Medicine 1984;63:65-81)
喘息
末梢血好酸球 > 1500/mcL
全身性血管炎(>=2か所の臓器浸潤)

Chapel Hill Consensus Conference
(Arthritis Rheum 1994;37:187-92)
喘息
好酸球増多
呼吸器系の好酸球性肉芽腫性炎症
小~中血管の壊死性血管炎
EGPA患者91例で各診断クライテリアを当てはめたところ, 上記のような感度となった.
最も高感度なのはACR criteriaだが, いくつかのCriteriaを当てはめるとなお感度は良好となる. (Am J Med 2003;115:284-290

EGPAの治療, 予後
初期治療; Glucocorticoid 全身投与
 mPSL 0.5-1.0g/dを3日間施行後, PSL 40mg/dを8wk継続.
 その後モニタリングしながら慎重にTapering行う.
 活動性の血管炎がある場合はCYC, AZA(50-100mg/d)も考慮.
 心血管, 腎, 神経障害が強ければさらにDose UP
 モニタリングはEo, ESRが良い指標となる
 ANCAの継続陽性は基礎疾患の存在を示唆するが, 病勢を反映するとは言い難い

再発性EGPA ⇒ Cyclophosphamide, Azathioprine, HD-Ig

ステロイド治療導入では3mo以内に50%が死亡
ステロイド治療導入では5年生存率は >70%
心血管障害, 脳出血, 腎不全, 消化管出血, 喘息発作が主な死因
 ⇒ 従って, 心血管, 消化管, 腎, 蛋白尿(>1g/d), CNSへの進展は予後不良因子となる

“5-Factor Score” 上記5項目中,
 0項目満たす ⇒ 5年生存率 88%
 1項目満たす ⇒ 5年生存率 74%
 >=3項目満たす ⇒ 5年生存率 54%

喘息発症 ~ Vasculitis発症までの期間が短いことも予後不良因子
 ANCA陽性と予後の関係はハッキリせず