後腹膜線維症 (Retroperitoneal Fibrosis: RPF)
Rheum Dis Clin N Am 2007;33:803-17
BMC Medicine 2006;4:23
大動脈周囲, 腸骨周囲の後腹膜の硬化性組織形成 ⇒ 尿管, 下大静脈の閉塞を合併することもある
組織; リンパ球, 形質細胞, マクロファージの浸潤
HLA-DRB1*03が関与
自己免疫抗体も認められる例が多い
大部分が特発性.
二次性として; 薬剤, 悪性腫瘍, 感染症など
薬剤; Methysergide, 麦角アルカロイド, ドパミン作動薬
後腹膜腫瘍; リンパ腫, 肉腫
転移性腫瘍; カルチノイドなど
外傷, 放射線療法, 腹部外科, 感染症, Histiocytosisなど
Idiopathic RPF
後腹膜のMassとして発見されることが多い
慢性大動脈周囲炎の原因の一つに含まれる
(RPF)腹部大動脈周囲のMass
慢性大動脈周囲炎(Periaortitis)
炎症性腹部大動脈瘤
Perianeurysmal retroperitoneal fibrosis
RPFでは周囲の後腹膜の炎症がメインであるため, 大動脈周囲炎 + 大動脈は非拡張状態(Undilated)
Idiopathic RPFはHyper IgG4 syndromeの1つ (Multifocal fibrosclerosis)
RPF患者の組織所見にてIgG4(+) 形質細胞が認められる
唾液腺では>95%でIgG4 positive
肝臓: 80%, 膵臓: 90%, 後腹膜: 80%, 腎臓: 90%
肝臓: 80%, 膵臓: 90%, 後腹膜: 80%, 腎臓: 90%
IgG4関連の後腹膜線維症10例では, IgG4 695mg/dL[154-2330] vs 30[10-53](非関連性)
Idiopathic RPFの疫学 @ Finland
(Lancet 2004;363:1422-6, Rheum Dis Clin North Am 1996;22:23-38)
(Lancet 2004;363:1422-6, Rheum Dis Clin North Am 1996;22:23-38)
年間罹患率; 0.1/100,000
有病率; 1.4/100,000
好発年齢; 40-60Y, 男性で多い(2-3:1)
喫煙者(>20pack-years)ではOR 4.73
Secondary RPFはPrimaryの1/3以下, 詳細は不明
アスベストへの暴露はRPF発症のリスクを上げるとの報告 (OR 5.5-8.8; =<10Yの暴露)
免疫学的関連
HLA-DRB1*03, HLA-B*08は慢性大動脈周囲炎に関連
HLA-DRB1*15, B1*0404はInflammatory AAAに関連
iRPFの臨床症状
腹痛, 腰痛, 側腹部の鈍痛, たまにColickyなことも
微熱持続, 食欲低下, 体重減少, 倦怠感などの全身症状
頻度中; 便秘, 精巣痛, 陰嚢水腫, 精索静脈瘤, 浮腫, DVT
頻度低; 頻尿, 乏尿, ED
50%で両側尿管閉鎖を来す
腎動脈閉塞による高血圧もCheck
Lab testはNon-specific. CRP, ESRは高値, その他炎症所見が認める程度
ANAは60%で陽性だが, 抗平滑筋抗体, RFは稀
自己抗体の測定意義はその他の自己免疫疾患の否定
iRPFの病理
肉眼的には大動脈, 腸骨動脈周囲の灰白色のMass
胸部大動脈まで達する場合, 縦隔線維症となる
腸骨周囲, 脾臓, 膵臓周囲の後腹膜まで達する場合もあり
組織所見;
A; 硬化性病変. 単核球, 炎症性細胞の全体, 血管への浸潤
B; Aの拡大, 静脈炎(+). 静脈周囲のリンパ球, 形質細胞, 好酸球浸潤. B cell(中心), T cell(周辺)に分布
C; Collagen bundlesに広がる単核球. Type I collagenがメイン
画像所見: CT
CT所見; 大動脈周囲のMass
筋肉と同じDensity, 造影効果は炎症初期に認められる
前方, 側方へ拡大し、尿管を圧排
上下方向は 腎動脈分岐部~総腸骨動脈分岐部が多い (たまにSMA, 内・外腸骨動脈まで達するものも)
下大静脈は巻き込まれ, 圧排されることが多い
画像所見: MRI
T1強調
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T2強調
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Early (Active stage)
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Low intensity
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High intensity
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Late stage
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Low intensity
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Low intensity
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画像所見: その他
エコー検査
診断に有用ではない
治療の効果判定, 病状の進展を評価するのに有用
18F-FDG-PET
病変の範囲(胸部大動脈など), 他の血管炎, 自己免疫疾患の評価も可能
前向き研究は未だなく, 感度, 特異度は不明だが有用とされる
53名のiRPF患者の解析 Medicine 2009;88: 193-201
発症率は1.3/100000-y, 平均年齢は64±11.1y.
