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2015年12月5日土曜日

腹水や胸水の培養検査は血液培養ボトルで

腹水や胸水の培養検査を行う場合, そのまま培養検査に提出するよりも血液培養ボトルを使用したほうが感度が高い、と研修時代に教わったが, その文献は調べていなかったのでReviewしてみました.

腹水ではどうか?
70例のSBP症例におけるProspective study.
腹水培養の提出方法を通常の培養方法(Chocolate agar, blood agarなど)と血液培養ボトルによる培養方法の2通りで提出.
・培養陽性率は57% vs 77%(p=0.0001)と有意に血液培養ボトルで良好な結果であった.
(Am J Gastroenterol. 1990 Dec;85(12):1605-8.)

31例のSBP症例のProspective studyでは,
腹水培養では52%, 一方で血液培養ボトルでは81%の陽性率
(J Clin Microbiol. 1989 Oct;27(10):2145-7.)

SBP 31例での評価では,
通常の培養群では35%のみ, 血液培養ボトルでは84%で陽性
(J Clin Microbiol. 1992 Mar;30(3):667-9.)

胸水ではどうか?
タイにおける(Melioidosis流行地域)肺炎随伴性胸水症例129例を対象とした前向きstudy.
胸水培養を血液培養ボトルで提出した場合と通常の培養を行った場合で陽性率を比較.
・通常の培養で陽性となったのは14%, 一方で血液培養ボトルでは24%, p<0.001 有意に感度は上昇.
129例中膿胸が80例と多い.
膿胸症例では通常培養群で20%陽性, 血液培養ボトルでは33.8%
・複雑性肺炎随伴性胸水ではNが少なく, 有意差認めず.
(Jundishapur J Microbiol. 2015 Oct 29;8(10):e24893.)

62例の胸腔内感染症患者において,
通常の胸水培養検査を2回, 血液培養ボトルを用いた胸水培養検査を施行.
・通常の培養検査の陽性率は20.8%であった. 
・血液培養ボトルを用いた培養検査を併用すると, 58.5%まで上昇 (AD 20.8%[8.9-20.8], P<0.001)
・通常の胸水培養を2回繰り返しても陽性率は改善しない(38.8% → 44.9%, AD 6.1%[-2.5~6.1], p=0.08)
・ちなみに, 血液培養ボトルを用いた場合, 胸水検体量 2ml, 5ml, 10mlで陽性率に差はない結果であった.
(Thorax. 2011 Aug;66(8):658-62.)

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腹水では通常培養検査の感度(SBP症例において)は35-57%
 一方で血液培養ボトルを使用した場合は77-84%と20-30%は上昇する.
胸水では(膿胸や肺炎随伴性胸水において)通常の培養の感度は20%程度
 一方で血液培養ボトルでは33.8-58.5%と10-20%上昇する.

いつも血液培養ボトルで提出していますが, それを受け付けてくれない施設もあるとのことで, 説得に使用していただければ幸いです.