Lancet 2014; 383: 2152–67, JAMA 2002;287:236-40
急性, 慢性, 原発性~三次性と原因は多い
原発性は稀だが, 腫瘍, 炎症, 出血などで副腎が>90%破壊されると生じる
Glucocorticoid, mineralcorticoid(アルドステロン)双方が低下する
二次性では下垂体機能低下, ACTH分泌低下による機序.
通常アルドステロンの抑制は無し ⇒ 高Kにはならない.
三次性は, 視床下部, HPA axisの機能低下, 不全による機序となる.
原発性副腎不全
ヨーロッパでは93-144/100万の有病率. 4.4-6.0/100万-yの発症率と言われている.
以前は結核が最も多い副腎不全の原因であったが, 近年では自己免疫性副腎不全が多い原因となっている.
1969-2009年に診断された615例の原発性副腎不全のうち, 82%が自己免疫性. 9%が結核性, その他が8%.
自己免疫性では特発性が40%, APS(autoimmune polyendocrinopathy syndrome)が60%
原発性副腎不全は男性よりも女性に多く, 30-50歳台でピーク.
または, 40台, 70台で2峰性のピークを迎えるとしている文献もあり.(Lancet 2003;361:1881-93) (日内雑誌 2008;97:16)
クリーゼ発症は37.4%(特発性 42.5%, 結核性35%)
誘因; 感染症 75%, 補助療法中断 7.5%
予後; 治癒 80.7%, 不変 15.6%, 死亡 3.7%
二次性副腎不全は原発性よりも多い
150-250/100万の有病率で, 女性例の方が多い.
また, 好発年齢も60歳台とやや高齢となる.
また, 好発年齢も60歳台とやや高齢となる.
下垂体腫瘍, 放射線療法後, 下垂体炎が原因としてある.
最も多い原因は視床下部-下垂体の腫瘍浸潤 (Lancet 2003;361:1881-93)
外科手術, 放射線治療による汎下垂体機能低下症
Autoimmune Lymphocytic Hypophysitisはやや頻度が劣り, 出産後の女性に多い疾患. しばしばSheehan’s Synとの鑑別を要する
甲状腺疾患に合併する自己免疫性ACTH欠乏症もある.
下垂体に影響を及ぼす炎症, 感染症疾患は稀であり, 原発腫瘍よりも少ない.
Primary(下垂体に限局する障害)と Secondary(全身性疾患に合併するもの)の2つに分類される.
Primary | 肉芽腫性疾患 | Granulomatous hypophysitis, Xanthomatous hypophysitis |
Lymphocytic Autoimmune Hypophysitis | Lymphocytic Infundibular Neurohypophysitis | |
Lymphocytic Panhypophysitis | ||
Secondary | 感染症 | 結核, 細菌性髄膜炎, 真菌感染, ウイルス感染 |
非感染症 | Wegener肉芽腫 | |
Sarcoidosis | ||
クローン病 | ||
高安病 | ||
嚢胞破裂, Histiocytosis |
最近は上記に加えてIgG4関連疾患もはいる.
三次性で最も多い原因はステロイド投与による副腎抑制
視床下部-下垂体系の抑制を来す(Corticotropin-releasing hormone)
経口プレドニゾン25mg bidを5日間投与すると, 中止後5日間はACTHは抑制されたまま.
投与量よりは投与期間が重要であり, 5mg/dのプレドニゾンでも長期間投与すれば中止後1年はHPA axisは抑制されている.
PSL 20mg相当を3wk以上内服している患者
夕, 就寝前にPSLを2-3wk内服した患者
Cushing様症状を呈する患者 ⇒ 副腎不全として扱うべきである
夕, 就寝前にPSLを2-3wk内服した患者
Cushing様症状を呈する患者 ⇒ 副腎不全として扱うべきである
副腎不全の原因一覧:Lancet 2014; 383: 2152–67
原発性副腎不全の原因一覧
二次性副腎不全の原因一覧
三次性副腎不全の原因一覧
原発性副腎不全の補足:
先天性Addison病 日内雑誌 2008;97:16 Lancet 2003;361:1881-93
男女比 4:1, 30歳未満の発症が主
95.6%に遺伝子異常を認める
X-linked AdrenoleukodystrophyはABCD1 geneの異常.
副腎不全 + 神経のDemyelinationを特徴とする
早期発症 + 急速進行typeが50%, 早期発症 + 緩徐進行typeが35%
15%は副腎不全のみ発症するtype
症状は非特異的なものがほとんど
原因不明の低Na血症, 高K血症では要Check
また, 繰り返す低血糖発作でもCheck必要.
APSとして甲状腺機能低下症も合併するため, Thyroxine補充療法開始後に症状が増悪する場合はAddison病を疑い精査を.