男女比は3.3:1と男性に多い.
腹部, 背部, 鼠径部痛, 違和感が最も多く, VASでは疼痛49±27.2mm, 不快感43±29.4mmと中等度の症状が多い. 水腎症は56%
症状 | % | ||
腹部, 腰部不快感 | 92% | 頻尿 | 47% |
腰痛 | 60% | 精巣痛 | 46% |
腹痛 | 57% | 体重減少 | 40% |
鼠径部痛 | 53% | 便秘 | 30% |
VAS Score(mm) | 精索瘤 | 29% | |
不快感 | 43±29.4mm | 悪心 嘔吐 | 25% |
疼痛 | 49±27.2mm | 発熱, 悪寒戦慄 | 25% |
下肢上部の間欠跛行 | 11% | ||
下肢浮腫 | 8% | ||
射精困難 | 7% |
年齢分布
53例のCT所見
Massの部位 | |
大動脈, 腸骨動脈周囲 | 62% |
大動脈周囲 | 19% |
大動脈, 大静脈周囲 | 15% |
仙骨前 | 8% |
膀胱後部 | 2% |
結腸周囲 | 2% |
Massの大きさ(mm) | |
最大肥厚 | 35±16.6 |
頭部〜尾部 | 137±48.8 |
造影CTでのDensity | |
HU | 60±14.8 |
RPF/腸腰筋 | 1.2±0.29 |
その他 | |
水腎症; 片側 | 40% |
水腎症; 両側 | 15% |
腎萎縮 | 21% |
限局性リンパ節腫大 | 26% |
胸膜肥厚 | 13% |
腸間膜脂肪織炎 | 4% |
48名のRPF患者の解析 Medicine 2009;88: 202-207
男性26名, 女性22名. 平均年齢54.25y
尿管閉塞は両側性が22, 片側性が10名(Lt. 4, Rt. 6)
症状, 所見 | |
疼痛 | 94% |
新規発症のHT | 33% |
倦怠感 | 60% |
食欲低下 | 17% |
体重減少 | 54% |
発熱 | 4% |
精索瘤 | 27% |
精巣痛 | 15% |
下肢浮腫 | 23% |
肺塞栓 | 6% |
悪性腫瘍によるRPF(mRF)とiRF
mRF17例, iRF18例, Control RF群15例のRetrospective study Medicine 2012;91: 242-250
臨床症状と画像所見(MRI)を比較.
臨床所見; 浮腫, 腹痛, 鼠径部痛, 腰痛は両者で有意差無し.
>> 症状でmRFとiRFを鑑別するのはほぼ不可能.
>> 症状でmRFとiRFを鑑別するのはほぼ不可能.
CRPやCre値, 腎不全の頻度も有意差無し.
画像所見で有意差を認めるものは,
所見 | iRF | mRF |
Ao後部のRFの厚(mm) | 2.5[2.0-5.0] | 5.0[3.0-8.5] |
①腎動脈分岐部 以上, Ao分岐部以下のRF | 0 | 47% |
腎動脈分岐部〜Ao分岐部のRF | 50% | 18% |
②中部尿管の牽引所見 | 83% | 24% |
RFの厚さ, 範囲, 水腎症の有無は両者有意差無し.
①, ②を満たせば, 感度82% 特異度83%でmRFを示唆する.
IgG4関連RPF vs non-IgG RPF
特発性RPFはIgG4関連, 非関連性に分かれる. Medicine 2013;92: 82-91
両者の組織所見の違い;
IgG4関連ではより形質細胞, Eo浸潤の頻度が高く, 静脈炎を合併
臨床, 画像所見では区別困難であり, 組織所見が鑑別に重要となる.
臨床, 画像所見は両者で同じ