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2014年6月18日水曜日

Vitamin B1欠乏症: Wernicke脳症, Beri-beri heart, Peripheral Neuropathy

Vitamin B1(Thiamine) Lancet Neurol 2007; 6: 442–55
炭水化物の分解, カロリーの消費に必要な栄養素
 ATPの産生に関わる
 健常人では1.4mg/day, 0.5mg/1000kcalのThiamineが必要
 小児, 重症患者では必要量はUP
 吸収は十二指腸より
 BBBの通過性は良好(受動, 能動)であり、IVにより速やかに効果アリ

Vit B1の必要量: Innov Clin Neurosci. 2013;10(4):26–32

Thiamineの枯渇までの時間は2-3W(~18d)
 Wernicke脳症出現までの期間も同じ2-3Wである

Vit B1欠乏のリスク
 白米中心食
 慢性アルコール中毒(12.5%)
 GI 手術: 術後2-8Mに多い, 吸収障害が主
 嘔吐, 慢性下痢症
 悪性腫瘍, 化学療法
 全身疾患:腎障害, AIDS(10%), 慢性感染症, クローン
 Mg欠乏; Thiamine変換酵素として作用
 薬剤性; ニトログリセリンIV
 栄養の偏り, 輸液メニュー(糖含有, Vitなし)

アルコール関連以外のWernicke脳症の基礎疾患
European Journal of Neurology 2010, 17: 1408–1418
悪性腫瘍と低栄養が多い

アルコール中毒とビタミン欠乏の関係
急性アル中でER受診した 77名(平均46Y, 女性19%) 
 内, 75名でVit B12, 葉酸を評価し, 39名でVit B1(Thiamine)を評価.
 Vit B12, 葉酸欠乏患者は 0%[0-5]
 Vit B1欠乏患者は 15%[6-31] (6/39名)
 Vit B1欠乏患者6名全員がVit B1欠乏症状(-) (神経機能, 心機能)
(Am J Emerg Med 2008;26:792-5)

CHF患者ではVit B1欠乏が多い
CHF患者では利尿薬を使用している頻度が高く, 利尿薬によりThiaminの尿中排泄が亢進するため, CHF患者ではThiamin欠乏が多い
 100名のCHF患者と50例のControlでThiamin欠乏を評価すると, CHF患者の33%[26-41]でThiamin欠乏を認めた(12%[5-20] in control) (J Am Coll Cardiol 2006;47:354–61)

Wernicke脳症 Lancet Neurol 2007; 6: 442–55
Thiamineの脳内での作用は
 糖代謝(ATP産生)
 脂質代謝(myelin産生)
 アミノ酸産生(GABA)
枯渇する事で, 主に小脳, 脳幹, 乳頭体, 視床, 視床下部の障害を来たす

Vit B1欠乏による脳内の変化:

疫学:
剖検による罹患率; 0.8-2.8%
臨床的な罹患率; 0.04-0.13%
 成人で75-80%, 小児で58%の症例が見逃される
男性:女性 = 1.7:1

Wernicke脳症の症状:
Common
 眼球運動障害, 意識状態変容, 歩行障害
Uncommon
 昏迷, 低血圧・頻脈, 低体温, 両側の視覚障害, 乳頭浮腫, てんかん, 聴覚障害, 幻覚
Late-Stage
 高体温, 筋硬直, スパスム, 舞踏性不随運動, 意識障害

有名な3徴 WER(N)icke は16%程度しか認めず
 Walking, Eye movement, Response, (Nystagmus)
 19%で上記3徴が陰性

82%でMental status change
29%で眼球運動障害(眼振)
 眼振 85%
 両側性外転神経麻痺 54%
 共同偏視 44%
 乳頭異常 19%
 網膜出血, 眼瞼下垂, 暗点 各3%

Wernicke脳症の診断:
リスクと臨床症状による臨床診断が主
 栄養障害, 眼症状, 歩行障害, 意識障害の2/4を満たせば疑い濃厚、治療開始!
 SN, SPの優れた検査は無し
 血中Vit B1, RBC中Transketolase活性はSP低, Labも限られる
 Late stageではCSF中のタンパク増加を認めることもあり脳波はLate stageにて非特異的変化を認めることも

画像診断:
MRIにて第三脳室, 中脳周囲等にHigh-intensityを認める所見が典型的

MRIの診断能はStudyにより様々
 SN53%, SP93% (N=15, AJR 1998;171:1131-1137)
 SN 92% (N=26, AJNR Am J Neuroradiol 28:1328 –31)
  両側視床内側, 第3脳室周囲のHigh 85%
  中脳周囲のHigh 65%
  乳頭体 58%
  中脳蓋板 31%
  舌下神経核 8%
  小脳 4%

