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2014年10月9日木曜日

低体温症 Hypothermia

低体温症 Hypothermia

体温< 35度で定義される
 32-35度: Mild
 28-32度: Moderate → ShiveringがStop (自己復温不可)
 < 28度: Severe → VFのリスクがUP (致死的)
成人生存者の最高記録は直腸温13.7度, 小児で15度, 治療的低体温では9度という記録がある.

体温低下の4つの環境因子
 Conduction(伝導), Convection(対流) 10%
 Radiation(放散) 60%
 Evaporation(蒸散) 25-30% の熱発散に関わる

上記因子と、患者の内因性要素が発症に関与

体温調節の仕組み
中枢は視床下部
 寒冷への暴露によりMuscle tone上昇 → 熱産生2倍
 Shivering → 熱産生5倍まで上昇

直腸温< 32度となると, 熱産生能が低下
 中枢抑制, 熱産生能の限界を突破するため
ちなみに直腸温は15cm以上挿入して測定すべきとされる.
N Engl J Med 2012;367:1930-8.

低体温の原因
都会での低体温患者114名中, 47.9%に重大な背景疾患を認めた (Ann Emerg Med 1980;9:456-61)
 寒冷からの退避×; 寝たきり, 意識低下など
 熱産生の低下
  薬物: β Blocker, 鎮静剤, 筋弛緩
  内分泌: 下垂体機能低下, 甲状腺機能低下, 副腎低下, 低血糖
  低栄養, 高齢者, 乳児, 敗血症, Shock
 熱放散の上昇
  体表面積が広い: 乳児、小児
  末梢血管拡張:アルコール, 薬剤, 熱傷, 
  皮膚疾患
 体温調節障害
  神経障害; DM, 末梢神経障害, Stroke, 脊髄損傷, Wernicke脳症, Parkinson’s Disease
 循環不全
  脱水, Shock, DM, 喫煙など
 薬剤
  Barbiturate, Phenothiazine, Benzodiazepine, Opioid, Neuroleptics, TCA, Beta-blocker, エタノール

体温と症状
直腸温 症状 Passive
External
Active
External
Active
Internal
Mild 35 Shivering(+) 
熱産生は最大となる
全身の復温

34 強い悪寒(+)
健忘, 構音障害, 見当識障害軽度
徐脈, 頻脈あり. 血圧正常
33 意識混迷
運動失調, 無気力感(+)
Shivering
低下し, 頻呼吸に
体幹のみの
復温
Moderate 32 意識低下, 昏迷
Shivering消失, 瞳孔散大
31 熱産生ほぼ停止
末梢血管収縮強く, 血圧測定困難
30 筋硬直増強, 意識消失
Af,
不整脈Risk上昇
29 徐脈, 呼吸回数低下
瞳孔散大

直腸温 症状 Passive
External
Active
External


体幹のみ
Active
Internal
Severe 28 VF risk↑, 刺激によりVF誘発
27 意識消失, 自発的体動消失
26 DTR, 対抗反射消失
25 刺激なくてもVF発症する
24 肺水腫, 重度低血圧, 徐脈
23 VF risk
角膜反射消失
22 O2消費 <25%
21 VF電位低下
20 Fine VF
22-28℃では刺激によりVFになり得るため, 注意
28.8±2.5度の患者をICU管理 ⇒ 38%が死亡
 しかし, VT,VFによるものは0例であった
(Chest 2001;120:1998-2003)
<28.0度の46/234が心停止, その内15名が蘇生した (NEJM 1997;337:1500-5)

低体温の各臓器への影響
腎臓への影響
 初期には末梢血管収縮による腎血流の増加とADH分泌の低下が生じる
  → Cold-induced diuresisと呼ばれる利尿がおこる
  → Volume低下, 急性腎不全,
低K血症を来たす
 28-30度では腎血流は50%まで低下する
 直腸温が1度低下する毎にHt2%上昇すると言われている
 他は, カテコラミン↑に由来する所見(高血糖など)

 Cr, BUNは腎機能を反映しなくなる (正常でも実際は腎不全ということになる)

心血管系
 低体温初期はBP, HR, COは上昇
 28度になると50%の患者で徐脈を来たす
 Pacemaker細胞の機能低下が原因であり, アトロピンは通常効果が無い
 心筋は易刺激性となり, AfがVFに発展しやすくなる
 CV留置時はカテ尖端が心臓に接しないように浅めにおく.
 32度を下回るとOsborn waveが認められるようになる
 ECG初期変化としてはPQ, QRS, QTの延長
参考: 直腸温26度時のECG


