(Intern Emerg Med 2007;2:210-218) (Critical Care 2005;9:158-69) (NEJM 2009;361:62-72)
筋細胞の崩壊し, Myoglobin, 細胞内蛋白, 電解質が細胞外へリークする病態.
スタチンによるものが有名であるが, 実際は<0.1%の頻度.
筋肉痛, 脱力感を含めると1-5%となる
MyoglobinのRenal thresholdは0.5-1.5mg/dL
100gの筋組織の崩壊で血中濃度は1.5mg/dLを上回る
Classicな”紅茶色の尿”はMyoglobin 100mg/dLで認める
迅速な対応にて予後は良好; 14年間生存率は78.6%
原因により異なり, 下肢虚血による横紋筋融解では死亡率32%だが, 薬剤による横紋筋融解症では腎障害(+)でも死亡率3.4%程度.
ICU患者では腎障害(+)で59%, 腎障害(-)で22%と高い.
腎障害も3週間である程度改善を示す
横紋筋融融解症の機序, 原因
筋の直接障害 ⇒ 外傷, 代謝, 虚血
薬剤性
筋運動の亢進 の3つの機序がある. ATPの阻害が細胞崩壊に関連
Muscle injury; 外傷, 熱傷, 感電, Immobilisation遷延
代謝性; DKA, 低Na, 低K, 低P, 甲状腺機能異常
虚血性; 圧迫, 血管障害, 鎌状赤血球症
免疫系; PM, DM
Medication; アルコール, コカイン, アンフェタミン, PCP, Statin, Neuroleptic, Amphotericin B
Toxins; Isopropyl alcohol, Ethylene glycol, Tetanus toxin, Venom, Quail
Muscular activity↑; スポーツ, マラソン, Seizure/Epilepsy, 喘息発作
感染症(細菌, ウイルス)
炎症性筋疾患
遺伝性筋代謝疾患
遺伝性筋代謝疾患
その他; 低, 高体温, 特発性
台湾の横紋筋融解症172例の解析 (Pediatr Emer Care 2009;25:657-60)
小児の非外傷性横紋筋融解症172例の原因を調査.
平均年齢7.28yr, 男児136例.
横紋筋融解症の原因;
原因
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%
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原因
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%
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Viral myositis
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77.3%
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熱中症
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1.7%
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Physical exertion
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7%
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肺炎
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1.7%
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敗血症
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4.1%
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喘息
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1.7%
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痙攣
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4.1%
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薬剤性
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1.2%
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低酸素
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1.2%
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ARFは39名で併発したが,
ARF(-)群 vs ARF(+)群で,
CK値 7124(10722) vs 20780(22301), p=0.0001
AST値 328.8(745.2) vs 938.7(1260.3), p=0.005
S-Myoglobin 2638(4232) vs 9887(8074), p=0.0001
U-Myoglobin 3382(6725) vs 6623(8341), p=0.12
感染症に伴う横紋筋融解症 (Am J Med Sci 2003;326(2):79–88)
60例の内訳では, 最も多い感染症はLegionella spp.
Legionella spp 14例, Francisella tularensis 9例, Streptococcus pneumoniae 8例, Salmonella spp 6例, Staphylococcus aureus 5例, 腸内細菌群 9例.
他の報告でも, Legionella, S pneumoniae, F tularensisが最も多い.
S pneumoniae, S aureus, Salmonellaは筋への直接浸潤が原因. 他はToxinによる筋障害が原因とされている.
Myoglobinによる腎障害
Myoglobinは直接, 間接の機序にて急性腎不全を来す
4-33%で急性腎障害を伴う
米国では急性腎不全の7-10%を占める
腎障害の機序は,
直接; 尿細管内で尿酸とともにCastを形成 ⇒ 閉塞性病変となる.
脱水, 電解質異常がCast形成を助長する
間接; 色素由来の腎内血管の収縮 ⇒ GFRの低下,
交感神経↑, プロスタグランジン↓, ADH↓ ⇒ GFRの低下
腎不全は3-7日後に起こる(無治療で)
腎障害のリスク
発症時のCr <1.7mg/dLではARFは来しにくい (Am J Emerg Med 2005;23:1-7)
Risk factors (Med Clin (Barc)1995;105:412-15)
>70歳, 初期UA >=6mg/dL, 非ケトン性高浸透圧性昏睡でRisk↑
薬剤, アルコール中毒, 外傷ではRisk上昇し,
筋疾患による横紋筋融解ではRiskは低い.
