疾患例: 30歳台女性. 5-6年前より間欠的な関節炎症状が認められた.
・月に1-2回, 急性経過で関節痛を生じ, 1日〜数日で改善する.
・関節は通常1箇所程度で, 多くても2-3箇所.
・部位は手関節, MP, PIP, DIP, 膝など様々. 部位は一定ではない.
・指ではPIP-DIPの間の腫脹など, 関節のみではないようなエピソードもあった.
・間欠期では症状は認めない.
・近医にて関節リウマチを疑われ, RF, ACPAなど評価されるもいずれも陰性.
XPでも骨びらんや変形は認められなかった.
来院時, 右示指PIP関節の腫脹, 疼痛が認められた.
関節エコーでは滑膜肥厚や血流増加は認められず, 関節周囲の浮腫, 血流の軽度増加を認めた.
NSAIDによる治療にて速やかに改善.
尿酸値は正常. 関節石灰化も明らかではなく, 結晶性関節炎のような印象も乏しかった.
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みたいな症例.
回帰性リウマチについてまとめます.
回帰性リウマチ Palindromic Rheumatism
・急性の関節炎, 関節周囲炎を生じるが, 数時間から数日で改善し, 再発を繰り返す.
後遺症は通常残さない.
・発熱は通常認めず, Labでも炎症反応以外は特に問題無し.
RAとは異なり, RFは通常陰性となる.
・有病率は一般人口の5%とも言われており, 比較的多い疾患.
男女比は1:1, 平均発症年齢は45y, 範囲は20-80台まで様々.
・予後は様々. 1/3は改善, 1/3は再発を繰り返し, 半数はRAへ進展する.
(Southern Medical Journal 2011;104:147-9)
回帰性リウマチで侵されやすい関節;
・肩, 膝, 手首, 足首, 小関節, 手関節が多い.
股関節, 肘はやや少ないが, どの関節に生じても良い.
・脊椎や胸鎖関節は少ない; <5%
・単関節炎が多く, 非対称的, 遊走する.
・関節炎は2-3hrで増悪し, 48hr以内に消退する.
発熱は認めない.
一部で一過性の皮内, 皮下結節を生じる例がある.
(Southern Medical Journal 2011;104:147-9)
PRの鑑別となる, 再発-寛解を繰り返す関節炎
(Best Practice & Research Clinical Rheumatology Vol. 18, No. 5, pp. 647–661, 2004 )
・Whipple病には注意したいところ(個人的にRPとRAの関係
(Nat Rev Rheumatol. 2019 Nov;15(11):687-695.)
・Cohortによると, 10年程度のフォローにおいて, およそ4割~6割がRAとなる.
・20年以上フォローしたCohortでは2/3がRAを発症.
移行は多くは10年以内に認められる.
・RAとPR双方とも, リスク因子は類似しており, PRの多くがRA関連抗体(ACPA)やRFが陽性となることから, PRはRAの前疾患として考えられていた.
・しかしながら, 2018年に発表されたPR症例のUS所見を評価した報告では, PRは滑膜炎ではなく関節周囲の炎症が主でることが示された.
RAでは滑膜炎を伴わない関節周囲炎は少なく, RAとPRが同一の病態とすると矛盾する.
・また, PRはRA以外にも血管炎や他のCTDへ移行するとする報告もあり,
一概に前駆病変とするのは難しい.
未治療のPR症例において, 炎症期と間欠期における 関節エコー所見を評価した報告
(Ann Rheum Dis. 2019 Jan;78(1):43-50.)
・PR患者は79例. 炎症期に受診できたのは31例の所見を評価.
このうち持続性の関節炎(RA)に移行したのは7例
・PR群では, 炎症期では1-3箇所の関節で症状あり.
関節は手指が8割, 足が3割程度, 大関節も5割
エコー所見
・炎症期の所見として, 滑膜炎を認めるのは23%のみ.
61%は関節外の炎症所見が認められる.
関節外のみが39%, 滑膜炎+関節外炎症所見が23%
ACPA別, 新規発症RA症例との比較
・PR症例では, ACPAの有無にかかわらず, 関節外炎症が主なのは同様.
新規発症RAでは滑膜炎の頻度が7割と高い 関節外炎症単独は4%と非常に少ない.
回帰性リウマチの治療
(Semin Arthritis Rheum. 2021 Feb;51(1):266-277.)
・PRの治療はRCTはなく, 経験的に行われている.
・炎症期の治療はNSAIDやPSL 10mg/dが用いられることが多い
・増悪の予防としては
コルヒチン, HCQ, 金製剤, MTX, AZA, SSZなどが用いられている
RTXの報告もある.