(Rheum Dis Clin N Am 39 (2013) 263–276)
RPは稀な全身性の軟骨炎を来す自己免疫性疾患. Episodic, progressiveな経過をとる.
耳介のElastic cartilage, 気管や関節のHyaline cartilage, 軸関節のFibrocartilageを侵すことが多い.
軟骨以外にもproteoglycanが豊富な組織: 眼, 内耳, 心臓, 血管, 腎臓にも自己免疫機序の障害を生じることがある.
RP単独で発症することも, 他の免疫疾患に関連することもあり.
経過は変動性だが, 徐々に増悪する経過をとる.
RPは白人に多い疾患.
Mayo clinicでは, 年間発症率は3.5/100万の頻度.
男女差は無し. どの年代でも発症するが, 20-60歳で特に多く, 40-50歳がピーク
RPの機序は未だ不明瞭な部分が多い
コラーゲンに対する自己抗体が検出される.
II型Collagenに対する自己抗体が急性軟骨炎の33%で検出.
IX, XI型Collagenに対する抗体も検出されている.
他, matrilin-I, II型Collagen等様々な報告がある.
軟骨組織からは, CD4+ T cell, 形質細胞, Ig, 補体が検出される.
RPの分類:
Primary PRと, 他疾患に由来するSecondary RPがある.
RP患者の30-37%で他の自己免疫疾患の合併を認める.
また, 軟骨の外傷を契機として発症する例もある (ピアスの穴あけ後の発症等)
RPに合併し得る疾患
RPは稀な全身性の軟骨炎を来す自己免疫性疾患. Episodic, progressiveな経過をとる.
耳介のElastic cartilage, 気管や関節のHyaline cartilage, 軸関節のFibrocartilageを侵すことが多い.
軟骨以外にもproteoglycanが豊富な組織: 眼, 内耳, 心臓, 血管, 腎臓にも自己免疫機序の障害を生じることがある.
RP単独で発症することも, 他の免疫疾患に関連することもあり.
経過は変動性だが, 徐々に増悪する経過をとる.
RPは白人に多い疾患.
Mayo clinicでは, 年間発症率は3.5/100万の頻度.
男女差は無し. どの年代でも発症するが, 20-60歳で特に多く, 40-50歳がピーク
RPの機序は未だ不明瞭な部分が多い
コラーゲンに対する自己抗体が検出される.
II型Collagenに対する自己抗体が急性軟骨炎の33%で検出.
IX, XI型Collagenに対する抗体も検出されている.
他, matrilin-I, II型Collagen等様々な報告がある.
軟骨組織からは, CD4+ T cell, 形質細胞, Ig, 補体が検出される.
RPの分類:
Primary PRと, 他疾患に由来するSecondary RPがある.
RP患者の30-37%で他の自己免疫疾患の合併を認める.
また, 軟骨の外傷を契機として発症する例もある (ピアスの穴あけ後の発症等)
RPに合併し得る疾患
皮膚
|
内分泌
|
消化管
|
血液
|
アトピー性皮膚炎, 乾癬
皮膚血管炎,
疱疹状皮膚炎
脂肪織炎, 白斑症,
扁平苔癬
|
糖尿病, バセドウ病,
橋本病,
甲状腺機能低下
|
炎症性腸疾患, PBC
|
ALL,
クリオグロブリン,
ホジキン病, MALT, MDS, 悪性貧血 |
泌尿 生殖器
|
リウマチ性疾患
|
糸球体腎炎
後腹膜線維症 |
ベーチェット病, FMF, Juvenile RA, 関節リウマチ
強直性脊椎炎, 全身血管炎 |
RP + ベーチェット病の合併を ”MAGIC” Syndromeと呼ぶ
MAGIC: Mouth and Genital Ulcer with Inflamed Cartilage
(Clin Exp Rheumatol 2006; 24 (Suppl. 42): S108-S112.)
RPの臨床所見
耳介軟骨炎と関節炎が最も多い症状で, 診断時に20-30%で認められる.
次いで鼻軟骨炎, 眼炎, 気道病変が10-15%で認められる.
軟骨所見が無く, 発熱, 体重減少といった全身症状のみで発症する例もあり, その場合は診断が遅れる原因となる.
耳介の所見: 耳介の発赤, 疼痛, 腫脹を認めるが, 耳垂(耳たぶ)が保たれる所見が典型的.
再発, 寛解を繰り返すと耳介はfloppyになり, 捻れを生じ, カニフラワー状となる.
RPでは遅かれ早かれ, ほぼ全例で耳介の炎症を生じる.
外耳道狭窄, eustachian tube軟骨炎, 重大な外耳道炎を生じ, 難聴となる.
内耳動脈の血管炎で急性の難聴もあり得る (前庭神経症状も伴う)
眼の所見: RPの初期では20%で認める.
