Lymphoplasmacytic infiltration, IgG4+ Plasma cellの浸潤を膵臓, 後腹膜, 動脈, 唾液腺など様々な臓器に認める病態.
Type 1 自己免疫性膵炎もIgG4-RSDの1つ.
2003年に提唱された概念であり, 様々な疾患に関与している可能性あり
疾患 | Target organ |
Mikulicz’s disease | 唾液, 涙腺 |
Kuttner’s tumor | 顎下腺 |
Riedel’s thyroiditis | 甲状腺 |
Chronic sclerosing aortitis | 大動脈 |
Inflammatory abdominal aortitis | 腹部大動脈 |
Retroperitoneal fibrosis | 後腹膜 |
Autoimmune pancreatitis | 膵臓 |
Sclerosing cholangitis | 胆道 |
Orbital pseudotumor | 眼科周囲組織 |
Eosinophilic angiocentric fibrosis | 副鼻腔, 鼻腔 |
Multifocal fibrosclerosis | 様々な臓器 |
それまで ”特発性”とされてきた疾患のなかで, IgG4が関連しているものが含まれていることが判明している.
PSCの一部はIgG4-RSDであり, その場合はステロイドに著効する可能性がある.
また, シェーグレン症候群の一部もIgG4が関連するものがある.
IgG4はFcへの結合性が低く, 補体活性作用が無い.
従って, ヒト体内におけるIgG4の免疫への関与は不明瞭.
IgG4の上昇はアレルギー反応, 炎症性疾患, リンパ増殖性疾患, 寄生虫感染症に関連するとの報告もある.
自己免疫性膵炎と他の膵疾患との鑑別にIgG4>1.35g/Lが有用, 感度95%, 特異度97%であるが, 現在ではこのCutoffをIgG4-RSD全体で使用している.
また, 組織中IgG4+/IgG+ Plasma cell ratio>0.4もIgG4-RSDの診断に有用
(Medicine 2012;91: 49-56)
侵襲臓器は?
膵臓は最も報告例が多い臓器だが, もともとAIPから提唱された概念であり, 当然と言えば当然.
AIPの71-100%に胆管炎を合併する.
IgG4由来の胆管炎ではIgG4上昇が74%で認められる.
IgG4由来の胆管炎ではIgG4上昇が74%で認められる.
肝臓浸潤によりIgG4-Hepatopathyも来す.
IgG4(+)形質細胞浸潤を来す以外は, 自己免疫性肝炎と同じ病態.
IgG4(+)形質細胞浸潤を来す以外は, 自己免疫性肝炎と同じ病態.
他の臓器としては,
胃, 大腸, 眼窩, 後腹膜, 腸間膜, 大動脈, 甲状腺, 乳房, 肺, 腎, 下垂体, 髄膜, 前立腺, 皮膚, リンパ節, 心膜と様々
(Curr Opin Rheumatol 2011;23:57-66)
IgG4-RSD 25例の解析 @フランス (Medicine 2012;91: 49-56)
IgG4-RDの10%が傍腫瘍症候群?
札幌医大付属病院に1997年から紹介, 診断されたIgG4-RD患者106名の解析.
男性50例, 女性56例. 平均年齢59.02歳.
67名がMikulicz’s Disease, 17名がKuttner’s tumor, 12名がIgG4-related dacryoadenitis,10名が自己免疫性膵炎.
このうち, 診断時, フォロー中に悪性腫瘍を認めたのは11名(10.4%)
乳癌, 肺癌, 大腸癌, 腎癌, 前立腺, 血液腫瘍が含まれる.
同年齢の人口の癌発症率を比較して, 3.82倍のリスクとなる(男性3.31, 女性4.71)
癌(+)と(-)群では病状に有意差無し
(Mod Rheumatol (2012) 22:414–418)
IgG4-RSDの診断クライテリア2011 (Mod Rheumatol (2012) 22:21–30)
1) 単体臓器, 多臓器のびまん性/局所性の腫大, Massを認める |
2) IgG4 ≥135mg/dLを満たす |
3) 組織所見が以下を満たす 3-1) Ly, 形質細胞の浸潤と線維化 3-2) IgG4+形質細胞の浸潤(IgG4+ /IgG+ cell >40%, >10 IgG4+ 形質細胞/HPF) |
Definite 1) + 2) + 3)
Probable 1) + 2)
Possible 1) + 2)
Probable 1) + 2)
Possible 1) + 2)
除外診断として, リンパ腫や悪性腫瘍, Sjogren, PSC, Castleman病, Wegener肉芽種, サルコイド, Churg-Straussなどの除外は重要.
IgG4+ Mikulicz's disease診断クライテリア
1) 涙腺, 耳下腺, 顎下腺の2箇所以上が対称性に3ヶ月以上腫脹している |
2) IgG4 >135mg/dL |
3) 組織学的にIgG4+形質細胞とリンパ球が浸潤(IgG4+/IgG+ >50%) する線維化, 硬化病変 |
鑑別で重要なのはリンパ腫, サルコイド, Castleman病, Wegener肉芽種, Sjogren症候群など
IgG4関連腎症の診断クライテリア
1) 腎障害; 尿検査異常, 腎機能低下 + IgG, IgE上昇 or 低補体血症 |
2) 腎画像所見異常 a) 造影CTで多巣性の低造影領域 b) 腎のびまん性腫大 c) 腎のHypovascular solitary mass d) Renal pelvic wallの過形成領域 (renal pelvic surface表面は整) |
3) IgG4 >135mg/dL |
4) 腎の組織所見 a) IgG4+ 形質細胞がHPFあたり>10個, IgG4+/IgG+ 形質細胞>40% b) リンパ球, 形質細胞が浸潤した線維性, 硬化性組織 |
5) 腎外の組織所見 IgG4+ 形質細胞がHPFあたり>10個, IgG4+/IgG+ 形質細胞>40% |
Definite | 1+3+4a,b 2+3+4a,b 2+3+5 1+3+4a+5 |
Probable | 1+4a,b 2+4a,b 2+5 3+4a,(b) |
Possible | 1+3 2+3 1+4a 2+4a |
IgG4-RSDの診断フローチャート
IgG4-RSDの治療
IgG4-RSDではステロイドが効果的.
ステロイドは最も使用され, 9割近く効果的であるが, 副作用も多い
他の免疫抑制剤; AZAも有効. また, Rituximabも効果的である可能性がある.
PSL, DMARDでも効果不十分なIgG4-RSDでは, Rituximab(RTX) 1000mg/d, 15日毎投与が有効である可能性. (Medicine 2012;91: 57-66)
PSLを数ヶ月〜数年, 他のDMARD(AZA, MTXなど)を使用しても, Disease Activity Score 1-14(3-6が大半)である10名で, RTXへ変更後にPSL減量, 病勢の改善を認めた報告.
RTXは6例が1回投与のみ, 3例が3回投与, 1例が4回投与で改善している.
IgG4値も低下を認める.