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2017年1月3日火曜日

脳出血後の予防的抗てんかん薬

脳出血既往がある患者で, 痙攣, てんかん発作の既往はないが, 抗てんかん薬を使用している患者はたまに診る.
 薬剤性の意識障害やADLの低下で入院する例が多いのですが...

そもそも脳出血後の予防的抗てんかん薬の位置づけはどのようなものか.

脳出血後の痙攣発作
(Lancet 2009;373:1632-44)
・脳出血に付随する痙攣発作は10-15%.
 8%が発症1mo以内にてんかん発作を生じる
・EEG検査では, 発症72hr以内に28%, 全体では60%でてんかん波(+). 
 ⇒ Subclinical Seizure, Non-convulsive status epilepticusが多い
・発症>2wkでのてんかん発症は再発リスクが高く, 長期の抗てんかん薬を必要とする可能性が高い.
予防的抗てんかん薬の利点, 欠点に関してはRCTが未だ無く, エキスパートオピニオンが推奨の主体となっている

頭蓋内出血患者で, 痙攣既往のない522例を前向きにフォロー
(Neurology® 2011;77:1794–1800)
・発症7日以内の痙攣発作は14%[11-17]で認められた.
 半数が脳出血発症時に痙攣+
・早期痙攣発作のリスク因子は皮質を含むICHのみ(OR 2.06[1.28-3.31])

フィンランドにおける脳出血後の痙攣, てんかん発症率を評価したcohort study.
(Epilepsy Research (2014) 108, 732—739)
・935例の脳出血患者において, 急性期(<24h)、早期(1−14d)、晩期(>2wk)におけるてんかん発症率を評価
・脳出血発症<24hでのてんかん発症率は51/935(5.5%)
 1−14日では21例(2.2%)、
 >2wkでは58例(6.2%)であった.
・リスク因子
皮質下出血が有意なリスク因子となる.

脳出血後の晩期てんかんリスクを評価: CAVE score.
(Stroke. 2014;45:1971-1976.)
・Helsinki ICH studyにおいて, 993例の脳出血患者をフォロー.
 発症7日以内にてんかんを発症したのは109例(11%)
・7日目に生存していた764例中, 
 それ以後にてんかんを発症したのが70例(9.2%) (晩期てんかん)
 1年以内で7.1%, 2年で10.0%, 3年で10.2%, 4年で11.0%, 5年で11.8%と発症2年以内でリスクが高く, それ以後は0.8%/y程度.

晩期てんかんの発症リスク因子は,
 皮質を含む出血、
 <65歳、
 血腫体積>10mL、
 7日以内のてんかん(+)の4項目
 各1点として, 0−4点で評価したものをCAVE scoreとした.

CAVE scoreと痙攣, てんかん発症率

頭蓋内出血における予防的抗てんかん薬
AHA, European Stroke Organizationのガイドラインによる推奨
(Stroke. 2016;47:2666-2672.)
・ICH後では非けいれん性てんかん発作も多く, 意識障害や変容が認められた場合はEEGを評価しつつ使用する
・予防的投与は推奨されない. 脳葉内出血ではエキスパートオピニオンとして考慮されることもある

ガイドライン上では予防的抗てんかん薬の使用は推奨されていないが, 実際多くのエキスパートが予防的使用をしている.
・痙攣発作は脳代謝の亢進, 血腫体積の増大のリスク, Midline shift, 神経予後の悪化リスクとなる.
・したがって, 予防的抗てんかん薬は一部患者ではReasonableな選択肢と言える. 特にEEGが評価できない環境やモニタリングが困難な環境で.
・ただし, 予防投与により早期痙攣のリスクは低下する可能性があるものの晩期痙攣や症候性てんかん発症リスクには関連しない.
(Stroke. 2016;47:2666-2672.)

使用される薬剤はフェニトイン, レベチラセタム(イーケプラ®)が多いが, 両者を比較したMeta-analysisでは抗てんかん作用は両者で有意差なし.
(BMC Neurology 2012, 12:30)

ICHに対する予防目的の抗けいれん薬使用は予後増悪リスクとはならない(OR 1.11[0.74-1.65])
(Stroke. 2015;46:3532-3535.)

ICHにおける抗てんかん薬の予防投与フローチャート
(Stroke. 2016;47:2666-2672.)
・頭蓋内出血において, 高リスク群では予防的投与を考慮する
 高リスク群とは, 意識変容や意識障害, 意識状態の変動がある患者, ヘルニア所見, 皮質病変を認める患者.
・高リスク群ではEEG評価, モニタリングを行い
 EEGでてんかん波を認める場合は抗てんかん薬を使用する.
 EEG評価やモニタリングが困難な場合も使用を考慮する.
・使用する場合は7日間継続し, てんかん所見, 痙攣症状が消失していれば減量, 終了
 依然認められる場合は6-12週間継続.
・その後再評価し, 改善していれば減量, 終了
 所見残存していれば長期間継続.

1 件のコメント:

  1.  いつも大変勉強になっております。とある事情で予防的抗てんかん薬について文献を読みあさっていた時、タイムリーに拝見しました。

    揚げ足取りのようで申し訳ないのですが、この記事の中で、
     seizure(てんかん発作)がepilepsy(てんかん)と混同して用いられていると感じましたので、指摘させていただきます。
     ICHなどの後でseizureが起きた時、どのタイミングでepilepsyと診断するかも明確な見解がないですが、てんかんを専門にしたい者としては、若干気になりました。

     とはいえ、国際抗てんかん連盟(ILAE)も、今までAnti epileptic drugs(AED)と呼んでいた薬をAnti seizure drugsと呼ぼうとして、エキスパートたちから反対意見が出ていたりと、このあたりの議論は今後大きくかわりえると思われます。

     いずれにしても、再発作のリスクと予防(治療?)は常に難しくて頭を悩ませます…
     引き続き、ブログを拝見して勉強させていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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