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2012年5月9日水曜日

整腸剤で抗生剤関連下痢症を予防する (2013/8/8 update)


JAMA. 2012;307(18):1959-1969 にて抗生剤関連下痢症に対するProbioticsのMetaがでました。

この分野に関しては、2006年にも、3つのMetaが出ており、
有意差を持って下痢の抑制効果を認めております。

下痢Risk
対象
参照
RR 0.52[0.35-0.65]
成人 meta
Lancet Infect Dis 2006;6:374-82
RR 0.43[0.31-0.58]
成人 meta
Am J Gastroenterol 2006;101:812-22
RR 0.44[0.25-0.77]
小児 meta
J Pediatr 2006;149:367-72

2006年のMetaでは16-25RCTsをまとめた物で、2006-2012年までに30以上の新しいRCTが出版された、
ということで、2012にこのMetaが出たという経緯。

このMeta-analysisでは82RCTsが検討され、63RCTs(N=11811名)で解析。2名のReviewerが関与。

結果は、2006年と同等、有意に予防効果がある。


Outcome;
抗生剤関連下痢症のリスクはProbioticsにて有意に低下
  RR 0.58[0.50-0.68], NNT 13[10.3-19.1].

小児例のみ(16 trials)では, RR 0.55[0.38-0.80], NNT 11
18-65yr(14 trials)では, RR 0.54[0.34-0.85], NNT 13
高齢者(3 trials)では, RR 0.81[0.40-1.63], NNT 25
で, Probioticsに入っている菌種別の評価では、

Probiotics
N
RR
NNT
混合菌種
25
0.66[0.49-0.88]

Bacillus
2
0.45[0.27-0.76]

Bifidobacterium
1
0.93[0.53-1.66]

Enterococcus
3
0.51[0.38-0.68]
12
Lactobacillus
17
0.64[0.47-0.86]
14
Saccharomyces
15
0.48[0.35-0.65]
10

と、菌種別の違いもさほどなし. 最も多く使用されているのはLactobacillus含有の製剤。

で、ここで日本で使用されている製剤はどんな菌種なのかと、みてみると(Googleで検索)

製剤

ミヤBM
Clostridium butyricum
ビオフェルミン
Streptococcus faecalis
Bacillus subtilis
ビオフェルミン錠剤
Bifidobacterium
ビオフェルミンR
Streptococcus faecalis
ビオスリー
Streptococcus faecalis
Clostridium butyricum
Bacillus mesentericus
ラックビー
Bifidobacterium
レベニン
Bifidobacterium

圧倒的にBifidobacterium含有製剤が多い。
このMetaではBifidobacterium単独製剤は僅か1 trialでしか用いられていないのに、、、

しかも、海外と国内の最大の違いは、その容量。
国内の製剤では、『製剤◯◯gに△△菌が××mg含まれている』 という書き方。
細菌が××mgって、、、どんだけ?

海外のTrialではほぼ △△菌が10のa乗 CFU含有という記載がされている。

なので、この結果をそのまま当てはめるのはやや不安ですが、仕方ないと言えば仕方ないか。

ちなみに、抗生剤開始後<72hrでの投与開始で効果が良いという記載もありますので、下痢生じてからの投与では遅いかも。
(AFP 2008;78:1073-8)

(2013/8/8 update)
抗生剤関連下痢症の予防目的のProbioticsを評価したN=2941の大規模二重盲検化試験(PLACIDE trial)が発表されました.
(Lactobacilli and bifidobacteria in the prevention of antibiotic-associated diarrhoea and Clostridium difficile diarrhoea in older inpatients (PLACIDE): a randomised, double-blind, placebo-controlled, multicentre trial. Lancet 2013;online first)

PLACIDE trial; 65歳以上でAbxを使用された入院患者を対象
 N= 2941名. ITT解析
 65歳以上の入院患者で, 7日以内のAbx開始, もしくはこれから開始する患者が対象.
 除外項目は既に下痢(+), 免疫不全患者, ICU患者, 人工弁(+), 3m以内のCDAD, 12m以内にIBDに対する特異的な治療を行っている患者群, 膵炎.

LactobacilliとBifidobacteriaを合計6x1010含んだ製剤を1回/d
 vs Placebo群に割り付け, 21日間継続.

8wk以内の抗生剤関連下痢症と12wk以内のCDADの発症頻度を比較.

母集団と抗生剤使用状況

アウトカム;
 抗生剤関連下痢症のみならず、Clostridium difficile diarrheaの頻度も有意差無し.

他の同様のStudyを含めたmetaでは有意差認めるものの,
最もNの大きい大規模RCTで有意差無しであった意義は大きい.

Probiotics投与時期が7日以内〜投与前まで様々な点で細かい評価が必要だが、その点のSub-analysisはされていない。