骨髄穿刺をするが, 骨髄液が引けてこない現象をDry tapと呼ぶ.
主に骨髄の線維化や, 腫瘍細胞や幼弱細胞が著明に増加することで生じる現象である.
どの程度の頻度, そしてどのような原因疾患があるのだろうか?
Virginia Univ.において, 1983-89年に施行された, 骨髄穿刺+生検症例2235例を解析.
(American Journal of Hematology 1990;35:247-250)
・この内Dry tapは87例(3.9%)で認められた.
・Dry tap症例における生検結果は以下の通り:
疾患 | No(%) |
白血病全体 | 36 (41.3%) |
リンパ腫 | 3 (3.4%), HL 1, NHL 2 |
多発性骨髄腫 | 4 (4.6%) |
MDS | 6 (6.9%) |
特発性骨髄線維症 | 12 (13.8%) |
転移性腫瘍 | 15 (17.2%) |
薬剤性 | MTX 1例, クロラムフェニコール 1例 |
Gaucher病 | 1例 |
後天性免疫不全症候群 | 1例 |
Aplasia | 1例 |
正常 | 6 (6.9%) |
Acute nonlymphocytic leukemia 7例
Acute lymphocytic leukemia 5例
Hairy cell leukemia 9例が含まれる.
Mianwali hosp.(パキスタン)において,
2009-2012に行われた骨髄穿刺, 生検症例をReview
(J Ayub Med Coll Abbottabad. Jan-Mar 2015;27(1):120-3.)
・Day tapは9.5%であり,
特に男性で多い(11.9%)
・生検による診断は, NHL, ALL,
転移性腫瘍が多い疾患.
・正常は全体で4例(7.7%)
・小児ではALLが多く,
15-59歳ではNHL, 肉芽腫や骨髄増殖性疾患
高齢者ではNHL, 転移性腫瘍, MDSが多い
3173例の骨髄穿刺において, Dry tapは138例(4.3%)
(Appl Pathol. 1984;2(5):264-71. アブストラクト)
・疾患別のDry tapであった割合は,
急性白血病で16% (35/218),
骨髄増殖性疾患で9.8% (44/445),
悪性リンパ腫で8.8% (29/328),
骨髄腫で4.8% (10/208)
転移性腫瘍で13.5% (10/74)
・Dry tapの場合,
病理像は線維性変化かHypercellularity(主に幼弱血球)が認められ
骨髄病理像が正常であった症例は認められなかった.
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まとめると, 骨髄穿刺におけるDry tapはおおよそ4~10%で認められ,
それら症例で生検を行うと, 血液腫瘍(白血病, 悪性リンパ腫, 骨髄腫), 転移性腫瘍, 骨髄増殖性疾患, 肉芽腫性疾患, MDSが認められることが多い.
正常骨髄でDry tapとなる例は稀ながら存在する(手技の問題?)