多い所見は強膜炎, 上強膜炎で, 全経過中に65%で生じる.
長期経過したRPではリンパ球浸潤によりサーモンパッチ状の結節形成を認める.
寛解再発を繰り返すことで強膜が菲薄化し, 脈絡膜層の色素が見え, 青色強膜になる.
Keratoconjunctivitis sicca, Keratitis, 角膜穿孔, 網膜症, 視神経炎も生じ, 失明の原因となる.
気道病変: 鼻軟骨炎は初期で10-15%, 全経過で50-70%
急性経過の鼻腫脹, 熱感, 発赤を生じる.
鼻中隔の遠位部に生じることが多い.
寛解再発を繰り返し, Saddle nose変形を生じる.
鼻梁や鼻周囲が詰まった様な感覚を自覚する.
気管軟骨炎は半数で認める.
呼吸苦, 咳嗽, Wheeze, 閉塞感を伴う
気管の炎症により反回神経麻痺や声帯浮腫を合併し, 急速な窒息を呈することもあり.
筋骨格系の症状: 関節痛, 関節炎双方認める.
関節炎は全経過で70-80%で認める.
左右非対称で, 遊走性の関節炎. 特に胸鎖関節, 肋軟骨で多い.
腫脹関節の穿刺では非炎症性の所見のことが多く,XPでは関節裂隙の狭小化や骨量の低下を認める.
骨融解はRAでない限り生じない.
重症例では鎖骨, 肋骨の脱臼を生じ, Flail chestとなることも.
血液系の症状: MDSに合併する症例がある.
MDSに合併するRPは60-70歳の男性例で多い.
新規発症のRPではMDSをチェックする必要がある.
心血管系の症状: 長期経過例で認められる
ARが4-10%, MRが2%. 免疫抑制剤使用しても生じる可能性
大動脈炎による動脈瘤, 心筋虚血, 伝導障害, 心外膜炎, 血栓性静脈炎も合併し得る.
抗リン脂質抗体症候群合併による血栓症もある.
神経系の症状: 3%と少ないが, 亜急性, 急性経過となる
脳神経障害が多く, 視神経炎, 外転神経, 顔面神経, 内耳神経症状が多い.
脳動脈瘤や無菌性髄膜炎の報告もある
腎臓障害: Primary RPの6-10%. Secondaryではより多い.
糸球体腎炎, 血管炎による腎障害. RP患者では尿検査はルーチンに行うべき.
臓器障害の頻度:
RPでは遅かれ早かれ, ほぼ全例で耳介の炎症を生じる.
外耳道狭窄, eustachian tube軟骨炎, 重大な外耳道炎を生じ, 難聴となる.
内耳動脈の血管炎で急性の難聴もあり得る (前庭神経症状も伴う)
眼の所見: RPの初期では20%で認める.
多い所見は強膜炎, 上強膜炎で, 全経過中に65%で生じる.
長期経過したRPではリンパ球浸潤によりサーモンパッチ状の結節形成を認める.
寛解再発を繰り返すことで強膜が菲薄化し, 脈絡膜層の色素が見え, 青色強膜になる.
Keratoconjunctivitis sicca, Keratitis, 角膜穿孔, 網膜症, 視神経炎も生じ, 失明の原因となる.
気道病変: 鼻軟骨炎は初期で10-15%, 全経過で50-70%
急性経過の鼻腫脹, 熱感, 発赤を生じる.
鼻中隔の遠位部に生じることが多い.
寛解再発を繰り返し, Saddle nose変形を生じる.
鼻梁や鼻周囲が詰まった様な感覚を自覚する.
気管軟骨炎は半数で認める.
呼吸苦, 咳嗽, Wheeze, 閉塞感を伴う
気管の炎症により反回神経麻痺や声帯浮腫を合併し, 急速な窒息を呈することもあり.
筋骨格系の症状: 関節痛, 関節炎双方認める.
関節炎は全経過で70-80%で認める.
左右非対称で, 遊走性の関節炎. 特に胸鎖関節, 肋軟骨で多い.
腫脹関節の穿刺では非炎症性の所見のことが多く,XPでは関節裂隙の狭小化や骨量の低下を認める.
骨融解はRAでない限り生じない.
重症例では鎖骨, 肋骨の脱臼を生じ, Flail chestとなることも.
血液系の症状: MDSに合併する症例がある.
MDSに合併するRPは60-70歳の男性例で多い.
新規発症のRPではMDSをチェックする必要がある.
心血管系の症状: 長期経過例で認められる
ARが4-10%, MRが2%. 免疫抑制剤使用しても生じる可能性
大動脈炎による動脈瘤, 心筋虚血, 伝導障害, 心外膜炎, 血栓性静脈炎も合併し得る.
抗リン脂質抗体症候群合併による血栓症もある.
