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2014年6月30日月曜日

舌の所見

舌の所見

舌の解剖 (Dermatol Clin 21 (2003) 123–134)
舌は中心溝にて左右に分けられ, 中心溝は尖端からForamen cecumまで伸びる.
 Foramen cecumは甲状腺と同じ組織由来.
 Foramen cecumはV字に溝を形成, sulcus terminalisと呼ばれ, 前方2/3と後方1/3を分ける溝.
 前方2/3は第一鰓弓から発生し, VII神経に支配される.
 後方1/3は第二, 三鰓弓から発生し, IX神経に支配される.
舌の表面は乳頭で形成されている.
 乳頭は味覚と咀嚼に関連.
 乳頭は舌前方2/3に2種類, Filiform papillaeとFungiform papillaeがある.
 Filiform papillae; 1-2mmの小さな乳頭で味覚受容体はもたない. 最も多い. 咀嚼や舐める行為に関連する.
 Fungiform papillae; 尖端と側面に多く存在する乳頭. 量は少ない. 赤色でドーム型の乳頭.
 Circumvallates papillae; Sulcus terminalisに存在する. FungiformとCircumvallate papillaeが味覚受容体を有する.
舌の後方には乳頭は無く, 扁桃やリンパ組織, ムチン分泌線, 薄い粘膜組織が存在する.
舌の異常所見色々 (Am Fam Physician. 2010;81(5):627-634)
Condition

所見
治療
コメント
Median rhomboid glossitis
正中菱形舌炎
滑らかで, 光沢を帯びた発赤.
境界明瞭, 菱形のプラーク.
通常無症候性だが, 灼熱感や
ヒリヒリ感があることもある.
正中上に生じる
抗真菌薬
外用
カンジダ症
のことが多い
Atrophic glossitis
萎縮性舌炎
赤色, ピンクの粘膜.
滑らかで, 光沢を帯びる.
栄養障害
薬剤性
, VitB12,
ナイアシン,
リボフラビン
葉酸欠乏
Fissured tongue
亀裂舌
深い溝を形成.
炎症や食物残渣の貯留で
悪臭, 色の変化が認められる
清潔維持
ダウン症
乾癬, シェーグレン,
Melkersson-Rosenthal syndrome
Geographic tongue
地図状舌
蛇行状, やや隆起し,
色変化を認める境界
治療必要無し.
ステロイド外用,
抗ヒスタミン外用
亀裂舌に伴う
喫煙に関連.
Hairy tongue
毛舌
乳頭の過形成と色変化
(
白色, 黒色)
清潔維持
タバコ, 不衛生
抗生剤に関連
Condition

所見
治療
コメント
Oral hairy leukoplakia
口腔毛状白板症
舌の側面に
白色の毛状所見を認める
抗ウイルス薬
EBV感染
免疫不全やHIV関連
Lichen planus
扁平苔癬
網様, 白色, レース様の所見
浅い散在した潰瘍, 紅斑
治療必要無し
ステロイド外用
カンジダのチェック
診断には生検必要
Linea alba
白線
舌の側面が肥厚し,
そこに細い白線を認める
治療必要なし
舌咬傷で生じる
Leukoplakia
白板症
白色のプラークが付着
経過観察
悪性腫瘍除外に
生検
喫煙に関連
非喫煙者では腫瘍を
Squmous cell carcinoma
扁平上皮癌
白色, 赤色の厚いプラーク
結節や潰瘍も形成。
通常舌側面
切除,
Radiation
喫煙, 飲酒,
加齢に伴う
Papilloma
乳頭腫
単一の有茎性の病変
切除
HPV-6, 11に関連
Burning tongue
舌灼熱感
舌所見は正常だが,
常に疼痛を伴う
クロナゼパム, Alpha-lipoic acid
栄養障害, 内分泌疾患
唾液減少, 感染
アレルギーなど除外
Tongue-tie(ankyloglossia)
舌小体萎縮
舌小体の萎縮で舌の運動が障害される. 授乳が難しい
外科的切除
授乳不足に関連
Macroglossia
巨舌
舌の側面が波打ち,
舌全体が巨大化
基礎疾患の治療
いろいろ

Median rhomboid glossitis; 

 男性は女性よりも3倍多い. 症状は無症候性が殆ど.
 カンジダ症に関連することが多く, 抗真菌薬が治療となる.
 粘膜は保持されるが, HIV患者では粘膜炎も認められるため, 粘膜炎合併例は要注意.

Atrophic glossitis; 
 乳頭の萎縮を伴う舌炎. 平滑に見える.
 下に挙げる様な原疾患が考えられる.

Fissured tongue; 
 
通常の舌溝が深くなる.
 食物残渣が溜まり, 炎症を来す.
 清潔を保持することが大事.

Geographic tongue; 一般人口の1-14%で認められる
地図状舌; 別名 “Benign migratory glossitis” “Erythema migraines” “Annulus migrans” “Wandering rash of the tongue”と呼ばれる.
 舌上に多発性, 円状, 不定形の紅斑を認め, 周辺を白色角化層が覆う
 中心部の紅斑部は乳頭の萎縮が認められ, ケラチンと好中球を認める.
 寛解と再燃を繰り返し, 舌病変が移動するように見える.
 通常無症候であることが多いが, 舌のヒリヒリした感覚, 辛いものに対する味覚過敏を認めることもある.
 あらゆる年齢で発症し, 特に治療無しで改善する.
 はっきりとした原因は分かっていない.
 アトピー疾患, Psoriasisとの関連が示唆されるStudyもちらほら. (J Contemp Dent Pract 2005;1:123-35)
地図状舌188例の解析(J Contemp Dent Pract 2005;1:123-35)
タイにおける, 地図状舌188名とControl 188名の比較
 男女比は1:1.5と女性に多い.
 年齢は9-79yrまであらゆる年齢で生じるが, 20-29yrが15-20%を占め最多.
 基礎疾患の比較ではどれも有意差認めず.
 舌病変の部位; 多発性が62.8%を占める. 側面, 前方が多い.
側面
68.6%
前方
58.5%
背面
42%
前面
10.6%
舌の焼ける様な感覚は24.5%で認める. 特にSpicy, sour foodで認めることが多い.
Hairy tongue; (Fig 4)
 
乳頭上に多量のケラチンが溜まると毛状に見えることからこう呼ぶ.
 口腔内不衛生, 喫煙に関連する所見

Oral hairy leukoplakia; (Fig 5)
 舌の側面に生じる点で上記とは異なる. 片側, 両側どちらもアリ.
 EBV感染症と免疫不全に関連する.
 免疫不全の既往が無い場合はHIVチェック必要.
Lichen planus; 
 
皮膚と粘膜に病変を生じる.
 網様, 白色のレース状のプラーク, 浅い潰瘍病変を生じる.
 カンジダとの併存もある.
他の所見: Fibroma, 扁平上皮癌. これらは生検が必要.


Macroglossia; 巨舌
ダウン症,  甲状腺機能低下症, 結核, サルコイドーシス, アミロイドーシス, 多発性骨髄腫, Neurofibromatosis,  梅毒感染症,  血管浮腫, アレルギーで認められる.