反応性は感染症や膠原病、薬剤性、アレルギーなどがあり, それらの可能性を除外してようやく好酸球増多症の評価になる.
そして、いつもいつも困るのが寄生虫感染症の評価.
そしてそれについて, 明確な答えはない.
どのような寄生虫感染症で好酸球増多が生じるか?
発展途上国からの帰還者 14298例のRetrospective study. (Clinical Infectious Diseases 2002;34:407–11)
・上記のうち好酸球≥8%は4.8%(689例).
・寄生虫感染症は313例で認められ,
好酸球増多は寄生虫感染症に対するPPV 18.9%, NPV 98.7%.
Eo≥16%とするとPPV >60%となる.
糞線虫では88%で好酸球増多が認められる.
他に頻度の高い寄生虫は糸状虫, 鉤虫, 住血吸虫, 回虫あたり.
感染症の原因と好酸球数の評価
好酸球数でみると, 好酸球数が大体1000-1500/µLを超えるのは
鉤虫, 糞線虫, 糸状虫, 住血吸虫, 回虫.
621例の寄生虫感染症のReview. (J Clin Diagn Res. 2015 Jul;9(7):DC22-4.)
・好酸球増多を認めたのは10.6%のみであった.
・好酸球増多をきたす寄生虫感染症は, フィラリア(糸状虫), 回虫, 疥癬, 鉤虫, ヒト鞭虫, 赤痢アメーバ症, 糞線虫症.
寄生虫による好酸球増多は主に寄生蠕虫(helminth)によるもの(条虫, 線虫, 吸虫).
・寄生蠕虫でも, 体組織内に侵入するタイプで好酸球増多を生じる
腸管内感染では, 体内に侵入して初めて好酸球増多となる
また, 胞虫嚢を形成する場合, 水胞が破れて初めて好酸球増多を生じる
・単細胞体による寄生虫感染症では好酸球増多は通常起こさない(アメーバや原虫症)
イソスポラは除く.
上記の報告では赤痢アメーバも好酸球増多の頻度は高い.
(Infect Dis Clin N Am 26 (2012) 781–789)
どのような好酸球増多で寄生虫を調べるべき?
これについては明確な答えはない.
その地域の流行, 症状で決めるべきとされる.
・沖縄や奄美, 離島での滞在歴がある患者 → 糞線虫の評価は必須
・発展途上国への旅行や滞在歴がある患者
・イヌやネコとの濃厚接触, 子供で砂場遊びが多い, 生レバー摂取 → イヌ回虫やネコ回虫
生レバーでは肝蛭などのリスクにもなる
・野生のイノシシ肉, サワガニの摂取歴 → 肺吸虫
・症状から疑う場合は以下を参照
症状 | 疑う寄生虫 | 備考 |
皮疹 | 住血吸虫症 | 急性感染症にて広範囲の蕁麻疹を生じる |
糞線虫症 | 糞線虫幼虫移行症 (Larva currens) |
|
鉤虫症 | 皮膚幼虫移行症 | |
回旋糸状虫 | 掻痒感, 皮膚炎, 皮膚結節 | |
顎口虫 | 遊走性皮下組織腫脹 | |
消化管/肝障害 | 鉤虫症 | 無症状が多い. 稀に下痢, 腹痛, 鉄欠乏性貧血 |
回虫症 | 無症状が多い. 稀に下痢, 腹痛, 胆管閉塞 | |
糞線虫症 | 下痢, 腹痛. 虫体量が増えれば重症化 | |
肝蛭症(Fasciola hepatica) | 右上腹部痛, 発熱, 黄疸, 胆管閉塞 | |
イヌ回虫(Toxocara) | 腹痛, 肝脾腫 | |
住血吸虫症(マンソン, 日本) | 腹痛, 下痢, 門脈圧亢進症, 肝脾腫 | |
住血線虫症 | 腹痛, 下痢 | |
肝吸虫症 | 右上腹部痛, 発熱, 黄疸, 胆管閉塞 | |
呼吸器症状 | 鉤虫症 | 肺好酸球症 |
糸状虫症(バンクロフト, マレー) | 熱帯性好酸球増多症, 乾性咳嗽, 喘鳴 | |
糞線虫症 | 肺好酸球症 | |
イヌ回虫(Toxocara) | 喘鳴, 咳嗽, 肺浸潤影 | |
肺吸虫 | 胸痛, 肺空洞病変, 胸水, 血痰 | |
神経症状 | 住血吸虫症 | 好酸球性髄膜炎 |
住血線虫症 | 好酸球性髄膜炎, | |
糞線虫症 | 好酸球性髄膜炎(播種性糞線虫症) | |
顎口虫 | 髄膜脳炎, 脊髄炎 | |
有鉤条虫 | 神経嚢虫症 | |
その他 | 糸状虫症(バンクロフト, マレー) | リンパ節腫脹, リンパ管炎 |
旋毛虫症 | 筋痛,眼瞼浮腫, 心筋炎 | |
ビルハルツ住血吸虫 | 血尿, 尿路閉塞, 膀胱癌 | |
回旋糸状虫 | 失明 |
それ以外には腸内細菌の菌血症や他臓器不全があれば糞線虫症の評価や対応も重要
他臓器不全を伴う好酸球増多では否定されるまで糞線虫症のカバーも考慮する.
(糞線虫は経腸管感染のリスク, また播種性糞線虫症は死亡リスクが高い)
検査はどうする?
・便中の虫体や虫卵検査では, 感度は低い(<50%).
・SRL. incにて以下の寄生虫についてはスクリーニング検査が可能(Multiple-dot ELISA)
イヌ糸状虫, イヌ回虫, ブタ回虫,
アニサキス,顎口虫, 糞線虫,
ウエステルマン肺吸虫, 宮崎肺吸虫,
肝蛭, 肝吸虫, マンソン孤中, 有鉤嚢虫
疑い症例では宮崎医科大学寄生虫学教室にてIgG定量検査が可能
1検体あたり4030円 (http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/parasitology/detail.htm)
血清学的検査の感度は大体8-9割であるものの, 交差反応があるため特異性に欠けてしまう.
寄生虫の種類まで絞りたい場合はDNA検査を行うが, コマーシャルベースではできない.
どこまで検査が可能か, どこでできるかという点についてはあまり自分も情報を持っていません.