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2014年2月21日金曜日

WDHA症候群, VIPomaのReview

WDHA syndrome; Watery Diarrhea, Hypokalemia, Achlorhydria
Southern Medical Journal 1995;88:22-24

主にVIP(Vasoactive intestinal polypeptide)と呼ばれるホルモンが原因となり, 水様性の下痢を多量に認め,  脱水症と低K血症を呈する病態.
 無胃酸症は常に伴うわけではなく,  Watery diarrhea syndromeとも呼ばれる
 VIPは血管拡張, ヒスタミン由来の胃酸分泌の抑制作用, 小腸蠕動の亢進, 小腸, 膵臓, 胆汁分泌の促進作用を示し, 糖新生を亢進させることで50%に高血糖も合併する.
 WDHAは主にVIPによる症状であり, そのVIPは腫瘍から分泌されることが殆ど.

米国のCohortではVIPomaの頻度は成人例で0.05-0.2/100万と非常に稀.
神経内分泌腫瘍(NET)もSwedenのCohortでは10万人に1名の稀な腫瘍である.
Singapore Med J 2010; 51(7): e129-e132

中国における31例のLiterature reviewでは
男性15例, 女性16例. 平均年齢 49.6歳[2-70]

腫瘍部位

膵臓
27(87.1%)
膵頭部
6
膵体部
2
膵尾部
15
膵鈎部
1
膵頸部
3
後腹膜神経節
4
肝転移(+)
9(29.0%)

症状

水様下痢
29(93.5%)
K血症
28(93.5%)
弛緩性麻痺
25(80.6%)
顔面紅潮
7(22.6%)
皮疹
1(3.2%)
悪心
1(3.2%)
無胃酸症
4/7

VIPは16例で測定され, 1003.4 pg/mL[82.1-2600pg/mL]であった.
Pancreas 2012;41:806-7

WDHA syndromeでは絶食時も改善しない分泌性の下痢.
 胆汁, 膵液, 腸液の分泌が亢進し, 腸粘膜からのCl分泌も亢進.
 1日に3Lもの体液喪失を認め, 致命的な脱水症となることもある
 低Kは下痢に伴うものと, 脱水症からのR-A-A系の亢進によるK喪失の機序がある. 1日あたり300mEqものKを喪失することも.
 VIPによる胃酸分泌抑制作用は比較的弱く, 無胃酸症は稀だが, 低胃酸は70%で認める.
 VIPomaでは他のペプチドホルモンの分泌が合併することが多くその作用で胃酸を抑制することも多い.

WDHA 他の症状
 VIPによる血管拡張作用でフラッシュを生じるのが20%. Tachyphylaxisによりフラッシュを生じるのは病初期のみ.
 VIPはMEN Iの1つとして生じることが稀ながらあり, その場合下垂体腫瘍, 副甲状腺過形成を伴う.
 高Ca血症をWDHAで認めることがあるが, これはMEN Iに伴うものと, VIP自体に骨代謝を促進させる作用があるため.

WDHA syndromeの診断
WDHA syndromeの経過は緩徐進行で, 診断まで数年かかることが多い.
大半の症例で48-72hの絶食でも下痢の量は3Lを上回る
 1日あたりの下痢が700ml未満であればWDHA syndromeは否定的
 下痢は分泌性となる(便中Na + Kの2倍が血清浸透圧と同等)

VIPの測定も診断に有用であるが, 以下の疾患でVIP高値となるため注意
 VIP分泌腫瘍
 炎症性腸疾患
 慢性腎不全
 長期間の絶食
 小腸切除後

 VIPを産生する腫瘍
 非β膵細胞腫瘍
 Ganglioneuroblastoma 
 褐色細胞腫
 肺, 胃の扁平上皮癌
 皮膚肥満細胞種 (Cutaneous mast cell tumors)

小児例ではVIPomaの2/3がGanglioneuroblastoma. 
成人例では7-8割が膵腺腫だが, Microadenomaで画像上検出できないことも多い.
 膵Islet cell tumorの10%未満がVIPoma (Singapore Med J 2010; 51(7): e129-e132)
588例の下痢患者でVIPを測定したところ, 23例でVIP高値
 その内10例で膵臓Islet cell carcinomaであった.

VIPoma以外で下痢症を来す内分泌疾患
Gastroenterol Clin N Am 41 (2012) 603–610
分泌性の下痢を来す物質一覧;

Malignant Carcinoid Syndrome; 悪性カルチノイド症候群
 カルチノイドは未だに使用される言葉だが, Neuroendocrine tumorに分類される.
 カルチノイドは胃小腸に主に認められる腫瘍だが, それが肝転移をおこすと “悪性” と表現される.
 Serotonin, substance P, tachykinine (neurokinin A, neruropeptide K)を分泌し, フラッシュ, 腸管分泌促進, 腸管蠕動促進, 気管攣縮, 右側の心内膜線維化を来す.

カルチノイドの診断には24h蓄尿5-HIAAが重要
 5-HIAA; 5-hydroxyindoleacetic acid. 多発性の肝転移がある場合は70-250mg程度となる
 Neuroendocrine tumor全体で言えば,血中Chromogranin Aは予後を予測するマーカーとなり得る

Zollinger-Ellison syndrome; 詳しくは別スライド
 10%が初期症状で水様性下痢を呈する
 ZESの経過全体では下痢は50-60%で認められる.
 ZESでの下痢は分泌性下痢ではなく, 胃液が大量に分泌され, 小腸での吸収能を超える事で生じる
 下痢の量は1L/dを超える
胃液の分泌量は500ml/h (12L/d)となり
 小腸を11L/d流れ, 最終的に1L/dの下痢となる. 絶食時は395g/d程度の下痢量となる
 下痢はPPIで改善する

Medullary Carcinoma of the Thyroid; 甲状腺髄様癌
 30%で下痢を認め, 甲状腺腫大を来す前に下痢が先行する. 
 血中Calcitoninが高値となり, Calcitoninは小腸での腸液分泌を亢進させ, 吸収を低下させる
 蠕動を促進させ, 排泄を高めるのも下痢の原因の1つとなる.
 MEN 2,3との関連あり.

Somatostatinoma syndrome; ソマトスタチン症候群
 Somatostatinomaは4000万人に1名という稀な腫瘍.
 ソマトスタチンは消化管の殆どの機能を抑制する
 膵液分泌を障害し, 脂肪性の下痢を来すのが下痢の理由.
 一部ではCalcitoninの分泌を合併する例もある.

Systemic mastocytosis 
 肥満細胞からのヒスタミン遊離が胃液分泌を亢進, 腸液分泌を亢進させ, 下痢が生じる.
 一部で脂肪便を伴う例もあり.
 下痢やフラッシュは発作性である事が多い

他の内分泌疾患による下痢症
 甲状腺機能亢進症; 10-40%で下痢を伴う
 Pancreatic polypeptide(PP)を産生する腫瘍
 Glucagonoma症候群の1/5で下痢を合併する
 Secretinoma等

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