神経系の症状: 3%と少ないが, 亜急性, 急性経過となる
脳神経障害が多く, 視神経炎, 外転神経, 顔面神経, 内耳神経症状が多い.
脳動脈瘤や無菌性髄膜炎の報告もある
腎臓障害: Primary RPの6-10%. Secondaryではより多い.
糸球体腎炎, 血管炎による腎障害. RP患者では尿検査はルーチンに行うべき.
臓器障害の頻度:
単一施設でのRP 200例の報告 (Medicine 2001;80:173-179)
男性71, 女性129例. 平均年齢43±18 [6-87]y
73/200(37%)がSecondary. 疾患の内訳は,
男性71, 女性129例. 平均年齢43±18 [6-87]y
73/200(37%)がSecondary. 疾患の内訳は,
|
N
|
男:女性
|
軟骨炎発症年齢
|
皮膚病変(%)
|
MDS
|
22
|
18:4
|
63
|
91%
|
IgA骨髄腫
|
2
|
1:1
|
61
|
50%
|
SLE
|
10
|
2:8
|
35.5
|
70%
|
RA
|
4
|
0:4
|
37.5
|
25%
|
MCDT
|
6
|
1:5
|
34
|
100%
|
DM
|
2
|
1:1
|
52.5
|
100%
|
高安病
|
3
|
1:2
|
28
|
0
|
GPA
|
3
|
1:2
|
42
|
33%
|
TA
|
1
|
0:1
|
79
|
0
|
乾癬
|
5
|
3:2
|
38
|
|
扁平苔癬
|
2
|
0:2
|
38.5
|
|
白斑症
|
1
|
0:1
|
26
|
|
アトピー性皮膚炎
|
1
|
0:1
|
11
|
|
自己免疫性甲状腺疾患
|
8
|
2:6
|
44.5
|
50%
|
強直性脊椎炎
|
4
|
0:4
|
36
|
50%
|
クローン病
|
2
|
1:1
|
50.5
|
100%
|
無菌性深部膿瘍
|
4
|
0:4
|
32.5
|
100%
|
家族性地中海熱
|
1
|
0:1
|
2
|
0
|
Literature Review 159例の症状頻度 (Medicine 1976;55:193-215)
症状
|
頻度
|
症状
|
頻度
|
耳-外部: 耳介軟骨炎
|
88.6%(141)
|
内耳障害
|
45.9%(73)
|
関節
|
81.8%(129)
|
蝸牛障害
|
(65)
|
胸部軟骨関節
|
(58)
|
前庭障害
|
(41)
|
末梢関節
|
(121)
|
心血管系
|
23.9%(38)
|
脊椎関節
|
(24)
|
A弁不全
|
(9)
|
鼻: 鼻軟骨炎
|
72.4%(115)
|
MR
|
(5)
|
眼病変
|
65.4%(104)
|
心外膜炎
|
(3)
|
結膜炎
|
(56)
|
心筋虚血
|
(2)
|
強膜炎/上強膜炎
|
(65)
|
大血管血管瘤
|
(9)
|
虹彩炎, 脈絡膜炎
|
(41)
|
血管炎
|
(9)
|
角膜炎/結角膜炎
|
(15)
|
CNS血管炎
|
(5)
|
白内障
|
(12)
|
静脈炎
|
(5)
|
視神経炎
|
(7)
|
レイノー現象
|
(2)
|
外眼筋麻痺
|
(6)
|
皮膚
|
16.5%(26)
|
眼球突出
|
(4)
|
皮膚血管炎
|
(6)
|
呼吸器: 咽頭, 気管軟骨炎
|
55.9%(89)
|
結節性紅斑様病変
|
(4)
|
気管切開頻度
|
(30)
|
非特異的皮疹
|
(16)
|
RPの診断
診断は臨床診断が基本. Labは補助的な役割
罹患軟骨の生検で診断を確定する.
McAdam Criteria: 3つ以上を満たし, さらに補助の1つ以上
診断は臨床診断が基本. Labは補助的な役割
罹患軟骨の生検で診断を確定する.
McAdam Criteria: 3つ以上を満たし, さらに補助の1つ以上
McAdam
|
補助
|
両側性の耳介軟骨炎
|
ステロイド, Dapsoneで効果あり
|
非融解性, Seronegativeの多関節炎
|
罹患軟骨の生検で軟骨の障害あり(寛解期で)
|
鼻軟骨炎
|
|
眼の炎症性病変
|
|
気道の軟骨炎
|
|
内耳, 前庭の機能異常
|
|
Labは非特異的
貧血, WBC上昇, PLT上昇, Eo上昇はありえる.
炎症反応も亢進する. ESRは80%で亢進.
抗核抗体は20-60%で陽性となる.
