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2014年11月20日木曜日

心房細動に対する抗凝固薬(2014/11/20 Up Date)

心房細動に対する抗凝固薬の適応について
(ワーファリンや新規Xa阻害薬の比較については除く)

心房細動のリスク因子はこちら
心房細動と脳梗塞リスクについてはこちらを参照
心房細動 治療: Rate vs Rhythmコントロールはこちら
心房細動 治療: Rateコントロールについてはこちら
心房細動 治療: Rhythmコントロールいついてはこちら
心房細動と心不全はこちら

心房細動では脳梗塞のリスクや血栓症のリスクとなるため, 抗凝固療法が推奨される.
ただし, 抗凝固療法にも消化管出血や脳出血リスクがあるため, 血栓症リスク評価を行い, 適応を決める.

そのリスクを評価する方法として, よく使用されるのがCHADS2 scoreとCHA2DS2-VASc score.

CHADS2 scoreについて
Af患者13559名のCohort Study (51%がWarfarinを使用)(JAMA 2003;290:2685-92)
 Warfarin使用群と非使用群において, 血栓症リスクを評価
Outcome(%/yr)
Warfarin(+)
Warfarin(-)
RR
NNT(H)
脳梗塞
1.11%[0.94-1.31]
1.88%[1.65-2.14]
0.59[0.48-0.73]
130
他の塞栓症
0.05%[0.03-0.11]
0.15%[0.09-0.23]
0.37[0.16-0.89]
1000
頭蓋内出血
0.46%[0.35-0.59]
0.23%[0.16-0.34]
1.94[1.25-3.03]
435
GI出血
0.91%[0.76-1.09]
0.96%[0.80-1.15]
0.95[0.73-1.22]
その他出血
0.15%[0.09-0.23]
0.09%[0.05-0.16]
1.65[0.79-3.47]

Warfarin投与により, Strokeリスク軽減効果が期待できる因子を抽出すると以下の通りであった
(%/yr)
Wa(+)
Wa(-)
RR
NNT
脳梗塞既往
3.24%
7.40%
0.44[0.28-0.69]
24
DM
2.06%
3.56%
0.58[0.40-0.84]
67
HTN
1.59%
2.55%
0.62[0.49-0.79]
104
CHF
1.22%
3.54%
0.35[0.25-0.48]
43
CAD
1.57%
2.94%
0.53[0.39-0.74]
73
Age >=75yr
1.43%
3.22%
0.45[0.34-0.58]
56
上記全て(-)
0.21%
0.43%
0.49[0.14-1.74]
上記より, Stroke既往, DM, HTN, CHF, CAD, Age>75yr何れかがあればWarfarinによるStroke予防効果を認めている

逆に上記Factor全て(-) ⇒ WarfarinによるStroke予防効果(-)は無いと言える.
これらデータより, CHADS2 scoreが作成.
 血栓症, TIA既往歴 2pt
 慢性心不全 1pt
 高血圧 1pt
 75歳以上 1pt
 糖尿病 1pt
計6ptで評価. pt毎の脳梗塞リスクは以下の通りであった.
CHADS*
Wa(+)
Wa(-)
RR
NNT
0
0.25%
0.49%
0.50[0.20-1.28]
1
0.72%
1.52%
0.47[0.30-0.73]
125
2
1.27%
2.50%
0.51[0.35-0.75]
81
3
2.20%
5.27%
0.42[0.28-0.62]
33
4
2.35%
6.02%
0.39[0.20-0.75]
27
5-6
4.60%
6.88%
0.67[0.28-1.60]
CHADS2 score ≥1ptでWarfarinによるStroke予防効果が期待できる.
ただし, Warfarinにも出血リスクが伴い, それが大体年間0.5%と見積もられる.
その要素を考慮すると, CHADS2 1ptはグレーゾーン, 2pt以上で適応とされた.
近年出血リスクが少ないXa阻害薬が出現してからは1pt以上を適応とするガイドラインもある.

