CMVは一般人口の60-90%に感染しており, 通常20歳台までに感染することが多い.
初感染後は潜在化し, 通常そのまま経過するが, 免疫不全がある患者では再活性化し, 問題となる.
・特にHIV患者と臓器移植, 骨髄幹細胞移植後の患者ではリスクが高い.
・臓器移植後の患者では~80%でCMV infectionが認められるため, 移植後はルーチンにCMVの検査, フォローを行い, CMV infectionの時点で治療を行う(preemptive therapy)が推奨されている.
・自己免疫疾患患者, 免疫抑制療法を行っている患者群での再活性化リスクや治療については未だ一定した見解がない状況.
ちなみに用語の定義として, ここでは以下の様に扱う.
・CMV infectionは体内にCMVがいる状態 = PCR陽性, アンチゲネミア陽性.
・CMV diseaseはCMVによる臓器障害が出現している状態で定義される.(腸炎, 骨髄障害, 肺炎が多い)
(J Clin Rheumatol. 2020 Jun;26(4):157-159.)
自己免疫疾患におけるCMV再活性化のリスクをいろいろ調べてみた
以下CMV-antigenemia(CMV-Ag)で評価した報告
国内の主要大学病院におけるSurvey. (Rheumatology 2008;47:1373–1378)
・リウマチ膠原病疾患で入院となった患者群において, CMV感染症を評価した患者を解析.
・7377例のうち, 151例でCMV感染症と診断.
このうち149例がアンチゲネミア陽性で診断
さらにこのうち2例がGI感染症, 2例が肺炎が証明
アンチゲネミア陰性の2例は腸管組織より証明
・CMV感染診断時の症状は,
34例が無症候 = CMV infection
92例が発熱 16例が呼吸器症状 15例がGI症状 視力障害が1例
(CMV infection + diseaseが混在. 正確な頻度不明)
・背景疾患はSLEが50%, DMが10%, MPAが8.8%と多い.
CMV感染症の診断がされた1年以内の治療内容
・150例でPSLを使用: PSL 60mg(5-100)
・81例でmPSLパルス療法を施行(500mg or 1000mg)
・48例でIVCYC, 16例でOral-CYC
・36例でCYC以外の免疫抑制療法を施行
・最大量の治療~CMV infectionまでは36日[10-152]
CMV-Agの比較
・症候性患者群では10.1[0-2998]/105PMNs
無症候性では4.0[1.3-1144.4]/105PMNsと有意に症候性で高い
・他の感染症合併例を除外しても, 9.1[0-1582.6] vs 4.0[1.3-221.7]と有意に高い.
入院となったリウマチ膠原病疾患患者443例を後ろ向きに解析(Advances in Rheumatology (2019) 59:18)
・CMV antigenemia(CMV-Ag)を評価したのが70例.
このうち, 24例(34.3%)でCMV-Agが陽性であった.
・全体でみると4.97%[3.1-7.4]
・24例の疾患は, SLEが13例, RA 2, MPA 2, GPA 2
他, SSc, Overlap syn, 抗セントロメア抗体Syn, BD, 皮膚Lupusが1例
CMV-Ag陽性例の解析:
・入院理由は疾患活動性+感染が50%,
感染のみが36.5%, 疾患活動性のみが13.6%
・治療内容: 入院中のMax PSL dose 87.7±52.5mg/d
1mg/kg/dを超える量は86.4%で投与
mPSLパルスは50%
免疫抑制療法が50%で使用
・CMV臓器障害は肺が45.5%, 血球減少が40.9%, GI 27.3% (ほぼCMV diseaseと言える?)
死亡例と生存例の比較
・有意差はないが, Ly数とPSL投与量は死亡リスク因子となる可能性.
単一施設の後向き解析. 自己免疫性疾患患者でCMV-Ag陽性となった43例をReview (Int J Rheum Dis. 2020;23:1534–1540.)
