(Postgrad Med J 2009;85:322–326.)(J Clin Neurol 2012;8:15-21)
薬剤性の運動障害には, Parkinsonism, tardive dyskinesia, tardive dystonia, akathisia, myoclonus, tremorなど多数ある
・その中で薬剤性のParkinsonismは最も多い薬剤性運動障害の一つ
・DIPはパーキンソン症候群で2番目に多い原因(1番はPD)
・DIPと特発性PDは非常に臨床症状が類似しており, またDIPは高齢者で多いため, 両者の鑑別は困難なことが多い.
初期にPDと診断された6.8%がDIPであった報告もある.
・DIPのリスク因子は
高齢(ドパミン濃度が低いため),
女性例(DIPの6-7割が女性例. エストロゲンがドパミンを抑制するためと言われているが, 実際は不明.)
遺伝的な因子もあると言われている
薬剤性Parkinsonismの原因となる薬剤
(Postgrad Med J 2009;85:322–326.)
・主に抗精神病薬と抗うつ薬, 抗てんかん薬, 制吐剤, カルシウムch阻害薬.
・一般外来で注意が必要なのは, メトクロプラミドやスルピリド.
フランスのPharmacovigilance centerにおいて,1993-2009年の17年間で報告された, 薬剤性Parkinsonism, 薬剤で増悪したParkinson症状例を解析
(Mov Disord. 2011 Oct;26(12):2226-31.)
・20855例の薬剤副作用報告のうち, 薬剤によるParkinson症状の出現, 増悪は155例(0.7%)
そのうちPDの増悪例は28例. 残りは薬剤による新規発症.
報告例の年齢分布
・高齢者で多いが20-30台でも増加している.
・女性例は60%
DIPの症状頻度
・筋固縮 78.7%, 安静時振戦 61.9%, アキネジア 56.8%
これら3つの所見を伴うのは37.4%
・他にはジスキネジア 9%, アカシジア 3.9%, 起立性低血圧 0.6%, 無月経, 乳汁分泌 0.6%(1例)のみ.
原因薬剤
内服〜発症までの期間
・2つのピークがあり, 開始後0-3ヶ月が最も多く, 次に多いのが開始後>12ヶ月での発症.
薬剤性パーキンソン症候群(DIP)と特発性パーキンソン病(PD)の違い
DIPの特徴として, 両側性のパーキンソン症状を呈し, 姿勢時振戦が多いと言われている.
・特発性PDでは, 症状は片側性, 左右差があり, 安静時振戦となる.
(Postgrad Med J 2009;85:322–326.)
・ただし, 薬剤性でも30-50%は片側性, 安静時振戦となるため, 注意.
(J Clin Neurol 2012;8:15-21)
・症例報告では, DIPでは両側性が48% vs 特発性では7% (Rev Neurol. 1998 Jul;27(155):35-9.)
97例のDIP症例と年齢を合わせた特発性PD 97例を比較したRetrospective study.
(Parkinsonism and Related Disorders 20 (2014) 738-742)
運動症状の比較
・PDとDIPの運動症状はほぼ同じ.
・表情の消失はPDの方が多い.
所見の比較
・PIGD: postural instability-gait difficulty スコアはPDの方がより高値となる(重度)
・Asymmetry indexはPDの方が高い.
かといって, 明確に鑑別できるかというとなかなか厳しい.
DIPの対応
(J Clin Neurol 2012;8:15-21)
DIPでは原因薬剤の中止が重要.
・原疾患(統合失調症やうつ病)で中断ができない場合は, 非定型抗精神病薬などのDIPの原因にはなるものの, 比較的リスクが低い薬剤に変更する
薬剤中止後数週〜数カ月の経過でDIPは改善するが10-50%は中止後も症状は持続.
・経過により以下のタイプに分類される
1) 中止後, 完全に改善し, その後も症状の出現がない
2) 症状は持続するが, 増悪はない
3) 症状が持続し, 増悪傾向となる
4) 完全に改善するが, その後再発する
・1)のみが典型的なDIPであり, 他は背景にPDや類縁疾患があり, 薬剤の影響で, それまでマスクされていた症状が出現した可能性を考慮.