CHA2DS2-VASc score
CHADS2 scoreがでてから数年後, 2009年にさらに血管疾患, 年齢65-74歳, 性別を加えたCHA2DS2-VAScが提唱. 項目は以下の通り
Risk Factor
Score
CHF, LV dysfunction
1
Hypertension
1
Age>=75yr
2
Diabetes mellitus
1
Stroke/TIA/TE
2
Vascular disease
1
Age 65-74yr
1
Sex category(Female)
1
ちなみにCHFは拡張不全, 収縮不全どちらも含まれる
詳細はこちらを参照

Af患者 7329例で血栓症評価をしたところ, 以下の頻度であった
*ワーファリン投与中の患者群
Score
1yr間のTE rate
1yrTE rate*
0
0%[0-0]
0
1
0.6%[0.0-3.4]
0.46[0.10-1.34]
2
1.6%[0.3-4.7]
0.78[0.44-1.29]
3
3.9%[1.7-7.6]
1.16[0.79-1.64]
4
1.9%[0.5-4.9]
1.43[1.01-1.95]
5
3.2%[0.7-9.0]
2.42[1.75-3.26]
6
3.6%[0.4-12.3]
3.54[2.49-4.87]
7
8.0%[1.0-26.0]
3.44[1.94-5.62]
8
11.1%[0.3-48.3]
2.41[0.53-6.88]
9
100%[2.5-100]
5.47[0.91-27.0]
(Stroke 2010;41:2731-2738)

ワーファリン未投与のAf患者を対象としたCohort study BMJ 2011;342:d124
1997-2006年において, Warfarin非投与のAf患者73538名をフォロー.
(non-valvularr Af, CHADS
2, CHA2DS2-VAScと脳梗塞発症率を評価)
血栓症による入院, 死亡率(/100pt-yr)
CHADS2 1yr 5yr 10yr
0 1.67[1.47-1.89] 1.28[1.19-1.38] 1.24[1.16-1.33]
1 4.75[4.45-5.07] 3.70[3.55-3.86] 3.56[3.42-3.70]
2 7.34[6.88-7.82] 5.58[5.35-5.83] 5.40[5.18-5.63]
3 15.47[14.62-16.36] 10.29[9.87-10.73] 9.89[9.50-10.31]
4 21.55[20.03-23.18] 14.00[13.22-14.82] 13.70[12.95-14.48]
5 19.71[16.93-22.93] 12.98[11.52-14.63] 12.57[11.18-14.14]
6 22.36[14.58-34.30] 16.75[11.91-23.56] 17.17[12.33-23.92]
CHA2DS2-VASc 1yr 5yr 10yr
0 0.78[0.58-1.04] 0.69[0.59-0.81] 0.66[0.57-0.76]
1 2.01[1.70-2.36] 1.51[1.37-1.67] 1.45[1.32-1.58]
2 3.71[3.36-4.09] 3.01[2.83-3.20] 2.92[2.76-3.09]
3 5.92[5.53-6.34] 4.41[4.21-4.61] 4.28[4.10-4.47]
4 9.27[8.71-9.86] 6.69[6.41-6.99] 6.46[6.20-6.74]
5 15.26[14.35-16.24] 10.42[9.95-10.91] 9.97[9.53-10.43]
6 19.74[18.21-21.41] 12.85[12.07-13.69] 12.52[11.78-13.31]
7 21.50[18.75-24.64] 13.92[12.49-15.51] 13.96[12.57-15.51]
8 22.38[16.29-30.76] 14.07[10.80-18.33] 14.10[10.90-18.23]
9 23.64[10.62-52.61] 16.08[8.04-32.15] 15.89[7.95-31.78]
高齢者(>75y)での塞栓リスク
BAFTA trialでWarfarin(-)に割り付けられた665名のフォロー BMJ 2011;342:d3653

ちなみにWarfarin投与による出血リスクを評価するHAS-BLEDも紹介



Score 出血 /100pt-yr
H Hypertension; sBP>160mmHg 1 0 1.13
A Abnormal Renal/Liver function
(
透析, Cre≥2.3mg/dL)(肝硬変, bil>2ULN, AST/ALT3ULN)
1 or 2 1 1.02
S Stroke

2 1.88
B Bleeding (既往, 貧血)

3 3.74
L Labile INRs (INRコントロール不良)

4 8.74
E Elderly



D Drugs or alcohol (抗血小板薬, NSAIDなど) 1 or 2


Score ≥3-4で出血リスク↑↑. The American Journal of Medicine (2011) 124, 111-114

NSAIDの使用は出血リスクも塞栓リスクも上昇させる
150900例のAf患者のCohort study. Ann Intern Med. 2014;161:690-698.
 35.6%がNSAIDを併用.
 NSAID使用と出血, 塞栓症リスクの関連を評価.

14日以上のNSAID使用は重大な出血リスクを有意に上昇(NNH 40−100)
NSAIDは血栓症リスクも上昇させる. NNH 125-500と軽度ではあるが, NSAID使用は塞栓リスクとなる

薬剤別の出血リスクの評価, 塞栓リスクの評価
NSAID有無別のHAS-BLED, CHA2DS2-VAScスコアの出血, 血栓症リスク.
スコアによる出血や血栓リスクの評価にはNSAIDの使用の有無もいれてもいいのでは?
まぁAf患者へのNSAIDは止めましょう。


ここからが個人的な本題
Afによる血栓症リスクはPafでも慢性Afでも変わらないため, Paf患者でも上記抗凝固療法は推奨される.
そこで問題となるのが, いままでAfの既往が無い患者群が敗血症や周術期管理中にAfを発症してしまった場合どうするかということ.