病理所見
典型所見はBasophilic stainingの低下, 軟骨細胞の変性, Lysosomeの集積, 血管周囲の炎症細胞浸潤. CD4+ helper T cell有意の浸潤を認める.
画像所見: (Clin Nucl Med 2012;37: 712-715)
CTでは軟骨周囲の非特異的炎症性変化.
PETにて軟骨の炎症が検出される
貧血, WBC上昇, PLT上昇, Eo上昇はありえる.
炎症反応も亢進する. ESRは80%で亢進.
抗核抗体は20-60%で陽性となる.
病理所見
典型所見はBasophilic stainingの低下, 軟骨細胞の変性, Lysosomeの集積, 血管周囲の炎症細胞浸潤. CD4+ helper T cell有意の浸潤を認める.
画像所見: (Clin Nucl Med 2012;37: 712-715)
CTでは軟骨周囲の非特異的炎症性変化.
PETにて軟骨の炎症が検出される
RPの活動性評価: RPDAI (Autoimmunity Reviews 12 (2012) 204–209)
27名のRP専門家による会合にて, 43例のRP症例の活動性を0-100ptで評価し, 活動性評価に関連する因子を抽出.
27名のRP専門家による会合にて, 43例のRP症例の活動性を0-100ptで評価し, 活動性評価に関連する因子を抽出.
因子
|
pt
|
因子
|
pt
|
因子
|
pt
|
関節炎
|
1
|
蛋白尿
|
6
|
感音性難聴
|
12
|
発熱
|
2
|
前庭障害
|
8
|
網膜血管炎
|
14
|
紫斑
|
3
|
鼻軟骨炎
|
9
|
気道軟骨炎, 急性呼吸不全(-)
|
14
|
CRP上昇
|
3
|
心外膜炎
|
9
|
大, 中血管炎
|
16
|
胸骨角軟骨炎
|
3
|
ブドウ膜炎
|
9
|
心筋炎
|
17
|
胸鎖軟骨炎
|
4
|
耳介軟骨炎
|
9
|
腎不全
|
17
|
血尿
|
4
|
強膜炎
|
9
|
急性A弁, M弁不全
|
18
|
肋骨軟骨炎
|
4
|
角膜潰瘍
|
11
|
脳炎
|
22
|
上強膜炎
|
5
|
運動, 感覚運動神経症
|
12
|
気道軟骨炎, 急性呼吸不全(+)
|
24
|
RPのマネージメント
RP自体が稀な疾患であり, RCTは無し。
NSAIDは軽症の関節炎, 関節痛例で使用される.
軽症の眼病変の場合はステロイド点眼を併用する.
耳介軟骨炎にはコルヒチン0.6mg bid.
軽症〜中等症の軟骨炎に対しては, PSL 10-20mgを使用.
鼻軟骨炎, 耳介軟骨炎単独例にはDapsone 50-200mgも使用
中等症〜重症のRPへの対応
(強膜炎, 聴前庭神経障害, 咽頭気管軟骨炎, 気道障害, 動脈炎, 他の臓器障害)
PSL 1mg/kg/dの高用量ステロイドが推奨される.
もしくはステロイドパルス療法
エピネフリンの吸入も気道障害に対して有効
PSL sparing agentとしてMTXやAzathioprineも使用される.
致命的な臓器障害の場合はCyclophosphamide 1-2mg/d, CyCパルスも併用される.
上記に不応の場合はCyclosporine A 5-15mg/kg/dを考慮.
生物学的製剤も使用される
CD4モノクローナル抗体, 抗TNF-α阻害薬
抗IL-6R阻害薬(Tocilizumab)は症例報告レベルで効果あり.
RP自体が稀な疾患であり, RCTは無し。
NSAIDは軽症の関節炎, 関節痛例で使用される.
軽症の眼病変の場合はステロイド点眼を併用する.
耳介軟骨炎にはコルヒチン0.6mg bid.
軽症〜中等症の軟骨炎に対しては, PSL 10-20mgを使用.
鼻軟骨炎, 耳介軟骨炎単独例にはDapsone 50-200mgも使用
中等症〜重症のRPへの対応
(強膜炎, 聴前庭神経障害, 咽頭気管軟骨炎, 気道障害, 動脈炎, 他の臓器障害)
PSL 1mg/kg/dの高用量ステロイドが推奨される.
もしくはステロイドパルス療法
エピネフリンの吸入も気道障害に対して有効
PSL sparing agentとしてMTXやAzathioprineも使用される.
致命的な臓器障害の場合はCyclophosphamide 1-2mg/d, CyCパルスも併用される.
上記に不応の場合はCyclosporine A 5-15mg/kg/dを考慮.
生物学的製剤も使用される
CD4モノクローナル抗体, 抗TNF-α阻害薬
抗IL-6R阻害薬(Tocilizumab)は症例報告レベルで効果あり.