又, 原因が複数ある場合も高Riskとなる (NEJM 2009;361:62-72)
運動誘発性rhabdomyolysisではRiskは低い
CK < 5000IU/L ⇒ 8%がMyoglobin由来の腎障害(+)
CK > 5000IU/L ⇒ 19%が腎障害(+)
(J Trauma-Injury Infection and Crit Care 2004;56:1191-96)
スコアによる腎障害リスクの評価 (JAMA Intern Med. 2013;173(19):1821-1828)
詳しくはこちらを参照; 横紋筋融解症による腎障害のリスク
横紋筋融解症の診断
50%が無症状, 50%が筋肉痛, 脱力, 把握痛を訴える.
大腿, 下腿, 背部の訴えが多い.
診断的検査
CPK; 筋組織障害後2-12hrで上昇
1-3Dでピークとなり, 3-5Dで減少する
明確なCutoffは無いが, 一般的には5ULN(1000U/L)を使用
CPK > 5000IU/Lでは重症の筋障害を示唆
Myoglobin; 尿検査 ⇒ 血尿(+)でRBC(-) (Myoglobin or Hemoglobin)
尿沈渣 ⇒ 茶褐色(顆粒)のCast
Myoglobin尿は横紋筋融解症の診断に必須ではない
(Hydrationが良好で腎障害がない患者ではMyoglobin尿が認められないこともある)
乏尿の患者でもMyoglobinは減少する ⇒ 腎以外の排泄機序がある. 肝, 脾臓にて代謝を受けるため, 血中動態は予測困難
通常Crのピークよりも前にピークを迎え, 減少するため, 血中Myoglobin濃度測定の感度は低い. (NEJM 2009;361:62-72)
尿潜血(+), 尿沈渣RBC陰性 パターンは半数程度のみ
UCSFでのRetrospective study. (American Journal of Emergency Medicine 32 (2014) 260–262)
CPK>1000IU/Lで尚且つ24h以内にU/Aを行った患者において, 試験紙法で潜血陽性, 沈渣でRBC陰性(≤3 RBC) となる確率を評価.
急性発症のCPK>1000IU/Lは290例あり, その内228例で評価.
試験紙法陽性, 沈渣RBC陰性は,全体の41%のみ.
感度 41%[35-47]
CPK>10000IU/Lとなった66例で評価すると
それでも感度は55%[43-67]のみ.
沈渣RBC<10を陰性とすると,
感度は79%[73-83]まで上昇する
横紋筋融解症の治療
原因治療(薬物中止, 原因疾患の治療など)
対症療法; Hydration, Diureticなど
Hydration
脱水補正, 電解質補正, 腎障害予防効果
Vital, 尿量を見ながら補液を行う, 尿量のゴールは3ml/kg/hr
重度のRhabdomyolysisの場合, 輸液量10L/12-24hrが必要となる
尿のアルカリ化
Myoglobin ⇒ Ferrihemate(腎毒性あり)への代謝阻害
尿pH > 6.5(7.0がBetter), 血液pH 7.40-45に保つ
低Caを助長するとの考えもあり, Controversialである
高K血症による心停止の予防効果の報告もあり
電解質補正
高K血症は発症後12-36hrでピークとなる. ECGモニタリング.
(CK>60000-80000では4hr毎にKをCheck)
低Ca, 高Caに対する補正
利尿薬
脱水補正後に開始する
フロセミド; 尿の酸性化, 耳毒性もあり, Controversial
Mannitol; 細胞内液を細胞外へ, 筋組織の腫脹改善作用(+). 1g/kg 30minでIV もしくは 25g IV, その後 5g/hrで持注
腎血管の拡張作用もあり利尿のある患者ではGOOD
腎不全状態の患者への投与は逆効果となることもある
CK > 5000IU/Lにて, Mannnitol, Bicarbonate投与しても腎障害の出現率に有意差なし
(J Trauma-Injury Infection and Crit Care 2004;56:1191-96)
Acetazolamide(ダイアモックス)
メイロン投与後, 動脈血pH > 7.45でさらに尿をアルカリ化したい場合に用いることがある ⇒ No Evidence
透析療法
横紋筋融解症による腎不全の4%が必要とする
Volume↑, 心不全, Acidosis, 高K血症でどうしようもない時