日中の倦怠感は強いが, 日中の眠気は健常人と同等との報告あり (Eur J of Endocrinol 2003;148:449-56)
APS: Autoimmune Polyendocrine Syndrome
自己免疫性の複数の内分泌機能障害を伴う疾患. 4タイプある.
(Endocrine Reviews 2002;23:327-364)
APS type 1
慢性皮膚カンジダ症, 慢性副甲状腺機能低下,
自己免疫性ADの内, 2つ以上
自己免疫性ADの内, 2つ以上
APS type 2
自己免疫性AD(必須)
+ 自己免疫性甲状腺疾患 or 1型DM
+ 自己免疫性甲状腺疾患 or 1型DM
APS type 3
自己免疫性甲状腺疾患
+ 他の自己免疫疾患(AD, 副甲状腺, カンジダ皮膚炎)
+ 他の自己免疫疾患(AD, 副甲状腺, カンジダ皮膚炎)
APS type 4
>=2の臓器特異的自己免疫疾患(type 1-3に分類されない)
Addison病を伴うAPS, 単独型の特徴
APS type 1
|
APS type 2
|
APS type 4
|
単独型
|
|
頻度
|
13%
|
41%
|
5%
|
41%
|
M : F
|
1:1.8
|
1:3.6
|
1:3.3
|
1:0.8
|
主要併発疾患, 頻度
|
||||
Addison
|
100%
|
100%
|
100%
|
100%
|
慢性副甲状腺機能低下
|
88%
|
(-)
|
(-)
|
(-)
|
粘膜皮膚カンジダ症
|
79%
|
(-)
|
(-)
|
(-)
|
自己免疫性甲状腺疾患
|
13%
|
83%
|
(-)
|
(-)
|
Type 1 DM
|
6%
|
28%
|
(-)
|
(-)
|
合併疾患, 頻度
|
||||
高Gn性性腺機能不全
|
61%
|
9%
|
61%
|
(-)
|
脱毛
|
38%
|
5%
|
8%
|
(-)
|
白斑
|
22%
|
11%
|
31%
|
(-)
|
慢性肝炎
|
19%
|
4%
|
(-)
|
(-)
|
悪性貧血
|
19%
|
1%
|
(-)
|
(-)
|
Sjogren Syndrome
|
16%
|
1%
|
8%
|
(-)
|
吸収不良
|
15%
|
(-)
|
(-)
|
(-)
|
角結膜炎
|
12%
|
(-)
|
(-)
|
(-)
|
悪性腫瘍
|
12%
|
3%
|
(-)
|
1%
|
慢性委縮性胃炎
|
6%
|
11%
|
8%
|
(-)
|
Turner Syndrome
|
3%
|
(-)
|
(-)
|
(-)
|
副腎に転移する腫瘍の原発巣は?
Glucocorticoid-induced AIのステロイド減量方法は?
30年で464例の副腎転移性腫瘍患者 Clinical Endocrinology (2002) 56, 95–101
平均年齢62歳. 男性288例, 女性176例.
症候性だったのが20例(4%). 副腎不全は5例.
副腎不全はより若年, 腫瘍が大きい傾向あり.(5.0cm[3.5] vs 1.9cm[1.7])
原発巣 | % | ||
肺癌 | 35.4% | 子宮頸癌 | 1.2% |
胃癌 | 14.3% | 前立腺癌 | 0.7% |
食道癌 | 12.1% | 甲状腺癌 | 0.5% |
肝胆道系 | 10.7% | 卵巣癌 | 0.5% |
膵臓 | 6.9% | 卵肝癌 | 0.5% |
大腸 | 5.4% | 口腔, 喉頭 | 0.5% |
腎癌 | 4.3% | 咽頭 | 0.2% |
乳癌 | 2.9% | 小腸 | 0.2% |
膀胱癌 | 1.9% | 皮膚(陰茎) | 0.2% |
胆嚢癌 | 1.6% |
肺は肺腺癌が102例, SCC 23, LCC 12, 扁平上皮癌 12例
全体では, 腺癌 56.3%, 扁平上皮癌 14.9%
転移側は両側性が49%. 片側性の場合は左側が多い(143 vs 92)
Glucocorticoid-induced Adrenal Insufficiency
(JAMA 1999;282:671-6)
三次性副腎不全で最も多い原因.
(JAMA 1999;282:671-6)
三次性副腎不全で最も多い原因.
長期間のステロイド治療に伴うH-P-I axisの萎縮.
具体的な頻度は不明.
20-30mg/dのPSLを5日以上使用した患者は常にリスクがあるが, 短期投与の場合は抑制も数日で改善するため, ほぼ問題ないならない.
20-30mg/dのPSLを5日以上使用した患者は常にリスクがあるが, 短期投与の場合は抑制も数日で改善するため, ほぼ問題ないならない.
慢性的にステロイド使用(3.6yrで合計PSL4.36g)している患者19名中, HPA-axisの機能低下は11名で認められた.
機能低下は先ず中枢性に起こり, その後副腎萎縮となる.
