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2015年12月25日金曜日

非HIV患者のカリニ肺炎の原因疾患

Pneumocystis jiroveciによる肺炎.
以前はPneumocystis cariniiと呼ばれていたので, 未だカリニ肺炎(PCP)と呼ばれることが多い.

主にはHIV患者や, 長期間のステロイド, 免疫抑制剤, リツキシマブなどの使用がリスクとなり, このような群ではカリニ肺炎の予防投与が推奨される.

カリニ肺炎の予防投与の適応
・HIV患者ではCD4+ T細胞 <200/µLで推奨される
 ただし, 適切な予防をされても20%で発症するといわれている.
 特にCD4+ T細胞 <50/µLでは高リスクとなる
HIV患者における予防投与適応のまとめ
10, 成人例のHIV
CD4+ T cell <200µL
2wk
以上持続する原因不明の発熱
口咽頭カンジダ症の既往
Viral titer
の急激な上昇
CD4+ T cell
数の急激な低下
<11moの小児HIV症例
CD4+ T cell<1500/µL
1-5yの小児HIV症例
CD4+ T cell<1000/µL
>5yの小児HIV症例
CD4+ T cell<500/µL
全小児例
CD4+ T cell数が24%以下
(Arch Pathol Lab Med. 2004;128:1023–1027)(ANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY 1998;42:995–1004)

・非HIV患者における予防投与の適応は明確なルールはない.
 化学療法や放射線療法で免疫抑制となる患者や,
  PSL 20mg/dを4wk, 報告によっては3-6mo以上継続する患者, 
 臓器移植後6mo以内, 
 好中球減少症患者が高リスク群となり, 予防を考慮する.
(Arch Pathol Lab Med. 2004;128:1023–1027)(ANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY 1998;42:995–1004)

厚生労働省免疫疾患の合併症と治療法に関する研究班によるPCP一次予防投与基準(2004)
以下の場合に予防的投与を考慮すべきとされる
年齢50歳以上でかつ以下のいずれかを満たす
 ① PSL換算 1.2mg/kg/日以上
 ② PSL換算 0.8mg/kg/日以上と免疫抑制剤併用
 ③ 免疫抑制剤使用中末梢血Ly ≤500/µL
しかしながら, 上記基準の感度は低く(75%程度) 十分とは言えない.
(Nihon Rinsho Meneki Gakkai Kaishi. 2009 Aug;32(4):256-62.)

HIV陰性例のカリニ肺炎では, どのような疾患背景が多いのか?
HIV陰性のカリニ肺炎 154例の解析
背景疾患

 もっとも多いのは血液悪性腫瘍で, NHL, CLL, 急性白血病, 骨髄移植, 多発性骨髄腫など
 ついで固型腫瘍, 炎症性疾患(血管炎も含むと2番目に多い原因), 臓器移植後

各疾患の頻度を考慮した疾患毎のカリニ肺炎のリスク
 特に多いのがPN, GCAで, そのあとに血液悪性腫瘍で多い.
疾患毎のリスク(OR)
(The American Journal of Medicine (2014) 127,1242.e11-1242.e17 )

HIV陰性のカリニ肺炎 116例の解析
(Mayo Clin Proc 1996;71:5-13)

血液悪性疾患に合併するカリニ肺炎の解析
60例のHIV陰性, 血液悪性腫瘍に合併したPCP症例の解析
 非ホジキンリンパ腫が18例(30%),
 慢性リンパ急性白血病が13例(21.7%)
 急性白血病 10例(16.6%)
 多発性骨髄腫 5例(8.3%)
 Waldenstrom病 4例(6.6%)
 慢性骨髄性白血病 4例(6.6%)
 骨髄異形成症候群 3例(5%)
 ホジキン病 2例(3.3%)
 血小板減少 1例
化学療法中が81.7%, 長期間のステロイドが41.7%, 骨髄移植後が25%
(Journal of Infection (2003) 47, 19–27)

52例のHIV陰性, 血液悪性腫瘍に合併したPCP症例の解析

各血液疾患と治療内容
血液悪性疾患でPCPを合併する症例はそのほとんどが化学療法や移植, 維持療法を行っている患者群である.
治療されていない患者でPCPを発症したのは4例のみであり, その内訳はNHL, MDS, 骨髄線維症のみ.
(British Journal of Haematology, 2002, 117, 379–386)