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2012年5月2日水曜日

症例: INR, APTTの延長

70歳、特に既往無し。かかりつけ医も無い男性。
主訴;INR、APTT延長にて紹介。

入院2日前から頭痛を自覚。ウイルス性髄膜炎にて内科に入院。
入院時の検査にてINR 6.0, APTT 66秒と凝固系の亢進を認め、当科へ紹介。

今まで出血素因、家族歴は無し。薬剤歴, 手術歴もなし。
腰椎穿刺後も特に合併症無く終了している。
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Problem #INR 6.0, APTT 66秒 のアプローチ
(凝固異常症のアプローチ) まとめ

① 先ず血小板機能をチェック; 出血時間, 血小板数
⇒ 問題無し. 血小板系の異常を除外。

異常ならば血小板機能異常症をチェック; DIC, TTP, 異常フィブリノーゲン血症,
von Willebrand病, 血管性紫斑病, 本態性血小板血症など.

② APTT, INRどちらか、両方の延長で, 障害されている因子を推定。
APTTのみ; VIII, IX, XI, XII, プレカリクレイン, キニノーゲン
PTのみ; VII
APTT, PT両方; I, II, V, X因子 

この場合は、APTT, INR双方の延長より共通因子; I II V X因子の異常をを考慮.
ちなみに肝機能は問題無し。肝炎ウイルスも正常。アルコール摂取なし。
肝硬変を示唆する形態変化、脾腫なし。

③Mixing testを施行(正常血漿との混合で凝固を再評価)
純粋な凝固因子欠乏ならば補充にて改善するが,
阻害因子が含まれる場合は改善しない.
APTT, INR正常化あり。
⇒ I II V X因子いずれかの欠損を示唆。

④各因子の活性を測定
⇒ V因子活性 <5%と著明に低値. ⇒ 第V因子欠損症と診断。
ちなみにV因子インヒビターは陰性。
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第V因子欠損症とは (British Journal of Haematology 2009;146:17–26)
F5遺伝子(第1染色体q23-24)の機能低下に伴う先天性の疾患。
常染色体優性遺伝で、100万人に1名の頻度。(血栓止血誌 21(3):297~300, 2010)
通常小児期, 出産時の出血で気づかれるが、成人まで無症候で偶発的に発見される例もある。
無症候性の理由として、血小板内にもV因子は存在し, そのV因子は保たれるため、
出血時に血小板が凝集し、血小板内のV因子が使用されるためと説明されている。

血小板中のV因子が低下する先天性疾患をQuebec platelet disorderといい、カナダのQuebecで認められる先天性疾患。常染色体優性遺伝。
また, FV New Yorkと呼ばれる血小板中のV因子の軽度低下を示す疾患もある。

後天性V因子欠乏症
肝疾患やDICで減少するが, それ以外ではV因子インヒビターの存在
V因子インヒビターは自然に産生されることは稀。大半が牛トロンビン含有製剤の使用や抗生剤の使用により誘発される。前者は心臓手術中に使用されることが多い。
通常数ヶ月で自然消滅するが、免疫抑制剤やγグロブリン、血漿交換が行われることもある。
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この患者さんは無症候性で気づかれないまま、70年も生きてきたというかなり稀なケースでした。無症候性なのはPLT中のV因子が活躍していたからなんですね。
今後手術をする必要があるときはFFP補いながらとなりますが、そうでもなければ様子見だけでも問題ないと考え、外来フォロー中です。


こんなん "救急"総合診療科で診るんか? と思うアナタ。これが宇治の救急総合診療科です。



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