脳梗塞は心原性のEmboliが疑われたが, 心房細動は認められていない.
頸部血管も問題無し. どこからEmboliが飛んだのか?
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AMI, 特に前壁梗塞ではLV血栓を合併することが知られている
心原性脳梗塞の大半がAfに由来するものだが, 2-3%はAMI後のLV血栓症に由来するもの.
1/3がAMI発症後24hr以内に発症し, 1/3が1d-7dで発症する.
(Stroke. 1999;30:2679-2682)
MI発症後のLV不全でもLV血栓症のRiskとなり, そのような患者群での脳梗塞発症riskは1.5%/yr.
特に, 高齢者, LV-EF低下, アスピリン内服無しが発症Risk上昇に関与
MI後のLV不全のある2231名のCohort study (N Engl J Med 1997;336:251-7)
心原性脳梗塞のリスク因子
Risk
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RR
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Risk
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RR
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LVEF; 5%低下毎
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1.18[1.02-1.36]
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抗凝固薬(+)
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0.19[0.13-0.27]
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年齢; 5yr増加毎
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1.18[1.05-1.33]
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アスピリン使用
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0.44[0.29-0.65]
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AMIとLV血栓症, 脳梗塞 (Br Heart J 1984;51:553-6)
53名の前壁梗塞中, 28.3%(15名)でエコー上LV血栓(+). その内, 5名がStrokeを合併した.
また, 28名の下壁梗塞患者ではLV血栓は認められず.
LV血栓(+)患者全員がエコーにて心尖部のAkinesis(+)であり, 心尖部の壁運動が血栓形成に関与している可能性がある
AMI発症後<72hrの100名でTranscranial Dopplerを行い, Microemboliを評価 (Stroke. 1999;30:2679-2682)
53名が前壁, 47名が下壁梗塞.
Microemboliは17名で検出. 前壁梗塞の24.5%, 下壁梗塞の8.5%.
Microemboli(+)群は有意にLV-EFの低下が大きい(22.8% vs 3.3%, o=0.019)
また, LV血栓(+)率が高い(75.0% vs 14.6%, p=0.019)
8日間でStrokeを来したのは3名のみ. 全例が前壁梗塞, LV-EF低下, LV壁運動の低下(+)を満たしていた.
造影MRIによるLV血栓の評価 (Circulation. 2002;106:2873-2876)
AMI, OMI, 心筋症でMRI評価.
造影MRIにて黒く抜ける像が血栓.
12/57でLV血栓(+).
LV血栓はEnd-diastolic volが大きい患者, EFが低値な患者, 壁運動が低下, 壁造影が遅延している患者, 心室瘤を形成している患者で有意に多い.
AMI患者のStroke合併リスクスコア (Am J Cardiol 2012;110: 628 – 635)
GRACE databaseより, 63118名のACS患者の解析.
うち217例が入院中に脳梗塞を発症(0.35%)
Stroke発症のリスクとなる因子;
GRACE risk nomogram
年齢, 体重, 不整脈, 血圧, 心不全, ST変化等でスコアを計算し, リスクを評価.
では, 急性前壁梗塞間じゃにおいて, LMWHの投与は予後を改善させ得るのか?
FRAMI study; 急性前壁梗塞患者776名のDB-RCT (J Am Coll Cardiol 1997;30:962–9)
Dalteparin 150IU/kg SC q12hr vs Placebo群に割り付け, 7-11dでのLV血栓(エコーで評価), 動脈塞栓のRiskを評価. 追跡率は67%.
Outcome
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Dalteparin
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Placebo
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LV血栓+塞栓症
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14.2%
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21.9%
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P=0.03
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LV血栓のみ
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13.8%
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21.9%
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P=0.022
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塞栓症
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1.0%
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1.3%
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NS
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Major hemorrhage
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2.9%
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0.3%
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P=0.006
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LV壁運動障害が著明なほど, LV血栓のriskも上昇する.
DalteparinはAMI後のLV血栓形成, 塞栓症予防に有用だが, 反面, 出血リスクも上昇させてしまう. 死亡率は両者で有意差無し.