上記の11名中, 5名が中枢性, 6名が副腎萎縮.
中枢性の場合はACTH testでは判別困難となる.
重症例は大体が副腎萎縮を来たしている例.
上記の11名中, 5名が中枢性, 6名が副腎萎縮.
中枢性の場合はACTH testでは判別困難となる.
重症例は大体が副腎萎縮を来たしている例.
Glucocorticoid-induced AIの検査
血中コルチゾール検査, Rapid ACTH test.
ステロイド投与が無い状態での評価が大事.
Dexamethasone以外の頻用するステロイド薬は血中コルチゾール値に影響を及ぼす含有物がある.
ステロイド投与が無い状態での評価が大事.
Dexamethasone以外の頻用するステロイド薬は血中コルチゾール値に影響を及ぼす含有物がある.
ただし, それら含有物の半減期は0.5-4.0hrであり, 最終投与から24-48hr空ければ影響はほぼない.
>> PSL 1日1回朝使用している患者での 血中コルチゾール測定, Rapid ACTHなど負荷試験を翌日投与前に行うことが推奨される.
検査結果の解釈は他のAIと同様.
ACTH250µg負荷試験は副腎萎縮の評価に有用であるが, 中枢性の副腎不全では正常値をとるため, 否定は仕切れない.
>> 中枢性も評価するにはインスリン負荷試験, メチラポン試験, CRH負荷試験, ACTH 1µg負荷試験が有用.
>> 中枢性も評価するにはインスリン負荷試験, メチラポン試験, CRH負荷試験, ACTH 1µg負荷試験が有用.
Insulin-Induced Hypoglycemia Test (IIT)
低血糖が最もACTH分泌刺激効果が強いことを利用.
インスリンを血糖<40mg/dLまで投与継続し, 血中Cortisolを評価.
Cortisol<20µg/dLならばHPA axis機能低下を示唆する.
Cortisol<20µg/dLならばHPA axis機能低下を示唆する.
≥60yrの高齢者, CAD, 低血糖が耐えられない患者(痙攣等)では禁忌.
IITを施行した6581名中, 合併症を認めたのは僅か6名のみと, 経験のある医師のもと行うならば安全な検査.
Overnight Metyrapone Test
Methyraponeが11-deoxycortisol→Cortisol産生を阻害する作用を利用.
Cortisol産生低下 → ACTH増加 → 翌朝のCortisol低下, 11-deoxycortisol上昇.
Cortisol産生低下 → ACTH増加 → 翌朝のCortisol低下, 11-deoxycortisol上昇.
深夜に30mg/kg内服し, 朝8時の採血にて, Cortisol<5, 11-deoxycortisol>7mcg/dLならばHPA-axisは正常.
副腎不全を誘発するため, 原則入院がbetter.
CRH stimulation
IITと同程度の診断能を持つ検査. 安全に外来で施行可能.
CRH 1µg/kg DIVし, 15,30,60minで採血.
Cortisol>18.5となればHPA-axisは問題無しと判断可能.
<15ならば副腎不全と判断する.
Low-dose ACTH test (1µg)
副腎萎縮のみでは無く, 中枢性のAIの判断も可能.
ただし, 250µg負荷と比較して感度は同等 or やや劣る.
ただし, 250µg負荷と比較して感度は同等 or やや劣る.
当然減量速度は原疾患により異なる.
生理的ステロイド分泌量は, PSL換算で5mg/d
(特に膠原病など基礎疾患が無い場合, 短期的に高用量のステロイド使用例では)
PSL 5mgまでは短期間で減量してOK. その後は1mg/moずつTaperingを行う.
PSL 5mgまでは短期間で減量してOK. その後は1mg/moずつTaperingを行う.
もしくは, PSL 5mg/d → hydrocortisone 15mg朝, 5mg夕に変更し, 2.5mg/wkずつTapering.
10mg朝のみとなった段階でTapering中止し, HPA axis機能を評価.
HPA axis機能が戻るまではそのまま維持する方法もある.
PSL<5mg/dの投与量でAI症状出現すれば, Glucocorticoid-induced AIを考慮し, 早朝Cortisolを評価.
結果に応じてRapid ACTH test(250µg), 他の検査を考慮する.
抑制されたHPA axisが戻るのには9ヶ月以上かかる
その間, 早朝Cortisol測定を月1回行い,(朝のPSL内服前に採血!)
Cortisol>10µg/dLとなれば250µg ACTH testを施行し, 問題なけれあばPSL中止する方法もあり.
Cortisol>10µg/dLとなれば250µg ACTH testを施行し, 問題なけれあばPSL中止する方法もあり.
HPA axisは副腎萎縮よりも早期に改善する為,
ACTH test正常 = 副腎萎縮改善 = HPA axisは既に改善している.
ACTH test正常 = 副腎萎縮改善 = HPA axisは既に改善している.