高齢入院患者の朝からの意識障害.
閉塞性黄疸があり, 1週間前よりセフォペラゾン/スルバクタムが1g q12hで投与されていた.
また4日前にPTGBDが行われ, 胆道ドレナージが開始されていた. Bil値はピーク値7mg/dL程度.
徐々に低下はしているが, まだBilは高値が持続している.
このような患者が朝からの意識障害を認めた.
痛み刺激に反応せず。
バイタルサイン、神経診察では明らかな麻痺、異常は認めず。
ABG, アンモニアなど明らかな代謝異常も認めず。
頭部CT/MRIでも脳梗塞や脳出血所見は認められなかった.
目撃された痙攣発作もなし。
鎮静系の薬剤もなく、可能性があるとすればワイスタールによる脳症, 非痙攣性てんかんだが...
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セフォペラゾン/スルバクタム: ワイスタール®. 緑膿菌活性を有する第三世代セフェム+βラクタマーゼ阻害薬の合剤.
・胆汁排泄であり, 胆道感染症に好まれる
・体内では90%が蛋白と結合し, Vdは10-13L
・半減期は1.6-2.4h
・15-36%が尿中排泄され, 残りは胆汁内に排泄
胆汁濃度は血中濃度の600%にも及ぶ.
・重度の肝障害や閉塞性黄疸では, 90%が腎排泄となる
この場合, 血中半減期は2-4倍に延長する(4-7時間)
(Drvgs 22 (Suppl, 11: 35-45 (1980)
閉塞性黄疸ではセフォペラゾン/スルバクタムの半減期は延長する.
しかしながら, その分尿中から排泄するため, 著明な蓄積は生じにくいとされている.
よってあまり投与量の減量や調節は行われることは少ない.
てんかん誘発作用はどの程度あるのか?
これはあまり症例報告は見つけられず, ラットを用いた研究があった.
(Neuropharmacology 1989;28(4):359-365)
βラクタムのてんかん誘発作用
・ラットにβラクタムの誘導体を脳室内投与し, そのてんかん誘発作用を評価
・最もてんかん誘発作用が強かった薬剤はセファゾリン.
ベンジルペニシリンや他の類化合物(セフトリアキソン, セフォペラゾン)もてんかん誘発作用があるが, その3倍強い作用を認めた
・セフォタキシム, セフォニシド, セフチゾキシムではてんかん兆候は認めず
Convulsant dose(CD50)
可能性はあるように思う.
特に高齢者ではCr正常でも腎機能は低下しているため, さらに閉塞性黄疸, 胆汁排泄の薬剤では注意が必要.
過去の抗菌薬による脳症やNCSEのエントリーも参考