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2014年3月30日日曜日

粘液水腫性昏睡 Myxedema coma

粘液水腫性昏睡 Myxedema coma
Am Fam Physician 2000;62:2485-90,
Endocrinol Metab Clin N Am 2006;35:687-98,
Top Emerg Med 2001;23(4):44–50

Myxedema comaはHypothyroidismの0.1%のみと稀だが, 
 死亡率は治療を行っても20%を超える
 治療無しでは80%に及ぶとされる.
 女性に多く, 男女比は1:5-10, 高齢者で多い傾向. >80%が60yr以上.

5%が甲状腺原発ではなく, 下垂体, 視床の異常によるものとされる.
 ⇒ THSが正常 ~ 低値である場合がある
 FT4は低いのは当然だが, この場合T3も低値(<25ng/mL)となる

Myxedema comaの身体所見
意識障害
心血管系; 徐脈.
 
早期ではdBP上昇.
 
晩期で低血圧,
低体温
脱毛症
Myxedematous face; 全体の腫脹.
 
巨大舌, 眼瞼下垂, 眼周囲浮腫,
 
粗く, まばらな毛髪
膀胱膨満, 緊張性の低下
腱反射の遅延
消化管; 蠕動運動低下,
 
腹部膨満, 麻痺性イレウス,
 
便秘, Myxedema megacolon
乾燥, 冷たい皮膚
Nonpitting edema
低換気



Myxedema Comaでは全患者が程度の差はあれ意識障害を来す
 昏睡~見当識障害, 認知機能障害など重いものから微細なものまで様々.
 精神症状もある. 痙攣は25%で認める

低体温も多く, 80%の患者がBT<35.5度となる.
血圧は初期ではdBP上昇を来すが, 晩期では低血圧となる.
徐脈, 心拍出量の低下はさらに低血圧を助長する.
頚部の手術痕は甲状腺切除後を示唆しているかもしれない.
Am Fam Physician 2000;62:2485-90, Endocrinol Metab Clin N Am 2006;35:687-98

Myxedema comaの検査所見
電解質異常;
 Free water clearanceの低下を認める ⇒ 低Na(Euvolemic hypoNa)
 (腎血流の低下, ADHの上昇が関与)
 低血糖も代謝の低下にて生じる. 副腎不全がさらに助長することもあり
CPK上昇;
 心機能低下, 徐脈, Shock, CPK上昇があると, AMIと間違えることもある.
 筋骨格筋由来であり, CK-MBは上昇しない.
血液ガス所見;
 通常呼吸性アシドーシスを来す.

23名のMyxedema comaの解析. (Critical Care 2008;12:R1)
 87%が女性例, 平均年齢は59.5±14.4yr[30-89], 
 65%が冬期に発症し, 74%で敗血症を合併していた.
 Primary hypothyroidが82%, Secondaryが17%.

各Lab所見; Cortisol欠乏(+)は7例で認められた
Na
134.2±10.4 mEq/L
118-160
T4 (Primary)
1.48±1.13 µg/dL

T4 (Secondary)
1.79±1.19 µg/dL

TSH (Primary)
68.9±41.5 µIU/mL

TSH (Secondary)
3.17±3.47 µIU/mL


検査値は死亡率に相関せず, 臨床的重症度(SOFA, APACHE II)が予後に相関する.
ちなみに, Total-T4の0.3%, Total-T3の0.03%がFree.

11名のMyxedema coma患者の解析 (Journal of Endocrinology 2004;180:347-50)
 平均年齢68.1±19.5yr[20-84]
 FT4の値は平均0.27~0.24 mmol/L [0.15-0.46](正常値 0.7-1.9 mmol/L)
 TSHは Primaryならば55.90~50.27 µIU/mL[28-153]
 (FT4の単位が一般的ではなく, おそらくは誤植と考えれるが, 正常値の範囲がng/dLと一致しており, 同等考えても良い)

Myxedema comaの治療
ICU管理とし, 挿管が必要となることは多い
脱水, 電解質異常の補正は重要.
心血管系のMonitoringは必須;
 AMIと病態が似ているため, 鑑別が重要.
 さらに, Thyroid hormone補充に伴うAMI発症にも注意する.
 昇圧剤, 強心剤は不整脈誘発Riskがあるため, 極力避ける.

欠乏しているThyroid hormoneの補充は必須
 T4 100-500mcgをIVし, その後75-100mcg iv/dを継続.
 経口摂取可能になれば切り替える. 国内ではIV製剤無し.

T4(チラーヂン®); Bioavailability 70-80%, T1/2 7d
T3(チロナミン®); Bioavailability 100%, T1/2 1d

Thyroid hormone投与について
Thyroid hormone大量投与によりAMIのRiskがある
 Risk-Benefitを考慮して投与すべき.
 しかしながら, Myxedema Comaの本質は非代償性の甲状腺機能低下であり, 投与することが推奨される. 投与無しでは良くならない.
 迅速に組織中のThyroid hormone濃度を高める方が利点が大きい.
 High Risk患者, 高齢者ではDoseを調節して投与する方が良い.

Thyroid hormoneはT4 or T3?
 T3の方が作用は早い.
 又、Myxedema comaではT4 ⇒ T3の代謝速度も遅くなっている. 
 おまけにT3はBBB通過性も良好.
 ただし, Studyも乏しく, 未だ一致した見解無し.
 Expert opinionでは, T4の単剤投与が推奨される.

T4の投与経路, 量は?
 国内にはT4(チラーヂン®)の内服製剤のみ.
 従ってNGチューブ留置し, 経腸管投与が必須.
 然し, Myxedema comaでは腸管運動も減弱しており, できればIVの方が良い.
 T4の初期投与量は300-600mcg(100-500mcg)とされる. 
 これは, 体内のT4貯蔵量が500mcgであり, 迅速に正常良まで増加させる目的.
 Loading Dose後は50-100mcg/dで維持可能. 
 Bioavailabilityは70-80%であり, 経管投与量は125-625mcgだが, 健常人のBioavailabilityであり, 実際の血行動態は不明.(低いことが予測される.)
 Expert opinionでは, 4mcg/kgの初期投与量を支持する意見もあり(継続投与量は100mcg/d)

T3を使用する場合
 初期投与量は10-20mcg,
 その後4hr毎に10mcg for 24hr  ⇒ 6hr毎に10mcg for 1-2d. T4が経口摂取可能となるまで.
 初期投与量10mcg ⇒ 8-12hr毎に10mcg投与を継続する方法もあり
 結局、維持療法はT4で行うため, 最初からT4を使用した方が良い.
 T4の吸収率がMyxedema Comaでさら悪化していることを考えると, 経口薬しかない日本国内ではT3の活用を考えても良いかもしれない.

その他の治療
抗生剤;
 非代償性となるTriggerとして感染症は多い原因.
 感染部位に応じた抗生剤投与は積極的に考慮すべき.
Steroids;
 続発性甲状腺機能低下, HypopituitarismのRiskがあるため, Hydrocortisoneは副腎不全が否定されるまでは続けるべきである.
 Hydrocortisone 50-100mg q6-8hrが推奨.
 ステロイド投与前にRandom Cortisol Testは必須.
 必要があればCRH刺激試験も考慮する.

まとめ
Myxedema Comaは知っていないと分からない. 知らないといけない病気

特に, 『高齢者』 『女性』 『意識障害』 『低体温』 『低Na血症』
 があれば, Myxedema ComaのCheckを忘れてはならない.

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