・背景疾患はPM/DMが25.6%, AAVが23.3%, RAが14.0%, SLEは7.0%
自己免疫性疾患患者で, CMV-Ag陽性の148例をReview (Mod Rheumatol (2013) 23:345–350)
・このうちCMV治療が行われなかった患者群で, CMV-Agがフォローされた106例を解析.
・CMV-Ag増加を, >10/105PMNsの上昇と定義し, CMV-Agの増加とCMV disease発症の関連を評価した.
・フォローにおいてCMV-Agが増加したのは35例.
・CMV diseaseを発症したのはそのうち5例であり, CMV-Agが上昇しなかった71例からは発症例は無し. (CMV infection 106例中, CMV diseaseとなったのは5例.)
CMV-Ag上昇に関連する因子
・リンパ球減少, SLE, PM/DMは有意なリスク因子となる
・CYC pulseではリスク上昇は認めない.
以下DNAで評価した報告
自己免疫疾患でCMV-DNAを評価し, 陽性であった73例において, 死亡リスク因子を評価(韓国, 単一施設).
・陽性例の背景疾患は, 38.4%がSLE, 24.6%がRA, 16.4%が血管炎, 12.3%が炎症性筋炎
他BD, AOSDが4.1%ずつ
・CMVによる臓器障害:(CMV infectionとdiseaseが混在)
死亡例(26)の73.1%が症候性, 26.9%が無症候性
生存例(47)の44.8%が症候性, 55.3%が無症候性
・特にCMV肺炎は有意な死亡リスク因子となる
・またCMV-DNA量は有意な死亡リスク因子となる: 死亡例では95500 vs 6700 copies/mL
・他の感染症の合併は強い死亡リスク因子
リウマチ性疾患で入院となった患者群で, 明らかなフォーカスがない発熱, 抗菌薬に反応しない肺炎, 咳嗽, 血球減少(特にLy, PLT)を認める患者でCMV-DNAを含めた評価を行う施設において, CMV-DNA陽性となった62例を解析.(Int J Rheum Dis. 2019 Apr;22(4):583-591.)
・背景はSLE, SS, 血管炎, PM/DMが主
CMV-DNAemiaが88.7%(55例)で認められ49例は抗ウイルス治療が施行.
・CMV肺炎は14例. 全例で治療を施行
それ以外の症例は, 他に明らかな臓器障害は認められず.
大半が発熱を契機に検査されている.
・DNAemiaの55例のうち, 42例がそのままPSLを継続
10例でmPSLパルスを施行. 3例はPSLを減量
・5wk後のCMV-DNA検査において, DNAの消失は予後良好因子.
・DNAemiaが持続している症例では100%が死亡.
mPSLパルスは5wk後のDNAemia改善については影響しないものの, DNAemia陰性化までの期間は伸びる
------------------------------
自己免疫性疾患におけるCMV再活性化の報告では,
主にSLE, AAV, DM/PM患者 ± RAで報告頻度が高い.
SLE患者では, EBVやCMVに対する特異的T細胞反応が健常人と比較して有意に低下しているとの報告があり(J Immunol Res. 2019 Feb 17;2019:4236503.), SLE患者ではCMVの再活性が生じやすい可能性がある.
SLE患者におけるCMV diseaseリスクを評価したSystematic reviewより, (Advances in Rheumatology (2019) 59:12)
・CMV diseaseのリスク因子をまとめる
リスク因子 | 詳細 |
リンパ球減少 | CMV肺炎患者の比較では, 600[100-400]/µL vs 1200[100-5700]と有意に低い. CD4+ T cell <390/µLは感度77.5%, 特異度 87.5%*. |
CMV viral loads | Viral loadが多いほど, 発症リスクとなり得る. |
PSL | PSL使用量はCMV diseaseのリスク(32[4-100]mg/d vs 20[1-50]), (25.9±17.1mg/d vs 9.0±4.1) |
免疫抑制療法 | 1ヶ月以内のAZA使用, |
SLEの病型 | SLEの罹患期間が長い(8[0.03-360]ヶ月 vs 3[0.25-156]) |