ブログ内検索

2015年12月29日火曜日

非複雑性の気道感染症における抗生剤投与方法

Prescription Strategies in Acute Uncomplicated Respiratory Infections. A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med 2016

>18歳の非複雑性呼吸器感染症(急性咽頭炎, 副鼻腔炎, 急性気管支炎, 軽度〜中等度のCOPD急性増悪)で, 抗生剤投与を迷うような症例を対象としたRCT.
抗生剤処方の方法として以下の4つの群に割り付け 症状の変化, 抗生剤使用率, 合併症(肺炎, 膿瘍, 蜂窩織炎)を評価
処方 表記 方法
事前処方群 Patient-led 初回に抗生剤を処方するが, 内服はさせない.
数日で症状が増悪する場合*に抗生剤を使用するように指導
再来指導群 Collection 初回に抗生剤を処方せず,
数日で症状が増悪する場合*に再度来院させ, 抗生剤を処方する
早期開始群 Immediate 初回に抗生剤を処方し, 内服開始する
*
を満たす場合は再度来院するように指導する
非処方群 No Prescription 抗生剤を処方しない.
*
を満たす場合は再度来院するように指導する
* 咽頭炎で5日間、他で10日間、症状が改善しない場合

母集団のデータ:
 患者の大半が咽頭炎と気管支炎
 COPDは2%しかない.

アウトカム
症状の持続期間
 早期抗生剤使用群では症状の持続期間も最も短くなる.
 特に全身倦怠感や全身の疼痛がある場合, 抗生剤投与群の方が有意に持続期間が短縮刺される.
 副鼻腔炎や咽頭炎において, 頭痛がある場合も症状の持続期間の短縮効果は高い.

症状の程度の変化
 症状は〜6ptの点数で評価. ptが高いほど症状も強い.
 症状の重症度は抗生剤の投与方法により大きな差はない.

二次アウトカム
 症状が増悪する場合に抗生剤を使用する群(Collection, Patient-led)では大体 1/4~1/3で抗生剤を使用する結果となっている.
 どの群でも合併症に有意差はない.

------------------
気道症状があり, 抗生剤どうしようかなぁ、と思う患者を投与方法別に比較した,
日常診療に一石を投じてくれそうなRCT.

個人的に, 副鼻腔炎や咽頭炎(扁桃炎)で頭痛が強い患者では抗生剤処方の閾値を下げていることが実は多い. 
全身痛がある患者ではどうかというと, 今の季節はインフルもあるので, それで閾値は下げていない.
------------

以下は私見です.

基本的に上気道炎や気管支炎、副鼻腔炎はウイルス性が多く, ウイルス性にはどのような抗生剤を使おうが、効果はない.
 それどころか, 抗生剤の副作用により害をうけるリスクがでてくる.

医療者としては, 基本的にはそのような患者には抗生剤は使用しない.
 ただし, 中には細菌が関与したものも紛れており, その患者では抗生剤を使用する利益がある.

ではどの患者で, どのように抗生剤を使用すれば, 不利益 < 利益となるのか. 
それが永遠のテーマでもある.

不利益は, 抗生剤による副作用, コスト, 使用することによる耐性菌リスクの増加が挙げられる.
・日本では保険制度が優秀のため, このコストというのはあまり重要視されない. 結局1-3割負担であり, 小児に至っては無料である.
・耐性菌もすぐに生じるリスクではなく, 自分の子供や孫の世代で影響する話であり, 実感として得られにくい.
・結果として, 不利益として患者側が実感できるのは副作用程度である.

利益は, 抗生剤を投与することで, 合併症(肺炎や病状の増悪)の予防ができたり, 治癒期間を早めたり, 死亡を回避したりというところである.
・利益は病状、患者の症状に関わるものが大半であり, 実感しやすい.
 これが抗生剤を要求する患者が多いことにつながっているのであろうと思う.

このRCTの結果より, 抗生剤を投与すべきかどうかという点については以下のことが言える

利益に関すること
・抗生剤を投与すれば症状の改善期間は短縮される.

不利益に関すること
・抗生剤と投与しても, 合併症や死亡のリスク低下効果はない.
・副作用は有意差はないものの, 各群100例前後であり, 副作用の評価には向いていない.
・コストや耐性菌については考慮されていない.

不利益の評価が不十分なので, この患者群において, 抗生剤の利益 と 不利益のどちらが高いかという点に関しては, このStudyでは判断はできません. というかそれが目的ではない.

このStudyで重要なことは, 抗生剤の投与方法を調節することで, 抗生剤の使用率を減らし, 且つ症状改善期間の短縮効果も期待出来るということ.
・投与方法の調節方法が,
 ①前もって抗生剤を処方し, 改善がない場合に使用するように指導する方法
 ②処方せずに改善がない場合に改めて処方する方法 である.

 これらの使い分けは, 患者が指示を守れるかどうか, 再度受診ができるかどうかという点.

 あまり頻回に受診ができない, 忙しいという患者では①が良いかもしれない. ただし, 指示が守れず, 結局抗生剤をすぐに使用してしまうというリスクもある.
 確実なのは②であるが, 頻回の受診が困難であるという患者もいる.

 その点を患者の背景に応じて使い分けるのが良いと思う.

0 件のコメント:

コメントを投稿