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2014年10月6日月曜日

尿路結石: 治療

尿路結石について: 治療
(診断についてはこちらを参照)

発作時は先ず鎮痛を
NSAIDとOpioidはどちらが良いか?
 Pain Scale(100mm)での評価では, NSAIDの方が改善効果が高い(WMD 4.60mm[1.70-7.50] )
 疼痛緩和失敗もNSIADで少ない”可能性” RR 0.87[0.74-1.03]
 NSAIDでは2回目の鎮痛薬投与の必要性も少ない RR 0.75[0.61-0.93]
 副作用としての嘔吐はNSIADで有意に少ない RR 0.35[0.23-0.53]
(BMJ 2004;328:1401-8)

輸液をガンガンやる意味はなし
 排石を早めることにはならない, 結石予防にはなる

アセトアミノフェンとモルヒネの効果は同等
 Renal colic(+)でEDを受診した患者165名を Acetaminophen 1000mg IV, Morphine 0.1mg/kg, Placeboに割り付け30min後の疼痛レベルを評価 (RCT, DB, 追跡88%) (Ann Emerg Med 2009;54:568-74)
Outcome
Acetaminophen
Morphine
Placebo
VAS
Baseline
73[55-87]
78[64-98]
73[53-87]
(0-100)
15min
21.5[9-38]
40[20-68]
57[29-57]

30min
19[5-42]
23[4-59]
33[15-66]
ΔVAS
Base-15min
44.5[23-66]
30[7-51]
11[-3~29]

Base-30min
41.5[24-63]
43[7-73]
24[5-45]
 15min時点ではΔVASはAcetaminophenのほうが良好(13[0.1-25])
 30min時点では両者に有意差なし(2[-13~16)
 1つ以上の副作用を認めたのはMorphineで33%, Acetaminphenで24%, Placeboで16%.
 多いのは悪心嘔吐, 非特異的症状であった.

これらから鎮痛に用いるのはNSAIDが最適. アセトアミノフェンも迅速な効果は が期待できる可能性が高いということ.

結石の大きさ, 位置と排石の確率
無症候性尿管結石 107名の経過 J Urol 1992;147:319-21
 32Mフォローにて, 32%, 5Yで50%が有症状へ移行
 結石Size, 位置と排石率
結石Size
上部尿管
中部尿管
下部尿管
> 5 mm
0%
0%
25%
5 mm
57%
20%
45%
< 5 mm
53%
38%
74%
>5mmの結石は自然排石を期待できない ⇒ 専門医コンサルト(外来受診)は必須
また, 2wk経過しても排石を認めない場合もコンサルトが必要.

投薬治療による排石のエビデンス Ann Emerg Med. 2007;50:552-63 (α-Antagonist, CCBのMeta)
排石を促進させる薬剤にはα阻害薬とCaチャネル阻害薬の報告がある.

α‐Antagonist (Tamsulosin; ハルナール®)
 結石Φ >5mm[3-18], 部位は下部尿管の場合, 
 RR 1.59[1.44-1.75], NNT 3.3[2.1-4.5]で排石促進効果が期待できる
 Controlに比べて2-6日の排石短縮期間
 平均 <14日で排石を認めている(2.7-14.2D)
 副作用は4%, 脱落したのは0.2%
 副作用; ふらつき, 頭痛, 嘔気, 嘔吐, 無力症, 一過性低血圧

Tamsulosinが効果的との理由としては, 下部尿管にはα1A, α1D受容体が存在するからとされる(Tamsulosinはα1A, α1D阻害作用を示す)
Ca-channel Blocker (Nifedipine; アダラート®)
 結石Φ >5mm, 部位は下部尿管が最多, 一部 中部, 上部尿管の場合,
 RR 1.50[1.34-1.68], NNT 3.9[3.2-4.6]で排石促進効果が期待できる.
 平均排石期間は < 28日(5-20D)
 副作用は15.2%, 脱落したのは2.9%
 副作用; 嘔気, 嘔吐, 無力症, 胸やけ, 頭痛, 嗜眠, 多幸感, 低血圧

副作用の観点から, Tamslosinを用いることが多い(女性では保険の問題があるので注意)が,
最近のRCTではTamslosinの効果を否定的な結果がでている.

下部尿管結石77名に対するTamsulosinのRCT
 結石のSizeは3.6mm[3.4-3.9], Tamsulosin 10日間 vs Placeboで比較 (Ann Emerg Med 2009;54:432-9)
 14日目の時点で結石排泄できていたのは77.1% vs 64.9% (AD 12%[-8.4%~32.8])と, 有意差無し
 他, 落石までの期間, 疼痛期間も両者で有意差無し.

2-7mmの下部尿路結石でERを受診した129名のDB−RCT, multicenter. Arch Intern Med 2010;170:2021-7
Tamsulosin 0.4mg/d vs Placeboに割り付け, 42日間 or 結石が排泄されるまでフォロー.
 結石径は平均2.9-3.2mm
 42日目における自然排石率は, 77.0% vs 70.5% (p=0.41)と有意差無し.
 結石の大きさ別, 男女別, 投与開始〜の期間別で比較しても有意差無し.

Placebo群での排石速度を見てみると,
 2-3mmの結石ならば1週間で半数が自然排石されている.
 4-7mmでは1週間で2-4割, 2週間で半数が自然に排石される.
 また, 女性の方が排石率が高い.

水分摂取による結石の予防
 水分摂取量 > 2538ml/day  vs  < 1275ml/dayで結石再発率は前者で有意に低い RR 0.65[0.51-0.84] 
 理由は不明であるが, リンゴジュース, グレープフルーツジュースは結石リスクを上昇させる可能性がある(RR 1.35[1.04-1.75], RR 1.37[1.01-1.85])
 コーヒー, アルコール摂取は水よりRiskを軽減する (Am J Epidemiol 1996;143:240-7 )
種類
RR
Coffee; Caffeinあり
0.90[0.85-0.96]
Coffee; Caffeinなし
0.90[0.84-0.97]
Tea
0.86[0.78-0.95]
Beer
0.79[0.70-0.88]
Wine
0.61[0.45-0.90]
Liquor
0.72[0.39-1.33]

 >2000ml/dayの水分摂取にて再発Riskは低下, 再発までの期間の延長がある(J Urol 1996;155:839-43)

カルシウム制限は意味無し. シュウ酸摂取を下げたが方が予防の意義はある
 再発性尿管結石(シュウ酸Ca) + 高Ca尿の男性120名
 Normal Ca + 動物性タンパク制限(52g/d) + 塩分制限(50mmol) vs Ca制限食(10mmol/d)に割り付け比較. NEJM 2002;346:77-84
 結石再発 RR 0.49[0.24-0.98]
 尿中Ca濃度は両者で変化なし
 尿中Oxalate(シュウ酸)は前者で有意に低値となる
Ca Intakeを減らすだけでは尿中Caは低下しない. (bone lossが進むだけ)
尿中Caを下げるより, シュウ酸を下げた方が効果的

また, ビタミンCのサプリメントの使用は尿路結石のリスクを2倍にする (Arch Intern Med 2013;173:386-7)

結石予防のRevewからまとめ Ann Intern Med. 2013;158:535-543.
飲水による結石予防効果はLow-strength evidenceだが,有意差を認める (RR 0.45[0.24-0.84])
ソフトドリンク摂取を減らすのも効果的かもしれない(RR 0.83[0.71-0.98])

薬物療法では, サイアザイド, Citrate, アロプリノールが予防効果を示す.
ただし, アロプリノールは尿酸結石のみ.