Aliment Pharmacol Ther 2006;23:1525-34
J Clin Gastroenterol 2009;43:293-6
慢性非血性下痢, 腹痛, 悪心を呈する疾患
画像上, 血液検査上, 内視鏡検査では明らかな所見無し
大腸の生検にて異常を認め, 組織型に応じて
Collagenous Colitis
Lymphocytic Colitis に分類される.
近年, 中年~高齢患者の慢性下痢の原因として多く報告されており, 実は多い疾患の可能性がある.
CCもLCも発症様式は同じであり, 組織検査でしか鑑別は不可能
大腸癌との因果関係は認められていない
MCの頻度は8.6/100 000pt-yr (J Clin Gastroenterol 2009;43:293-6)
CCは5.5/100 000pt-yr, LC 3.1/100 000pt-yr
近年益々報告例が増加しており,
2002-2004年のCohortだと, MCは10.0/100 000pt-yr(CC 4.6, LC 5.4)
2002-2004年のCohortだと, MCは10.0/100 000pt-yr(CC 4.6, LC 5.4)
平均診断年齢は68yr[24-95], 加齢と共にRiskは増加する(>65yrでRR 5.6[4.0-7.7])
女性に多く, CC RR 3.44[2.07-5.97], LC RR 6.29[3.21-13.74]
ミネソタにおけるCohort study. (Gut 2007;56:504–508)
Microscopic colitisは年々頻度が増加(発見されるようになっている)
Lymphocytic colitisの方が多い.
A; Microscopic colitis
B; Collagenous colitis
C; Lymphocytic colitis
B; Collagenous colitis
C; Lymphocytic colitis
高齢者程高頻度となる. 女性の方が若干多いが, ≥80yでは性差はない.
Cohort studyにおける頻度のまとめ (Inflamm Bowel Dis 2013;19:2387–2393)
Microscopic colitisの原因
原因は不明な部分が多いが, HLAに関与するとの報告(LCの12%にIBDの家族歴あり)
HLA-DR3-DQ2との関連性も報告あり.
腸管自体の問題; 上皮内のT cell浸潤, 免疫異常など
感染症; MC患者では抗Saccharomyces cerevisiae抗体を有する率が高い
胆汁; 胆汁の再吸収障害が, CCの27-44%, LCの9-60%で認められる
自己免疫疾患; 甲状腺異常, Coeliac disease, DM, 関節炎の合併例が多い
一酸化窒素; 腸管上皮のNO濃度が高い?
臓器移植後; 腎, 膵臓, 肝移植後に合併する報告がある. 頻度は8.8/1000ptと高頻度.
(Aliment Pharmacol Ther 2006;23:1525-34)
薬剤; 様々な薬剤の報告がある(Aliment Pharmacol Ther 2005;22:277-84)
Risk | Drug |
High | Acarbose(グルコバイ), Aspirin(アスピリン), Lansoprazole(タケプロン), NSAIDs Ranitidine(ザンタック), Sertraline(ジェイゾロフト), Ticlopidine(パナルジン) |
Intermediate | Carbamazepine(テグレトール), Flutamide(オダイン), Lisinopril(ゼストリル) Modopar(マドパー), Oxetorone(ノーサートン), Paroxetine(パキシル) Simvastatin(リポバス) |
Low | Cimetidine(タガメット), 金製剤 |
Microscopic colitisの症状
症状, 発症形式 (MC 163名の解析) (Gut 1996;39:846-51)
突如発症; 42%, 緩徐発症; 58%
経過; 単一エピソードのみが2%, 慢性間欠性が85%, 慢性持続性が13%
症状;
症状 | 下痢回数 | ||
体重減少(6kg[3-20]) | 42% | =<3 | 12% |
腹痛 | 41% | 4-9 | 66% |
夜間下痢 | 27% | >=10 | 22% |
倦怠感 | 14% | ||
鼓腸 | 8% |
併存症詳細;
併存症 | 頻度 | 併存症 | 頻度 |
関節リウマチ | 10% | Sjogren’s Syn, Psoriasis, Raynaud’s disease 各 1.9% |
|
甲状腺疾患 | 8.6% | ||
Coeliac Disease | 8.0% | ||
喘息/アレルギー | 6.2% | リウマチ性多発筋痛症, ヘルペス皮膚炎, 変形性脊椎炎 各 1.2% |
|
糖尿病 | 5.5% | ||
慢性胃炎 | 2.5% | ||
Crohn’s Disease | 1.9% | Sarcoidosis, 脱毛症, SLE 各 0.6% |
|
潰瘍性大腸炎 | 0.6% |
Microscopic colitisの組織所見 Aliment Pharmacol Ther 2006;23:1525-34
CC; 上皮下のコラーゲン層の肥厚が特徴 (>=10mcm, 通常0-3mcm)
上皮, 粘膜固有層のリンパ球浸潤を伴う炎症も認める
LC; 上皮内のリンパ球浸潤 (>20IEL/100上皮細胞) (通常は<5IEL/100上皮細胞)
粘膜個有層の炎症所見が特徴
CCとLCは同じ疾患なのかどうか? (Aliment Pharmacol Ther 2012; 36: 79–90)
Collagenous colitisとLymphocytic colitisの特徴を比較したMeta-analysisでは両者は同じ様な背景, 病状を示す.
