アルコール依存は, 汎血球減少や大球性貧血の原因となることは知られているが,
どのような骨髄像となるのか?
慢性アルコール依存で, 骨髄穿刺をおこなった患者118例の 骨髄所見を評価した報告.
(Acta Haematol 1995:94:74-77)
・骨髄穿刺の大半は治療反応性が不良の大球性貧血の精査として施行
・骨髄所見と頻度
所見 | 頻度 | 所見 | 頻度 |
形質細胞増加 | 94% | 鉄貯蔵の増加 | 65% |
左方移動を伴う赤芽球過形成 | 78% | 泡沫状のMファージ | 48% |
赤芽球の鉄顆粒 | 73% | 顆粒球系過形成 | 29% |
巨核球数正常 | 71% | リンパ球増多 | 19% |
赤血球のβグルクロニダーゼ陽性封入体 | 68% | 形質細胞の鉄顆粒 | 18% |
巨赤芽球 | 67% | 環状鉄芽球 | 14% |
診断がついていない, 末梢血の異常により骨髄検査を施行された144例を評価した報告.
(Alcohol Clin Exp Res. 2004 Apr;28(4):619-24.)
・この内57例で問題飲酒ありと判断(平均Et-OH ≥60g/日の摂取),
また, 14例ではDSM-IVのアルコール依存を満たした.
問題飲酒+群と(-)群の骨髄所見の頻度:
・前正赤芽球の空包変性 24% vs 2%
・環状赤芽球は4%で認められる.
・円状(not 楕円)の大型RBC, 口唇状RBC(41% vs 12%), Knizocyte(中心で区画がああるようなRBC, 33% vs 4%)が問題飲酒群で多いRBC形態異常
・アルコール摂取により赤芽球や骨髄球, 巨核球に空包変性が生じる報告もおおく, これら空包はアルコール摂取中止後3-7日程度で消失する報告がある(Semin Hematol. 1980 Apr;17(2):100-2.)
・鉄芽球も7-10日程度で消失する報告あり(Am J Med. 1971 Feb;50(2):218-32.)
アルコール依存で離脱プログラムを行う23例において,
断酒前後の骨髄所見, さらにDisulfiram使用者と非使用者における骨髄所見の変化を評価.
(Blut. 1989 Sep;59(3):231-6.)
・断酒後 3-4wkで骨髄穿刺を施行した.
骨髄検査
・赤芽球はBaselineでは増加しており
断酒後は低下する
Baselineでは42-136(平均86) : 100
(正常値は18-33 : 100)
断酒後はDisulfiram+ 40-81(平均61),
・鉄芽球も低下する.
Baseline 16-136(平均75) : 100
・環状鉄芽球
Baselineでは57:100,
・空包赤芽球は
Baselineでは空包(-)が4.3%のみが,
断酒後は空包の割合は著名に低下.
特にDisulfiram-群では
空包赤芽球はほぼ消失する
・多核赤芽球
Baselineでは56.5%で多核赤芽球を認めるが,
断酒後は15.4%まで減少する.
・血小板産生
Baselineでは巨核球数正常は13%のみ(0-3/100顆粒球)
残りの半数が軽度上昇(4-6/100顆粒球)
さらに半数は高度上昇(7~/100顆粒球)
断酒後は正常化したのが
Disulfiram+ 群で53.8%
Disulfiram- 群では9/10が正常化.