心肺蘇生後(Vf,VTのby standarあり)では低体温療法をおこなった方が神経機能予後改善効果, 死亡率低下効果を認めるとの報告が 2002年のNEJMで報告(NEJM 2002;346:549-56)
院内CPA症例26183例の後ろむきCohortにおいて, 低体温療法を施行した患者群と, Propensity scoreを合わせて抽出した患者群で予後を比較した報告では, 低体温療法を行わない方が予後が良い結果であった.
(JAMA. 2016;316(13):1375-1382. )
・低体温療法施行したのは1568例, そのうち1524例と, Control群3714例を比較.
目標体温として, 36度台(Normothermia)群と33度(Hypothermia)を比較した2つのRCT
TTM trial; 心臓由来と思われる院外CPA症例で自己心拍再開した950例を対象としたRCT.
(N Engl J Med 2013;369:2197-206.)
蘇生後の低体温療法において, 目標体温を33度とする群 vs 36度とする群に割り付け, 予後を比較.
蘇生後の低体温療法において, 目標体温を33度とする群 vs 36度とする群に割り付け, 予後を比較.
患者は≥18yで院外CPA蘇生後の患者. 入院時のGCS <8を満たす群. CPAは心原性と推定されるCPAで, 初期波形は問わない.
除外項目は, 蘇生〜割り付け時まで240分以上経過した例, 目撃例のないAsystoleのCPA, 頭蓋内出血やStrokeが疑われる例, 最初から体温が30度以下の例
低体温は28時間維持し, その後徐々に復温し, 最終的に36時間で中断するレジメ.
初期波形は,
VFが74-77%,
脈無しVTが3-5%,
Asystoleが12%,
PEAが6-8%
VFが74-77%,
脈無しVTが3-5%,
Asystoleが12%,
PEAが6-8%
両群の体温の推移
アウトカム;
両群で死亡率や, 180日後の神経予後は有意差無し.
神経スコアの分布も両群で有意差無しという結論.
THAPCA trial: 院内CPAとなった小児症例(48h-18y)を対象としたRCT.
(N Engl J Med 2017;376:318-29.)
・蘇生後 低体温療法施行群(33度) vs 正常体温維持群(36.8度)に割り付け, 予後を比較.
・患者は48h-18yの小児で院内CPAとなり2分以内に蘇生が開始され, 蘇生後人工呼吸器管理となった群.
・除外項目はGCSのM 5-6, 蘇生後6h以内に割り付けできない患者, 活動性, 難治性の出血, もともと余命12ヶ月未満, 侵襲的治療を希望されない患者.
・33度群では, 33度[32-34]を48h継続し, その後16hかけて復温. 36.8度[26.0-37.5]で合計120時間維持.
36.8度群では, この体温を120時間維持する.
StudyはN=329の時点で低体温療法が無益であることが指摘され中断となった.
母集団
・波形は小児例であり, VF, VTは少なく10%のみ.
徐脈, PEAが多い
アウトカム
・神経予後, 生命予後は両者で有意差はない
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・蘇生後の低体温療法有用性は懐疑的となってきている.
・また, 行うならば33度とする必要性は乏しく, 正常体温を保つマネージメントでも十分と考えられる.
・蘇生後は中枢性の高体温などで発熱しやすいため, その点に気をつけるというのが現時点での印象.
今後の報告では低体温療法や”正常体温維持療法” 自体過去のものとなるのかもしれない.