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2021年9月20日月曜日

セフォペラゾン(ワイスタール®)の動態, 痙攣作用

高齢入院患者の朝からの意識障害.

閉塞性黄疸があり, 1週間前よりセフォペラゾン/スルバクタムが1g q12hで投与されていた.

また4日前にPTGBDが行われ, 胆道ドレナージが開始されていた. Bil値はピーク値7mg/dL程度.

徐々に低下はしているが, まだBilは高値が持続している.


このような患者が朝からの意識障害を認めた.

痛み刺激に反応せず。

バイタルサイン、神経診察では明らかな麻痺、異常は認めず。

ABG, アンモニアなど明らかな代謝異常も認めず。

頭部CT/MRIでも脳梗塞や脳出血所見は認められなかった.

目撃された痙攣発作もなし。

鎮静系の薬剤もなく、可能性があるとすればワイスタールによる脳症, 非痙攣性てんかんだが...

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セフォペラゾン/スルバクタム: ワイスタール®. 緑膿菌活性を有する第三世代セフェム+βラクタマーゼ阻害薬の合剤.

・胆汁排泄であり, 胆道感染症に好まれる

・体内では90%が蛋白と結合し, Vdは10-13L

・半減期は1.6-2.4h

・15-36%が尿中排泄され, 残りは胆汁内に排泄


 胆汁濃度は血中濃度の600%にも及ぶ.

・重度の肝障害や閉塞性黄疸では, 90%が腎排泄となる


 この場合, 血中半減期は2-4倍に延長する(4-7時間)

(Drvgs 22 (Suppl, 11: 35-45 (1980)



閉塞性黄疸ではセフォペラゾン/スルバクタムの半減期は延長する.
しかしながら, その分尿中から排泄するため, 著明な蓄積は生じにくいとされている.
よってあまり投与量の減量や調節は行われることは少ない.

てんかん誘発作用はどの程度あるのか?
これはあまり症例報告は見つけられず, ラットを用いた研究があった.

(Neuropharmacology 1989;28(4):359-365)
βラクタムのてんかん誘発作用
・ラットにβラクタムの誘導体を脳室内投与し, そのてんかん誘発作用を評価

・最もてんかん誘発作用が強かった薬剤はセファゾリン.

 ベンジルペニシリンや他の類化合物(セフトリアキソン, セフォペラゾン)もてんかん誘発作用があるが, その3倍強い作用を認めた
・セフォタキシム, セフォニシド, セフチゾキシムではてんかん兆候は認めず

Convulsant dose(CD50)

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可能性はあるように思う.
特に高齢者ではCr正常でも腎機能は低下しているため, さらに閉塞性黄疸, 胆汁排泄の薬剤では注意が必要.

過去の抗菌薬による脳症やNCSEのエントリーも参考