有名なのは橈骨神経浅枝の損傷で, 橈側皮静脈の穿刺でリスクとなる.
・静脈穿刺以外にも外科手術, 骨折, ストレッチ, 腕時計による締め付けなどが原因となる
橈側皮静脈と橈骨神経感覚枝の位置関係
O 茎状突起, N 橈骨神経感覚枝が橈側皮静脈付近で出てくる部位
N1 神経が内側枝と側枝に分岐する部位, N2 内側枝の分岐部,
C1 橈側皮静脈と神経の交差部, C2 橈側皮静脈と内側枝の交差部
N1 神経が内側枝と側枝に分岐する部位, N2 内側枝の分岐部,
C1 橈側皮静脈と神経の交差部, C2 橈側皮静脈と内側枝の交差部
・前腕の遠位部で橈骨神経浅枝が表面に露出し,
その後橈側皮静脈と平行して走り, 一部で交差する.
・血管と神経の距離はかなり近い.
33例の検体より位置関係を評価したところ, 以下のような分布となった.
・神経, 血管の走行は個人差が大きく, どの部位が安全かは判断できない
(Anesth Analg 2001;93:1058 –61)
橈骨神経浅枝の損傷における疼痛, しびれの部位
・橈骨神経浅枝は5枝に分岐し, 各分岐枝による感覚領域の分布は図の通り
・障害で多いのは1st branch. ついで2-3 branchとなる.
(J Nippon Med Sch 2003; 70: 355―359)
橈側皮静脈への静脈注射後に橈骨神経損傷を生じた11例の報告.
・感覚障害のみが5例. カウサルギーは6例で認めた.
・カウサルギーを認めたうちの5例ではステロイド注射を施行(3-5回).
・予後は4例が寛解(3ヶ月間)
5例は症状残存あるが, 生活に支障なし.
3例が生活に支障がある程度の症状残存がある
(J Nippon Med Sch 2003; 70: 355―359)
橈骨神経以外の神経障害
静脈穿刺に伴う神経障害は, 橈骨神経浅枝のみではなく, 正中神経, 前/後骨間神経, 内側/外側前腕皮神経もある
・肘窩部の穿刺では, 外側, 内側前腕皮神経の障害のリスクとなる.
・橈側皮静脈の遠位部(肘窩に近い部位)の穿刺では外側前腕皮神経の損傷が起きやすい.
外側上腕皮神経はC6デルマトーム領域の感覚を支配する.
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末梢ルート確保、点滴を行うと一定の割合で合併してしまう合併症の一つ.
回避策としては,
・不要な点滴は行わない
・橈側皮静脈穿刺は極力避ける ことに尽きる.
・・・しかしながら,
他の部位でも起こり得るし, そこしか確保できない患者もいる.
また, 外来で点滴希望者にいちいち説明してゆくこと,
ルート確保や採血する患者に説明、同意を得るというのは正直現実的ではない.
「点滴もしてくれない」とクレームが来るかもしれない.
一方で「無駄な点滴をして、障害が残った!」とくるかもしれない.
点滴や採血が必要な患者ではそれはするべきであり, 不必要な患者ではしない.
そんな当たりまえなことが当たり前にできるためには, 医者個人だけの努力では不十分なのだと、最後にぼやいて終わりにする.