上記のリンクにも記載しているが,
症状に関わらず, 高齢者の10-20%にビタミンB12, 葉酸欠乏が認められる
Am J Clin Nutr 2003;77:1241-7
Vit B12欠乏患者の40%で神経障害を合併する
Vit B12欠乏性神経障害の20%, 葉酸欠乏の25%が貧血(-)
逆に巨赤芽球貧血患者の1/3で神経障害(-)
末梢神経障害, 認知障害など様々な神経障害を呈する
神経障害
|
Vit B12欠乏
|
葉酸欠乏
|
正常
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32%
|
35%
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認知障害
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26%
|
27%
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情動障害
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20%
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56%
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亜急性連合変性症
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16%
|
0%
|
末梢神経障害
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40%
|
18%
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視神経萎縮
|
2%
|
0%
|
Lancet Neurol 2006;5:949-60
Vit B12欠乏は認知障害にも関連し, 貧血を伴わず神経症状のみ来す例も多い.
高齢者のVit B12欠乏と認知機能の増悪, 認知症との関連を評価したStudyをいくつかみてみると,
≥65歳の2741例のCohort study. Am J Clin Nutr 2007;86:1384–91.
上記のうち1648例で血液検査と, MMSEを10年間フォロー.
認知機能低下とVit B12, 葉酸の関連を評価.
MMSEの分布とフォローによる変化は以下の通り.
極度にMMSEが低下する患者もいれば, 維持される患者もいる.
ビタミンB12動態に関連するパラメータとMMSE低下リスク
VitB12や葉酸値のみで評価した場合は認知機能の変動への関連は無いが,
ホモシステイン(Hcy), メチルマロン酸(MMA)の上昇 (= Vit B12欠乏)は有意に認知機能増悪との関連性を認めるという結果.
Chicago Health and Aging Projectより516例をランダムに抽出し, 血中Vit B12, tHcy, MMAを評価. Neurology® 2009;72:361–367
6年間フォローし, Vit B12欠乏と認知障害の進行を評価
probable Vit B12欠乏は14.2%
Hcy上昇例は19.2%
MMA上昇例は36.4%認められた.
Hcy上昇例は19.2%
MMA上昇例は36.4%認められた.
Vit B12欠乏と非欠乏例の比較
欠乏例の方がより高齢者が多い.
貧血の合併は双方とも2割程度のみ
初期の認知機能は同等
各パラメータと認知機能の変化への関連.
Vit B12値が低い程, Hcy, MMAが高い程 認知機能は低下傾向であった.
Vit B12と認知機能を評価した2011年までのProspective cohortをまとめたSystematic review British Journal of Nutrition (2012), 108, 1948–1961
35 trials, N=14325例の評価.
Vit B12欠乏の診断はVit B12値のみで判断したStudyが31 trials,
MMA, HoloTCで判断したStudyが4 trials
Vit B12のCutoffは110-251 pmol/L
認知症(-)患者群でのVit B12と認知症進行の関連
6 trialsが上記を評価しており, 内2つがVit B12欠乏と認知障害進行に関連性を認め, 4つが平均5.1年間のフォローにて関連性無しとの結論.
認知障害の有無を問わない母集団での評価
11 trials中, 4 trialsで認知障害への関連ありと評価.
Vit B12値と認知障害進行への関連性は認めないが, HoloTC, MMA高値との関連性は認められた報告もあり.
全体的には, Vit B12値による欠乏の評価と認知障害進行には関連性は乏しいと判断される.
しかしながら, MMA, HoloTCによる欠乏の評価と認知障害進行への関連性は認められるという結果(4 trials)
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大球性貧血が無い場合も, 高齢者のスクリーニングとしてVit B12欠乏を評価しておく意義はあるのかもしれない.
特に徐々に認知障害がでてきている例ではチェックは必要であろう.
チェックする場合はVit B12の値や葉酸値での評価ではなく, ホモシステイン, メチルマロン酸を評価することが重要. ただし, 国内ではメチルマロン酸は評価できない.
ホモシステインは評価できるが, 結果が出るまで2週間近くかかることもしばしば.
そして補充により高齢者の認知機能が維持される, 改善させるというEvidenceは未だない
(*そのStudy自体がまだ無いので補充を否定するものではありません. むしろ安価で副作用も少ないので補充は良いのではないかとも思います.)