この点に関してあまり明記されていない.

カルフォルニアのRetrospective study. 重症敗血症患者における新規Af出現の頻度, それによる脳梗塞のリスクを評価. JAMA. 2011;306(20):doi:10.1001/jama.2011.1615
 3144787名の入院患者の内, Severe Sepsisは49082名(1.56%[1.55-1.57]).
 平均年齢67y(16), 男性52%.
 Severe Sepsis患者における新規Af出現頻度は5.9%[5.7-6.1]
 (非Severe Sepsis群では0.65%[0.65-0.66], OR 6.82[6.54-7.11])
 Severe Sepsis患者の内, 新規Af出現群では, 院内Stroke発症率 2.6%[2.0-3.2].
 (元々Af既往ある群では0.57%[0.43-0.74], 新規Af(-)群では0.69[0.61-0.78], OR 2.70[2.05-3.57])

Severe Sepsis患者における新規発症Afでは約2.6%で院内Strokeを発症.
 その確率は, 以前よりAfを指摘されていたSevere Sepsis患者群よりも高値であり, やはり抗凝固療法を考慮すべき群と言える.

ただし, これは入院中のStroke合併率であり, 1年間以上をフォローしたものではない点に注意. 敗血症では当然過凝固状態となっていることが予測されるため, ICU管理中, 入院管理中はDVT予防もかねてUFHやLMWHを投与することが推奨される, という解釈に過ぎない.
 退院後に続けるべきかどうか, その後 継続的なPafとなるかどうか, Chronic Afとなるかは不明.

ICU患者での上室性不整脈と血栓症リスク
Prospective single center cohort.  Journal of Critical Care 29 (2014) 854–858
 ICU患者において 30秒以上持続する上室性不整脈の頻度と, 血栓症リスクを評価.
 心臓外科手術 術後患者は除外. 
846例中108例(12.8%)で上室性不整脈を認め, その内 12例(11%)で動脈性血栓症を併発.
 脳梗塞が5例, 腸間膜梗塞が2例, 四肢虚血2例, 心筋梗塞2例, 左心耳血栓形成 4例であった.
 上室性不整脈発症後 6日[3-13]で血栓症を発症.

 抗凝固療法は血栓症(+)の56%, (-)群の67%で施行されていた.

上室性不整脈群において, 血栓症(+) vs (-)群で比較すると, 血栓症のリスク因子となるのは
 Strokeの既往 OR 9.2[2.4-35]
 AFの既往 OR 7.6[1.1-50]
 CHADS2スコア OR 1.6[1.1-2.4]
 CHA2DS2-VAScスコア OR 1.4[1.04-1.8]
多変量解析ではStrokeの既往のみが有意. OR 9.2[2.4-35]

CHADS2 score, CHA2DS2-VASc scoreのCutoffと血栓症に対する感度, 特異度

重症患者での不整脈ではやはり通常のPafと別に考える必要があるか


周術期ではどうか?
Afの既往のない外科手術患者1729360例のRetrospective Cohort. JAMA. 2014;312(6):616-622
 上記のうち 24711例(1.43%[1.41-1.45])で周術期にAfを認めた
 退院後にStrokeを発症したのが13952例(0.81%[0.79-0.82])
 心臓外科, 非心臓外科手術別の周術期のAfとStrokeリスク

周術期のAfでもStrokeリスクとなり得る結果.

CHA2DS2VAScスコア別のStrokeリスク

スコアが上昇するとリスクも上昇するが, Stroke発症率自体は通常のAfと比較すると少ない.

周術期でのAf出現した症例でも確かに血栓症リスクにはなり得る.
ただし, CHA2DS2-VASc scoreの項で紹介したデータと比較すると明らかにLow-riskであり, 通常のAfと同じ様なWarfarin投与基準(Score ≥1~2pt)で良いかどうかは至極疑問.
少なくとも投与しない, もしくはHigh-risk群でのみ考慮するという選択もある と考えられる.
このStudyでの抗凝固療法の有無, 影響は不明.

同様に肺炎とか、急性疾患で入院した際に出現したPafにおいてもその群で評価が必要と考えられる. 背景を理解して, リスク-ベネフィットを十分考慮する必要があります.

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