直接クームス試験(Direct antiglobulin test; DAT)とは
患者の洗浄RBCと抗グロブリン血清を作用させ, 凝集を診る検査
患者のRBCにIgG, C3が結合している場合に凝集するため, 直接クームス陽性ならばAIHAと言える.
主にIgGとC3を含む血清を用いるため, 抗体量が少ない場合, IgM, IgAが原因の場合は偽陰性となる
陽性となれば温度による反応の差, 特異的なIgG, C3抗体を用いて更にチェックしてゆく.
IgG, C3抗体との反応性による鑑別;
IgG
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C3
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+
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-
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特発性, αメチルドパ型
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+
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+
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特発性, SLE
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-
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+
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特発性, Cold AIHA
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間接クームス試験とは
患者の血漿と健常人のRBCを用いて凝集を確認する検査
RBCに結合した抗体が血漿に再遊離するかどうかをチェック
Cold AIHAではIgMを介してC3がRBCに結合するが, 復温にてIgMは遊離するため, 間接クームスは陽性に. (C3に対する直接クームスは陽性となる)
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Am. J. Hematol. 88:93–96, 2013.
直接クームス(DAT)陽性ならばAIHAと言ってもよいが,
DATが陰性となるAIHAも1-10%程度あり, 陰性だからといって除外ができない
このDAT陽性AIHAと陰性AIHAでなにか違いがあるのか?
DAT陽性 AIHA 154例とDAT陰性 AIHA 62例を比較したStudy
DAT陰性AIHAは臨床的に判断し, 診断
この2つの大きな違いはRBC-IgG(RBCに結合しているIgG)量.
DAT陰性例では著明にRBC-IgGが低値となる.
それ以外は軽微な差はあれ, あまり大きなものはない.
臨床経過はどうか?
1年生存率, 治療内容は両者でほぼ同等と言える.
PrimaryとSecondary AIHA別で評価しても両者の差は無し.
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と, いうことでDAT陽性, 陰性AIHAはRBC結合抗体量のみの差であり,
あまり臨床的な経過, 治療には影響しない可能性がある.
AIHAの診断においては直接クームスが基本だが, 陰性例においてはRBC-IgGが有用な可能性があり, そのCutoffは,
Am. J. Hematol. 84:98–101, 2009.
140例のDAT陰性例でRBC-IgGを評価したStudyより.
臨床的にDAT陰性 AIHAと診断されたのは64例.
RBC-IgGはImmunoradiometric assay(IRMA)で測定.
RBC-IgG ≥83は感度70.3%, 特異度 84.2%でDAT- AIHAを示唆.
網状赤血球やMCV, LDH, 間接Bil値よりもAIHA診断には有用. という結果であった.