中枢神経
 代謝低下に伴い脳血流は低下
 初期では運動障害; 協調運動, 構音障害, 見当識障害, 認知障害, 意識レベルの低下を来たす
 体温中枢が麻痺すると, 寒いのに暑さを感じて服を脱ぐような行為も生じる(Paradoxical undressing)

低体温の分類と対応のアルゴリズム N Engl J Med 2012;367:1930-8.
脈が触れるかどうか
意識があるかどうか
バイタルサインが不安定かどうかで判断.
 意識があれば HT I
 意識が無く, ショックバイタル, BT<28度ならばHT II, III
 脈が触れない場合はCPRを開始するが, 不可逆的な要素, 気道閉塞, 長時間の心停止が予測される場合は蘇生は中止. それが無い場合はHT IVとし, 体外循環を用いた迅速な復温が求められる.

低体温のStageと復温方法の選択 N Engl J Med 2012;367:1930-8.

復温の総論
復温には大きく分けて3つ
 Passive rewarming
 Active external rewarming
 Active internal rewarming
 各々の適応は前の体温との対応表を参照
 重症低体温では, 出来るだけの方法を併用し, 出来るだけ早急に暖める必要がある

 状態が安定していれば侵襲の少ないものから始めてゆく

Passive external rewarming (Mild例, HT I以上に適応)
 外気温を高め, 濡れた衣服, 水分を除去する
 ブランケットを用いて復温
 復温は0.25-0.5度/hr程度でSlow
 全例に適応される

Active external rewarming (Moderate, HT II,III以上)
 ヒーター, お湯にて強制的に復温
 ホットパック(43-46度に加温した輸液パック) → ①腋窩, 頚動脈, 鼠径部, ②腹部, ③胸部 に置く (低温熱傷が生じるため, ホットパックは直接皮膚に乗せないこと)
 加温輸液, 加温酸素も使用
 輸液; 42-44度に電子レンジで加温, 150-200mL/hrで開始尿量を0.5-1mL/kg/hrに維持する程度
 加温酸素; 42-46度に暖める40度の酸素で1-1.5度/hr, 45度で1.5-2度/hrの復温が可能
 Forced-air warming blanket; 1-3度/hrの復温を見込める

ちなみに, 
 500W程度の電子レンジにて, 500mlのNS, 乳酸リンゲルを加熱すると,
 1:00 34.2℃ 
 1:20 39.8℃ → 外傷,Shockで使用
 1:40 43.8℃ 低体温 で使用 となる.
 また、ホットパックは氷嚢袋に熱湯 + 水道水で即席で作ってもOK(漏れるとの報告もありますが )

Afterdropについて
 全身を暖めると末梢血管拡張し, 冷えた血液の流入, 熱放散拡大が生じ, 復温後に体温が低下する可能性がある. これを“Afterdrop”と呼ぶ
 Afterdropを避けるために, Moderate, Severeでは体幹部のみActive external rewarmingを行なうことが勧められるが, 実際に生じるかどうかは不明.
 Afterdrop acidosisも体幹のみだと少なくなる

Active Internal rewarming (Severe例, HT III,IV)
 温水による胃洗浄; 挿管必須. 電解質異常のリスクとなる
 温水による注腸; 直腸温モニタリングが困難になる欠点あり. 1L流し込んでは吸引
 温水による膀胱灌流; 尿量測定が困難になる欠点あり.
 温水による腹膜灌流; 手技が特殊、装置も特殊. 43度のKCl-freeの輸液を使用. 2L流し込み, その後吸引する. 迅速で、慣れれば簡便であり、良く使用される治療
 体外循環装置による加温. 心停止患者においては最も効果的といえる (循環, 酸素化も補助). 5分で1-1.8度の復温が可能

復温方法と効率 N Engl J Med 2012;367:1930-8.

復温後の管理
 直腸温 > 35度を目標とし, 達成すれば復温中止
 45-60min以上低体温となっていた場合血管拡張に伴うHypovolemiaとなりやすい → Vital signsを評価しVolume負荷が必要となる
 復温に伴う高K血症にも注意する. Crush syndromeに起因するもの, 起因しないものがある
 モニタリングをしっかりと
 低体温の背景にある病態を評価, 対応する. 原因の項参照, 低体温を直すだけが治療ではない

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