組織所見の比較;
上皮内リンパ球浸潤(IEL)はCCの45%で陽性であり, コラーゲンバンドはLCの16%で陽性.
組織的なオーバーラップがありそう.
症状の比較;
年齢や女性の占める割合, 症状, 薬剤使用状況, 自己免疫性疾患の合併率も双方で同じ様な分布.
MCの治療
治療薬として確立されているものはない.
目標は症状の寛解維持とQOLの向上.
目標は症状の寛解維持とQOLの向上.
まず行うことは薬剤性の評価と食生活の評価.
食生活ではカフェインの過多やアルコール, 下痢の原因となるものを評価
食生活ではカフェインの過多やアルコール, 下痢の原因となるものを評価
また禁煙指導も重要となる
止痢薬: Loperamide(ロペミン®), Cholestyramine(クエストラン®)
RCTはないが, 軽症のMCでは第一選択となる.
対症療法であり, 組織的な改善にはつながらない. 中止で症状は増悪する.
対症療法であり, 組織的な改善にはつながらない. 中止で症状は増悪する.
Budesonide; ステロイド剤, 国内は吸入薬のみ
現時点では最も信頼のおける薬剤
症状, QOLの改善効果がPlacebo-controled RCTにて証明
(Gastroenterology 2002;122:20-5, 2002;123:978-84)(Gut 2003;52:248-51)
(Gastroenterology 2002;122:20-5, 2002;123:978-84)(Gut 2003;52:248-51)
臨床的反応 OR 12.32[5.53-27.46]
臨床的反応の維持 OR 8.82[3.19-24.37], NNT 2
(Am J Gastroenterol 2009;104:235-41)
臨床的反応の維持 OR 8.82[3.19-24.37], NNT 2
(Am J Gastroenterol 2009;104:235-41)
投薬終了にて2wk程度で再発を認める. Taperingの重要性が指摘
Annals of Gastroenterology (2011) 24, 253-262
Bismuth subsalicylate; サリチル酸ビスマス(整腸剤)
小規模Studyで効果は見込める結果(N=14). ただし副作用多い薬剤
小規模Studyで効果は見込める結果(N=14). ただし副作用多い薬剤
Prednisolone; Budesonideよりも効果は劣り, 副作用は多いため,
あまり使用されてはいない. Studyも皆無.
あまり使用されてはいない. Studyも皆無.
Probiotics; 小規模RCTでは効果は認めなかった(N=29)
Aminosalicylate: Sulfasalazine, Mesalazine:
64例のMC症例をMesalazine 2.4g/d vs Mesalazine + Cholestyramine 4g/dに割り付け比較したStudyでは, 両群とも6ヶ月後には85%, 91%で寛解を認めた. (J Gastroenterol Hepatol 2007;22:809-814)
MC患者 92例(下痢≥4/d)を対象としたDB−RCT. Gastroenterology 2014;146:1222–1230
Budesonide 9mg/d群 vs Mesalamine 3g/d群 vs Placeboに割り付け, 8wk継続
臨床的寛解(排便回数≤3回/d)達成率を比較.
臨床的寛解(排便回数≤3回/d)達成率を比較.
8wk時点で寛解となればその後Drug−freeで16wkフォロー.
アウトカム:
8wk時点での寛解はBudesonideで良好であるがMesalamineとPlaceboは有意差なし.
MCの治療アルゴリズム Clinical and Experimental Gastroenterology 2014:7 273–284
MCの予後
10yrのフォローにて, 23.4%で慢性下痢が持続.
20%でいったんは寛解認められたが, 再度下痢が出現している.