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2014年6月19日木曜日

ペラグラ (Vitamin B3欠乏症)

Vitamin B3 = ニコチン酸 = ナイアシン
ペラグラ(Pellagra)
Psychosomatics 2010; 51:93–97

Pellagra; ナイアシン(Vit B3)欠乏により生じる多臓器障害.
 先進国では稀な疾患だが, 低栄養患者ではあり得る.
 特にアルコール中毒, 神経性食思不振症, 妊娠悪阻で高リスクとなる.
 他にはIsoniazid, Leucine, Leodopa内服はリスクとなる.(合成阻害)
 Niacinは胃, 小腸上部で吸収されるため, クローン病でも吸収低下
通常点滴に混注されるビタミン製剤は, 例えば
 ナイロジン® → B1, B6, B12
 フラビタン® → B2
 シータック® → C であり, Vit B3は入っていない!.
 Vit B3(ナイアシン)を補充する場合はCVのマルチビタミン

 ナイアシンの静注もしくはナイアシン内服の何れかとなる. → 意識しないと治療もできない.
Pellagraの原因 (International Journal of Dermatology 2004, 43, 1–5)
 TryptophanはNiacinの前駆物質. 約60mgのtryptophanから1mgのniacinが合成される.
 合成にはVit B2, V6が必要であり, それらの欠乏があるとよりniacin欠乏のリスクとなる.
 niacinの必要量は5-20mg/d. 妊婦, 授乳婦では増加.
Hartnup’s disease;
 稀な遺伝性疾患. Neutral brush border systemの異常が原因.
 3-9yでペラグラ様の皮膚所見を認め, その後変動性の小脳失調, 中等度の精神発達遅滞を合併.
 吸収不良も生じ, その結果Tryptophan吸収が低下する.
Cartinoid syndrome;
 皮膚紅潮や毛細血管拡張が有名だが, ペラグラ様皮膚所見もあり.
 皮膚転移も認められる.
 通常吸収されたtryptophanの1%がserotonin合成に使用されるが, Cartinoid syndromeではその60%が使用され, Niacin合成が低下.

薬剤によるペラグラ
IsoniazidはNADと構造的に類似しており, 競合阻害する. ニコチン酸欠乏によらないペラグラ.
5FUはtryptophan→niacinの合成を阻害する.
6-mercaptopurineはKorenberg’s enzymeを阻害する(NAD phosphorylase)

障害の機序
NiacinはNAD, NADP合成に必要なビタミン.
 脳ではセロトニンの合成障害, Kynurenic acidの合成障害を来たし, 気分障害, 認知障害の原因となる.
 皮膚ではNADは日光暴露による皮膚損傷の修復に関与しているため, 欠乏により日光暴露部の皮疹, 水疱形成, 皮膚炎を生じる.
 消化管でも同様に, NAD欠乏により下痢, 味覚障害, 嚥下障害を生じる.
Pellagraの症状; 4Ds
4Ds; Dementia, Diarrhea, Dermatitis, Deathが有名な症状
Pelle = skin, agra = roughを意味するイタリア語
 脳, 消化管, 皮膚の3臓器が障害されるが, 常に揃う訳ではない.
 18例の解析では3つ揃うのは4例のみ.
 皮膚炎のみが6例, 
神経所見
不安, 抑うつ症状は早期より認められ, 認知障害が続く.
末梢神経炎, 歩行失調, ミオクローヌス
四肢の脱力
急性脳症による昏睡
皮膚所見
粗雑な皮膚, 紅斑(“pella agra”)が日光暴露部に生じる
紅斑は赤みを帯びた皮革様となり, 剥脱性皮膚炎を生じる
舌炎や口内炎も生じる
消化管所見
下痢, 悪心が多い.

Hyperpigmentationの例
下写真はナイアシン補充後



結核にて4剤療法中の重度の下痢, 呼吸苦, 舌炎
補充はピリドキシン(B6)のみであった (JEADV 2009, 23, 365– 366)



77-97%で手の甲部に病変を認める.
顔面紅斑はSLE様の蝶形紅斑となることが多い.
頸部はCasal’s necklaceというC3-4領域の境界明瞭な皮疹を生じる
皮膚炎が進行すると, 硬く, 粗雑な皮膚へ変化する → “goose skin”
(International Journal of Dermatology 2004, 43, 1–5)

皮膚所見の特徴  (International Journal of Dermatology 2002, 41, 476–481)
日光暴露部に以下の特徴を示す皮膚所見を認める.
 a) 日光過敏性皮疹
 b) 会陰部の皮疹
 c) 骨突出部の皮膚に肥厚, 色素沈着を認める.
 初期には日光暴露部, 手甲部の発赤を生じ, 浮腫状の変化, 水疱, 糜爛を生じる.(wet pellagra)
 晩期には皮膚は肥厚し, 色素沈着を認める.
 手掌部, 足底部の裂創を伴う.
 この時は皮膚はgoose様に見えるため, goose skinと呼ばれる.
 顔面, 頸部, 上腕, 手の背側部に多く, 特に手の所見によりグローブ状, ガントレット状に見える.(正常皮膚との境界が明瞭)
口腔内病変
 1/3で口唇, 舌, 口腔粘膜の障害を合併. 粘膜の炎症を生じる.
 舌では過形成を生じ, 偽粘膜性のヒダ, 糜爛, 潰瘍を生じる.
消化管症状
 食欲低下, 悪心嘔吐, 上腹部不快感, 腹痛, 唾液分泌の増加.
 吸収障害へ発展することもある.
 下痢, 胃炎, 無胃酸症は50%で認められる.
神経所見
 頭痛, イライラ, 集中力の低下, 不安, 幻覚, 無為など様々な症状.
 抑うつ症状, 認知症も来す; Treatable dementiaの原因となる.
 末梢神経炎, 脊髄炎の合併し得る.
Pellagraの診断
Pellagraの診断は決まっておらず, 困難と言える.
 臨床所見とナイアシンへの反応で診断するという意見もあれば, 尿中ナイアシン代謝物(N1-methyl-nicotinamide, 5-hydroxyindoleacetic acid)を測定するとの意見もある.
 血中niacin, tryptophan, NAD, NADPは診断の手助けとなる.
 皮膚所見はナイアシン補充後24-48hrで改善し始めるため, ナイアシンに対する反応が診断の助けとなる.
Pellagraの治療
Niacin 100mg q6-8hr 内服を症状改善まで数日間継続.
 改善傾向あれば50mg q8-12hrを皮膚所見が改善するまで継続.
 重症例では1g 3-4回/d IV投与も推奨される.
 他のVit Bの補充, 亜鉛, Mgの補充も同時に行う.
 栄養管理も必要があれば行う.
 禁酒, 原因薬剤の中止, HIVのチェックも大事.

予防; Niacinの内服
 乳児 5-6mg, 小児 9-13mg, 成人 13-20mg, 妊婦, 授乳婦 17-20mgの補充が推奨される.

中枢神経症状は治療開始後24-48hrで改善を認めるが, 皮膚所見は改善まで3-4wkかかる.
Hartnup病, Carcinoid症候群でもNiacin 40-200mgが効果的.

2 件のコメント:

  1. いつも勉強させて頂いております。N1-methyl-nicotinamide, 5-hydroxyindoleacetic acidを測定できる施設はご存知ですか?

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    1. コメントありがとうございます。
      これらが測定可能な施設は自分は知りません。お役に立てず申し訳ございません。

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