Wernicke脳症の治療:
疑われる患者には
 Thiamine >500mg 30minでIV, 3回/day 2-3日間
 ナイロジン(20mg) ならば10AでThiamine 500mg
 アリナミンF(50mg)でも10AでThiamine 500mg
  NS(100)に混注し, 30minでDIV
 反応なければ中止. 反応あればさらに 250mg/day IV or IMを3-5日間

ThiamineのDoseは有用なRCTが無く, Expert Opinionが主
 アルコール関連性の無いWernicke脳症ならば, 100-200mg/dのThiamineを補充することが推奨され, アルコール感染性のWernicke脳症ならば, 500mg 3回/dの投与が推奨されている.
(European Journal of Neurology 2010, 17: 1408–1418)

Beriberi(脚気)
Vit B1欠乏による心不全(高拍出性心不全): Wet beriberiと, 末梢神経障害: Dry beriberiがある.

Wet beriberi
 Asia人に多い
 心不全, 肺水腫が主な病態
 High outputが多いがLow outputも稀ながらあり
 浮腫は有っても無くても良い

Dry beriberi
 ヨーロッパ人に多い
 遠位の神経障害(myelin障害)
 DTR減弱を認める(下肢)

歴史的に
 東洋のBeriberi(Orient)は白米の多量摂取, 他の食物の摂取が少ないことにより生じたもので, ローマのBeriberi(Occident)はアルコール多量摂取により生じた. アルコールも白米もVit B1含有量が少なく, 炭水化物が多いため, Vit B1欠乏となり易い食材.
 生活習慣, アルコール大量摂取の有無が Wet, Dry beriberiの頻度の違いとなっているという説がある. Circulation. 1959;19:275-283

High-output beriberi (Wet beriberi)の血行動態
16例のHigh output beri-beri症例でカテーテル検査を施行 (Br Heart J 1960; 22: 483-501.)
 安静時のCardiac outputは7.2-26.5L/min,
 Cardiac indexは4.2-15.5L/min (平均 7.12L/min)であった.
 肺動脈楔入圧は6-22mmHg, 平均16mmHg. 
 改善後は平均5mmHgまで低下.
 肺動脈圧は平均28mmHgで, 改善後は14mmHgまで低下している.
腎臓の血行動態
 COは上昇するものの, 腎血流は増加はしない傾向がある.
 局所の血管収縮が生じるため, 中には腎血流が低下する症例もある.(その場合は手も冷たくなる傾向がある)
腎血流が低下した5例のデータでは,
 腎血流は正常の1/3となる症例もあり, 治療後は腎血流が改善している.
 COとの相関性は無い.

重度の脚気心と無尿となり透析を必要とした症例報告もあり, 治療とともに腎機能改善を認めた. (Postgrad Med J 1995;71:293-294)

High-output beriberiでは,
 末梢血管抵抗は低下, 筋組織の血管は拡張し, 皮膚血管は収縮.
 内蔵血流は増加し, 腎血流は低下, GFRも低下する.
これがHigh-outputでも腎不全を併発し, 末梢チアノーゼが出現し得る理由.
これら血管収縮はThiamin投与後30-90分で改善し得る.
 血行動態不安定の場合に優先し得る治療の1つとなる.

Wet beriberiのMRI所見 (Journal of Cardiovascular Magnetic Resonance 2011, 13:41)
Wet beriberiの治療
軽症例ならばThiamin 10-30mg 3回/d,
重症例ならばThiamin 100mg 3回/d が推奨.
 疑い症例の時点で治療は開始. 放置で血行動態不安定となることがある.
Circulation. 1959;19:275-283

衝心脚気 (Shoshin beriberi)
Beriberiの悪性, 劇症型と呼ばれるタイプで, 日本国内で多かったために Shoshinという名がついている
 重度の両心室不全, 代謝性アシドーシス, 心拍出量は様々, 末梢循環不全を伴い, 死に至る疾患.
脚気心の診断criteria;
 Sinus rhythmで心拡大を認める
 下腿浮腫(dependent edema)を認める
 静脈圧の上昇
 末梢神経炎 or Pellagraを認める
 ECGにて非特異的変化(ST-T変化)を認める (多いのはT波陰転化とQT延長, 低電位.)
 他の原因が無い
 3ヶ月以上の明らかな栄養の低下を認める
 特異的治療後に明らかな心拡大改善を認める,
 剖検にてBeriberiに矛盾しない所見を認める.

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