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2015年12月24日木曜日

Shock Indexと死亡リスク

Shock Index. おそらく, バイタルをチェックする際に、ほぼ無意識に計算, チェックしていると(思われる)もの.

Shock Index(SI) = 心拍数 (bpm) / 収縮期血圧(mmHg)で計算され,
健常人では0.5-0.7となることが大半.

これが1を超えると, 少なくとも1Lの出血があるであろうとか言われる. 

元々は外傷患者や出血患者において, 予後と相関するとされているが, 内科的な重症疾患患者や敗血症患者でも有用との報告もある.

敗血症患者におけるShock Index

重症敗血症でERを受診した2524例のRetrospective study.
・28日死亡率は14%.
SIと乳酸値上昇, 28日死亡の関連を見ると
青: 高乳酸血症, 赤: 28日死亡率
・SI≥1.0では有意に高乳酸血症, 死亡リスクが高い
 SI≥1.0では28日死亡率 23.3%, ≥0.7では16.7%, <0.7では10.7%となる.
・SIRSクライテリアと同等かそれ以上の予測能が期待できる
[West J Emerg Med 2013;14(2):168-174.] 
 ERにおけるSI上昇と, その後(≤72h)の循環動態破綻の関連を評価したRetrospective study.
・SIRSクライテリアを2項目異常満たす感染症患者で且つ1つ異常の臓器不全を認める患者を対象(重症敗血症)
 臓器不全: sBP<90mmHg, Lac≥2.0mmol/mL, pH<7.35, HCO3<21mg/dL, 意識障害, PLT<15万, Bil>1.2mg/dL, 凝固障害, AKI, 低酸素など
・ERにてSIを評価し, ER管理中の80%以上でSI≥0.8を満たす場合は持続性SI高値群
 それ以外の場合を一過性SI高値群とし, その後の循環動態破綻リスクを比較.

ER管理中のSI≥0.8状態が持続する割合と, その後の昇圧剤開始率
295例中, 140例が持続性SI高値群であり, 
 そのうち38.6%が72h時間以内に昇圧剤を必要とした. 
 一方で非持続性SI高値群では11.6%, OR 4.4[2.28-8.55]


持続性SI高値群と非持続性SI高値群の比較
呼吸数は有意差がない.
 SIはより早期に異常がでるバイタルサインなのかもしれない.
[West J Emerg Med. 2014;15(1):60–66.]

年齢やDM, 高血圧, 降圧薬はSIに影響するか?
1995-2011年にERを受診した111019例を後ろ向きに解析.
・Shock Indexと, 30日以内死亡率を評価.
・また, 年齢(65歳未満, 以上), 糖尿病の有無, 高血圧の有無, β阻害薬やCCBの使用の有無などがSIに影響するかどうかも評価.
・患者群の受診理由は,
 外傷 41%, その他 21%, 心血管系疾患 9%, 神経疾患 8%, 消化管/泌尿器 7%, 呼吸器 5%, 感染症 4%, 精神疾患 2%, 筋骨格系 2%, 代謝性疾患 2%.
・30日死亡率は3.0%であった.

SIは<0.7をReferenceとして, 0.7-1.0, ≥1.0を評価.
SIと28日死亡リスク
・SI ≥0.7, 特に≥1.0は有意な死亡リスク因子となる.
・年齢やDM, HT, 降圧薬があっても解釈は同じで良い.
[Ann Emerg Med. 2016;67:106-113.] 

SI≥1.0にばかり目がいきそうであるが, SI≥0.8くらいをカットオフとすれば, Shock Indexは初期から異常となるバイタルサインと言える. もしかしたら呼吸数よりも早いかもしれない.